取材日:2021/7/18(日)
名古屋市内を流れる山崎川は一部区間では桜の名所として知られた二級河川ですが、典型的な都市河川でもあり度々氾濫する河川でもあります。また、名古屋鉄道(名鉄)は愛知県と岐阜県の一部を走る鉄道ですが、名鉄名古屋本線とこの山崎川が交わる場所には山崎川橋梁が架けられ、呼続(よびつぎ)という駅が隣接しています。
左岸の踏切(下流から上流を見る)
山崎川橋梁は1917年(大正6年)に完成。しかし1959年(昭和34年)の伊勢湾台風によって周辺は浸水の被害に遭います。そのためコンクリート製の堤防が築かれますが、橋梁の高さはそのままとされてしまいます。
線路は堤防を切り欠いて敷設されているため、山崎川が氾濫するとこの切り欠いた部分から水が溢れてしまい、周辺に浸水被害を及ぼすことになります。
左岸の踏切(陸閘との交差部分)
そこで1964年(昭和39年)に陸閘が設置され、山崎川が氾濫して溢水の危険性が高まった時にだけ、門が閉じられることとなります。
左岸下流側より山崎川橋梁を見る
陸閘は当然ながら左右両岸に設置されています。陸閘門は名鉄職員の方々が中心となって閉じるそうで、もちろんその際には名鉄名古屋線は運休になります。1990年(平成2年)から2018年(平成30年)の間に合計16回も閉じているんだとか。
鉄道と交わる陸閘は関東にも何箇所かあり、中国地方にも2018年3月で廃線となったJR三江線にかつてはありましたが、東海地方では恐らくここだけかと思います。(違っていたらごめんなさい)
そんな珍しい鉄道と交わるこの陸閘ですが、近いうちに無くなるかもしれないということで今回見学することにしました。前述の通り山崎川はこれまで氾濫したことがある河川ですが、名古屋市が計画する河川整備計画に山崎川橋梁の架替が盛り込まれているのです。
橋梁には3本の橋脚があり洪水時には水の流れを阻害する恐れがあるばかりか、陸閘も人力で判断して閉じるため判断を誤ったり閉じるのが遅れるなどすると溢水の危険性が増します。そのため橋の架替を計画しているとのことでした。
もともと名古屋市では桜駅~本星崎駅間の立体交差化事業が計画されていましたが、用地買収などに時間を要する可能性があり、治水事業の方が生命と財産を守るという意味で優先度が高いため、橋梁の架替えとは別で進めることとなったそうです。
左岸側陸閘門ゲート銘板
現在の陸閘門は2003年(平成15年)に新たに設置されたもののようですが、以前の姿はどんなものだったのでしょうか。
左岸上流側
平時はこちらにゲートが格納されています。
左岸上流から下流方向を見る
右岸にも同じ色で塗装された陸閘が見えます。
師長小橋より山崎川橋梁を見る
陸閘の上流にある師長小橋(人道橋)から山崎川橋梁を見ます。
左岸上流より下流方向を見る
左岸の踏切はとても狭いため車両通行止めの標識が設置されています。
呼続駅
踏切に隣接する形で呼続駅があります。
左岸下流側
コンクリートの堤防はひび割れなど損傷箇所があったため、最近になって新しくコンクリートで補修されました。
最寄りの駐車場
陸閘に最も近い駐車場です。料金は2021年7月現在のもの。陸閘へは鉄道で来訪しても駅チカ物件なのでクルマを持っていない方でも気軽に見学ができますね。
山崎橋
山崎川橋梁の下流にある山崎橋です。旧東海道に架けられています。
山崎橋より山崎川橋梁を見る
山崎橋より上流にある山崎川橋梁を見ます。改修された左岸側堤防の安心感たるや凄いものがあります。洪水時に川の水が堤防にぶつかるところを優先的に改修しているのが見て取れます。
山崎橋のたもとに立つ石碑
旧東海道沿いということもあって歴史的な石碑が建てられていたりします。
右岸下流より山崎川橋梁を見る
しかし橋梁の架替といっても土地もなさそうなのにどうやってやるんでしょうね。しかもすぐ隣は駅がありますし、素人目に見ても橋梁の位置を高くした上に橋脚も無くすというのは、かなり難易度の高い工事になりそうな予感がします。
右岸下流より陸閘を見る
右岸は踏切がなくどん詰まりになっています。
右岸陸閘門ゲート銘板
スペックは左岸のゲートと全く同じです。
右岸陸閘
右岸側の陸閘門と線路が交差する箇所です。陸閘門側のコンクリート部分にも薄いレールが敷かれているのが見えます。恐らくゲートに車輪のようなものが付いているのでしょう。
実際の運用方法としては、ゲートを向こう側まで引っ張り出したあと、浮いている状態なので地面に接するようゲートを降ろすそうです。鉄道側のレール部分にはどうしても隙間ができてしまいますが、そこは土嚢を設置して隙間を埋めるようです。名古屋市緑政土木局公式ブログに訓練の模様が掲載されていましたので、ページの最後にリンクを張っておきますね。
右岸陸閘
使わないに越したことはないけど、これまで何度となく地域を洪水から守るために役立ってきた呼続の陸閘。ついにその役目を終えようとしています。まだ工事は先になるとは思いますが、今のうちに観ておいた方が良いかと思いますので、気になる方はぜひお早めに。
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