取材日:2014/3/1(土)
この日はダム愛好家の夜雀さんが企画された「早明浦ダムを讃える会」に参加するため四国までやってきたわけですが、会場である早明浦ダムに行く途中に立ち寄ったのがこの新宮ダムでした。新宮ダムは吉野川の支流銅山川に建設された水資源機構の重力式コンクリートダムです。
堤体下流面
いきなりのメインディッシュ。右岸側には道路があり、そこから堤体を愛でることができます。堤高は42mと中堅クラスの大きさですが、巨大で真っ赤な4門のクレストゲートが目を引き、導流壁と副ダムのデザインと相まってとても重厚感があります。クレストゲートのサイズは高さ14.05mx幅10.00m。
左岸より堤体下流面を見る
天端レベルの左岸にやってきました。左岸には駐車場があります。
左岸より天端を見る
天端は自動車の通行が可能です。右手の山上にある建物が管理所になります。
紙の町を支える新宮ダム
四国中央市は紙製品出荷額全国1位という紙の町でもあります。新宮ダムは製紙工場がある宇摩地区へ工業用水として供給し、かんがい用水としても利用され、さらにこれらの水と標高差を利用して水力発電も行われています。また、吉野川水系における治水事業として洪水調節も行われています。
「和」のモニュメント
左岸にある「和」と書かれた堤体の形をしたモニュメントです。瀬戸内海に面する四国中央市の宇摩地区は古くから水不足に悩まされた地域で、法皇山脈を越えた先にある銅山川の豊富な水を利用することは江戸時代からの悲願でもありました。
紆余曲折を経てこの新宮ダムが建設されるに至りますが、上流で水を使うということは下流で水利権を持つ徳島県としては自分たちの水が奪われるとして長らく反対の立場を取っていましたから、きっとこの「和」と書かれたモニュメントは愛媛県と徳島県の融和という意味で建てられたものなのでしょう。
新宮ダムでは隣の支流の馬立川からも取水し、導水トンネルを経由して貯水池に水が貯められていることからも、貴重な水資源であることが伺えます。また、新宮ダムの上流には柳瀬ダム・富郷ダムがあり、これらのダムも四国中央市の水瓶としての役割を担っています。
左岸より堤体上流面を見る
3月でしたが水位は高めでした。一番奥のゲートに角落しが嵌められているのが見えますでしょうか?(水色の部分)ちょうどこの時はゲートの整備工事をしているタイミングでした。
天端高欄に書かれた分かりやすい表示
左岸を示し、天端標高もEL.236.00mであることを示していて分かりやすくなっていますが、工事のためなのか見学者のためなのか、はたまた管理所の新人職員のためなのかは不明です。他にも「上流」「下流」やゲートの番号を示す「1号」といった表示がされていました。
天端よりクレストゲート越しに下流を見る
天端から見てもオレンジ色のクレストゲートがとても目を引きます。
天端よりダム湖を見る
銅山川の流路はくねくねと曲がっており、下の写真も奥で左に大きく曲がっているため上流端が見えません。
天端より最右岸のゲート越しに下流を見る
4門あるクレストゲートのうち一番右岸寄りのゲートです。補修のため足場が組まれています。
天端より最右岸・貯水池側クレストゲートを見る
上の写真の反対側となります。角落しが嵌められています。補修しているときにしか見られないちょっと貴重な光景。
右岸のリムトンネル
右岸にあるリムトンネルです。道路は右手を進むと管理所へと繋がります。
右岸より堤体下流面を見る
最近になって木が伐採されたらしくビューポイントが確保されているのが嬉しいですね。ちなみに新宮ダムは左岸の国道(下の写真だと対岸の山の中腹あたりの白い箇所)や、さらにその国道を上流に進めると展望台があり色んな場所から堤体を観ることができます。(この時は未訪問)
右岸より天端を見る
天端は夜間も照明が点いているようですので、頑張れば夜ダム撮影も可能そうです。
右岸より堤体上流面を見る
右岸の親柱に新宮ダムの銘板がありました。ここから見ると角落しの上2段目より下の部分まで水位が来ていますが、先の写真でその角落しからは水が漏れていないのが見て取れますね。
左岸フーチングと各バルブ室
管理所にダムカードを貰いに行こうとしましたが、まだ朝の7時半でしたので一旦柳瀬ダムに行き、戻る途中で新宮ダムの管理所に行こうということで、とりあえず左岸駐車場まで車を取りに戻ります。
下の写真は左岸の駐車場に戻る途中に撮影した一枚。フーチングの下には減勢工に向かってバルブ室が2つ前後で並んでいます。手前がスルースバルブ室、減勢工側の奥がハウエルバンガーバルブ室となっています。図面を見ると排砂管を通って放流されているようです。
新宮ダム管理所入り口
柳瀬ダムから戻ってダムカードをいただきに管理所へ。時間は9時ちょうどでした。ガラスの自動ドアに私ともう1人写り込んでいますが、山口県から来たダム愛好家仲間のかいゆさんです。
管理所脇にある構造物
管理所脇にはこんな頑丈そうなコンクリート構造物がありました。建設時に利用されたクレーンの基礎跡でしょうか。
管理所脇より堤体を見る
ダムから管理所が見えていたので、管理所周辺からも堤体が見えるかなと思っていましたが甘かったですね😓
管理所の上の階や屋上からならしっかりと見えたかもしれません。
堤体・クレストゲート・減勢工の全体的に見た目のバランスがとても整ったデザインで下流から見ると「おー」という声が漏れますが、四国の水環境のバランスを保つ事にとても苦労した歴史が垣間見える…そんな新宮ダムでした。
新宮ダム諸元
所在地 | 愛媛県四国中央市新宮町馬立 |
河川名 | 吉野川水系銅山川 |
目的 | F(洪水調節、農地防災) A(かんがい用水) I(工業用水) P(発電) |
型式 | G(重力式コンクリートダム) |
堤高 | 42m |
堤頂長 | 138m |
堤体積 | 80,000㎥ |
流域面積 | 254.3km2(直接:214.9km2、間接:39km2) |
湛水面積 | 90ha |
総貯水容量 | 13,000,000㎥ |
有効貯水容量 | 11,700,000㎥ |
ダム事業者 | 四国地建→水公団一工 |
本体施工者 | 大豊建設 |
着手年 | 1969年 |
竣工年 | 1975年 |
ダム湖名 | ― |
その他設備/所感
トイレや駐車場は左岸側ダムサイトにあります。トイレは上流の展望台への階段入口にもあります。
駐車場 | ○ |
トイレ | ○ |
公園 | × |
PR展示館 | × |
釣り | ○(禁漁区を除く) |
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