読み方 : あんぶだむ
別名 : 脇ダム・副ダム・補助ダム
英語 : Saddle Dam
鞍部ダムとは、メインとなるダム本体を建設することによってできたダム湖の一部が、鞍部すなわち山の尾根がくぼんだ場所にかかることによって、その地点においてダムの水が溢れないよう堰き止める役割を持ったダムのこと。
メインとなるダムと異なり、鞍部ダムの堤体それ自体に放流や利水のための施設はないが、地形によっては比較的大きな規模となることもある。
英語ではSaddle Dam(サドルダム)と表記されるが、サドルとは鞍すなわち馬の背中に置いて人を載せる馬具のことを示し、その形状から山の尾根がくぼんだ箇所が鞍に似ていることから鞍部と呼ばれる。
なお、脇ダムについては鞍部ダムと同じ意味を持つダムもあれば、本体のすぐ脇にあるためそう名乗っているだけのダムもあるため注意が必要だ。また、ダムによっては鞍部ダムのことを副ダムや補助ダムと名乗る場合もあるが、これらは別の意味となることも注意が必要だ。
以下に日本国内に存在する鞍部ダムをGoogle Mapsの航空写真を交えて紹介する。
苫田鞍部ダム(岡山県)
メインとなるダム:苫田ダム
下の写真は下流側(という表現は正確ではないかもしれないが)から見た鞍部ダムの堤体となる。左右両岸に地山があり、ちょうど堤体のある部分だけが凹地になっているのが分かる。
川浦鞍部ダム(岐阜県)
メインとなるダム:川浦ダム
周辺は完全に立入禁止のため見学することはできないが、上大須ダムの広場に下図の写真が掲示されている。
畑川脇ダム(京都府)
メインとなるダム:畑川ダム
「畑川脇ダム」という名称だが鞍部に建設されているため鞍部ダムと同一と考えられる。このダムは下流に山陰本線が通っている上、沢筋の一つがあるという複雑な立地のため鞍部ダムとして建設されたもの。また、沢自体は地下水路として脇ダムの下、さらにダム湖の下を経由して畑川ダム本体の下流に合流させている。
南川鞍部ダム(宮城県)
メインとなるダム:南川ダム
第二浜田鞍部ダム(島根県)
メインとなるダム:第二浜田ダム
漢那脇ダム(沖縄県)
メインとなるダム:漢那ダム
茂利ダム・徳畑ダム(兵庫県)
メインとなるダム:糀屋ダム
鞍部ダムは必ずしも一基のメインのダムに一基の鞍部ダムという組み合わせとなるわけではない。複数基の鞍部ダムからなる構成になることもある。
太田第二~第五ダム(兵庫県)
メインのダム:太田第一ダム
揚水式発電の上池(上部貯水池)として建設されたダムだが、山の頂上の小規模な盆地の上に建設されているため、ダム湖がほぼ鞍部ダムによってできていると言っても過言ではないダム。
平荘第2ダム・平荘第3ダム(兵庫県)
メインのダム:平荘第1ダム
権現第2ダム・権現第3ダム(兵庫県)
メインのダム:権現第1ダム
権現第2ダムは堤高が11.6mと15mに満たないため河川法上のダムとは異なるが、鞍部ダムとして建設されている。
初立池の副堤(愛知県)
メインのダム:初立池
初立池の上流端とも言えるような場所に堤体があり、固有の名称は付けられていないが現地看板などには「副堤」と表記されているが、これも立派な鞍部ダムである。なお、この副堤は堤高が12.5mと15mに満たないため河川法上のダムではない。
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