長野県のダム

989-泰阜ダム/やすおかだむ

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989-泰阜ダム/やすおかだむ 長野県のダム
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所在地:長野県下伊那郡泰阜村
取材日:2011/03/24(木)

右岸下流の広場より堤体を望む

2011年3月11日・・・日本人は未曾有の大地震に震撼しました。「東日本大震災」。この日に発生した大地震はそう名付けられました。この地震によって発生した大津波は福島第一原発を襲い、原発事故という壊滅的な打撃を受けます。

そして、これにより東京電力管内は電力不足という危機に陥ります。

少し堤体に近づいてみる

この時に中部電力が粋なはからいをします。日本の電気は概ね東西で50Hz帯と60Hz帯に分かれており、中部電力が管轄するエリアは60Hz、東京電力が管轄するエリアは50Hzになります。しかも相互で最大でも100万KWしか融通できません。

そこで中部電力は泰阜ダムのある泰阜水力発電所の設備を改造し、2011年3月22日より東京電力向けに2万KWを送電し始めます。

もっと堤体に近づいてみる

つまり、60Hz運転を50Hz運転に切り替えて送電を始めたわけです。そして4月にはさらに4万KWを融通します。

このニュースを3月23日に目にして、居ても立っても居られず記事を見た翌日にその姿を讃えるために泰阜ダムへと行きました。

なお、中部電力は東京電力に対して、これ以外にも様々な支援を行なっています。
>>中部電力プレスリリース「東清水FCの緊急対策としての変換能力向上の検討について」

泰阜水力発電所と櫓橋を望む

さて、少し前置きが長くなりました。泰阜ダムの紹介に戻りましょう。

木曽川での水力発電開発を成功に導いた福澤桃介は、天竜川も水力発電開発に乗り出します。泰阜ダムは桃介とは直接的な関わりはありませんが、彼の遺志を継いだ矢作水力(株)によって1935年(昭和10年)に完成します。

あそこで50Hzの発電が行われているかと思うと、胸が熱くなります。

ゲートピアを望む

泰阜ダムは「日本の近代土木遺産~現存する重要な土木構造物2000選」に選定されていますが、堤体導流部の滑らかな曲線や、このゲートピアの造りを見ても選定される理由が何となく分かるというものです。

左岸の導流部を望む

天竜川はフォッサマグナの影響を受けて土砂の流入が多い河川です。しかも粒度は荒いそうです。その粒度の粗い土砂が堤体表面を削るため、こんなにコンクリート表面が白いのだそうです。

過去に泰阜ダムは、その粒度の粗い土砂によって平均して20cmも堤体表面のコンクリートが削れてしまい、堤体の安定性には問題無いとしたものの、1969年(昭和44年)から1970年(昭和45年)にかけて摩耗した表面にコンクリートを打設する補修工事を行なっています。

確かに堤体には苔すら生えていません。

梅と堤体

3月も下旬でしたが梅が咲いていました。

放流注意看板その1

ゲートの多い発電ダムは確かに頻繁に放流するイメージがあります。

放流注意看板その2

すぐ隣にはオレンジ色の放流注意看板も設置されています。

井上会長記念植樹

「井上会長」とは中部電力の初代社長であり会長である「井上五郎」の事ですね。

サージタンクを望む

右岸から櫓橋を渡って左岸へと移動してきました。遠くからも目立つサージタンクですが、近くで見るとやはりすごく大きいです。ちなみにすぐ脇にはJR飯田線が通っているという珍しいスポットです。

水圧鉄管を望む

その反対側には発電所の建屋に向かって水圧鉄管が伸びているのが見えます。

泰阜水力発電所建屋

この建屋は建設当時のままなんでしょうか。上部の丸い小窓が昭和初期の風情を感じさせます。

右岸の支流

撮影時にはあまり気にしていなかったのですが、右岸のこの場所は絶好の撮影スポットだったようです。

左岸より下流側の堤体を望む

泰阜ダムは全部で12門のラジアルゲートをクレストに備えています。そしてゲートの色は安定の中電レッド。

管理所?

管理所っぽいのですが、奥にも管理所がありまして・・・。

説明看板その1

比較的新し目の説明看板です。あと、実はこの辺りを自由に通って良いのかちょっと悩んだのですが、こうした看板があることから見学はしても良いようです。

説明看板その2

天竜川の水力発電所を示した説明看板です。本流と支流と合わせて24の水力発電所があるそうです。

中部電力株式会社泰阜ダム管理所

先ほどの管理所っぽい建物よりは新しい管理所です。でもどこから入るんでしょうか・・・。

下流方向を望む(左側がJR飯田線)

さらに奥に進むとこんな風景が。こんなダムのすぐ脇に線路があるなんて珍しいですね。

左岸よりダム湖側の堤体を望む

下流側は赤色のラジアルゲートですが、ダム湖側は関西電力のように黒いです。なお、建設当初のゲートは幅8.760m、高さ7.350mでしたが、平成13年5月に純径間8.800m、扉高8.000m、扉体重量24.8tのゲートに取り替えられています。

左岸より下流側の堤体を望む

この場所で「ありがとう泰阜ダム」とInstagramでpostしたのを記憶しています。

左岸より導流部を望む

この滑らかな曲線美。人工と自然とがぶつかり合って出来た美しさです。

左岸よりダム湖側の堤体を望む

何はともあれ、感慨深い泰阜ダム見学となりました。ありがとう泰阜ダム。

泰阜ダム諸元

河川名天竜川水系天竜川
目的P(発電)
型式G(重力式コンクリートダム)
堤高50m
堤頂長142.95m
堤体積128,000m3
流域面積2,980km2 ( 直接:2,980km2 )
湛水面積75ha
総貯水容量10,761,000m3
有効貯水容量1,553,000m3
ダム事業者中部電力(株)
本体施工者清水建設
着手年1931年
竣工年1935年

その他の設備/所感

堤体付近の駐車場は道路脇の空いたスペースに止める感じでしょうか。

駐車場
トイレ×
公園×
PR展示館×
釣り×

泰阜ダムに近いと思われる宿泊施設

この記事を書いた人
神馬シン

福澤桃介をこよなく愛するダム愛好家/ダムペディア・ダムニュース管理人/(一財)日本ダム協会公認ダムマイスター(01-018)/放流注意グッズの販売はじめました→https://shop.dampedia.com

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