新型コロナウィルスワクチン接種から2週間以上が経過し、さらに各地の緊急事態宣言が解除されてようやくダム巡りも再開!ということで滋賀県湖東地区のダムを巡ることにしました。
国道306号の鞍掛峠を越えて芹川ダム・犬上川ダム・宇曽川ダムを見て回って向かったのが大戸川ダムの建設予定地でした。
大戸川ダムは昭和43年(1968年)の予備調査開始、平成10年(1998年)には水没地の方々の移転が完了し、その翌年には付替県道の工事に着手します。しかし平成12年(2000年)に新たに就任した長野県知事の脱ダム宣言を代表とする猛烈で苛烈で激烈なダムバッシングにより風向きは建設中止の方向に。
そしてついには平成17年(2005年)、淀川水系流域委員会により5ダム(大戸川ダム・丹生ダム・余野川ダム・川上ダム・天ヶ瀬ダム再開発)は中止が妥当だと発表し、これを受けて国土交通省は大戸川ダムの建設中止を決定してしまいます。
しかしこれではすでに移転が完了した住民からは当然不満の声が上がります。それはそうですよね。本来なら引っ越したくなかったのに下流に住む人達のために自分たちが犠牲となって苦渋の決断で移転したのに、その話が無に帰するわけですから。
また洪水が発生するたびに瀬田川洗堰が全閉となって水没の被害に遭っていた大津市民も建設中止に反発します。大戸川ダムが建設されれば全閉する時間が短縮されたり、全閉する必要がなくなる可能性があるとされていましたから反発の声は当然でしょう。
そこへ来て平成18年(2006年)の滋賀県知事選挙でダム事業凍結を公約に掲げて立候補した当時京都精華大学教授が当選。完全に事業中止の流れになってしまいます。その後、脱ダムに関しては多少軟化した方針を示しますが、滋賀県知事を引退して参議院議員となった後も揚水発電の上池である喜撰山ダムを治水に使えないかという謎発言をしたりします。
令和元年(2019年)に至り、脱ダム知事の後継となった現職知事が昨今の豪雨災害を目の当たりにし、その洪水対策としてダムが有効であると発言し方針転換。下流の6府県も建設容認に転換し再び大戸川ダム建設に向けて動き始めたのでした。
そんな大戸川ダムの建設予定地を本体工事が始まったり水没する前に見ておきたいと思い訪問を決意するのでした。
大戸川ダム建設現場(上流から下流方向)
目印もなにもないため恐らくこの辺りだろうということで到着。草木が生い茂ってよく分かりません。
下流から上流から下流方向
ここにダムができる様子を想像してシャッターを切ります。恐らく目の前に堤体の上流面が高くそびえていることでしょう。
ダム軸はこのあたりかな
たぶんダム軸はこのあたり。
上流から下流を見る
きっと今は堤体下流面を見ているはず。
大戸川
草木が生い茂ってよく分かりませんが奥に大戸川が見えます。
下流から上流方向を見る
似たような写真が続きます。ガードレールの向こう側にトラフェンスが立てられています。
大戸川に流れる沢
大戸川に注ぎ込まれる沢ですが、ちょっとした滝のようになっています。
少し離れた場所から上流方向を見る
県道の標高が約200mぐらいありますが、大戸川ダムの今のところの計画では天端標高は252.5mとなりますので、おおよそ県道の地面から50mぐらいの高さに天端が来るイメージですね。
さらに下流方向を見る
さらに下流に向けて歩くと付替道路建設用の仮設構台やクレーンが見えてきました。
付替道路の橋
さらに下流には大戸川を跨ぐ橋がすでに架けられているのが見えます。まだ共用はされていませんが、ここから見るとすでに完成しているように見えますね。
橋が見えた地点から上流方向を見る
その位置から振り返って堤体の方向を見ます。ほんとどんな感じになるんでしょうね。
付替県道工事現場への入口
パシャパシャ写真を撮っていると工事関係者のクルマが来ました。怪しさ満点のぼくを一瞥しながらゲートを開けて入っていきました。
付替県道工事用進入路と工事看板
鉄骨で組まれた工事用進入路がかなり高い位置にあるのが分かります。
付替県道工事用進入路
これはこれで今しか見られない貴重な光景。
大戸川発電所取水堰(桐生堰堤)
大戸川建設予定地をあとにして大戸川を上流へと進みます。予定地のすぐ上流には大戸川発電所の取水堰(桐生堰堤)があります。こちらは大戸川ダムが出来たら水没する運命にある堰です。(堤高4.24m)
また、この記事を書いていて知ったのですが、大戸川発電所からこの取水堰の間には大戸川左岸に沿って導水路があり、散策できるようになっているようです。隧道など渋い構造物が多々あるようですので、今のうちに観ておいたほうが良いかもしれません。
桐生辻バス停
取水堰からさらに上流に向かうと帝産バスの桐生辻バス停にたどり着きます。奥に見えるのが付替県道です。
桐生辻バス停の工事看板
そこかしこに付替県道の工事看板が立てられています。
金勝山ハイキングコース案内
大戸川ダム建設予定地右岸にはハイキングコースが整備されており、磨崖仏や観音像があるようです。
桐生辻トンネルへのアプローチ
ここを登ると付替県道の桐生辻トンネル東側に出られるようですが当然立入禁止です。ではハイキングコースは…?
ハイキングコース…?
工事に伴ってハイキングコースも立入禁止になったのかな?と思ったら右手に何か矢印のようなものが見えます。
ハイキングコース!?
ハイキングコースは生きていました。が、誰もハイキングしないのか草木が伸び放題でした…(さすがに入りませんでした)
水没地
桐生辻バス停から300mほど東に行った地点です。ここは1990年代以前の空中写真を見ると元々は田んぼが広がる土地だったようですが、今ではトンネル掘削時の残土などが置かれているようです。旧大鳥居集落跡地にも掘削残土が置かれているようで、堤体打設時の骨材に利用されるようですので、ここも同じように活用されたりするのかもしれません。あるいはプラントになるのかもしれませんね。
関西電力大鳥居発電所
上記の地点からさらに東に進めると発電所が見えてきます。関西電力の大鳥居発電所です。京都電燈株式会社時代の大正3年(1914年)に運用を開始した歴史ある水力発電所ですが、残念ながらここも水没する運命にあります。発電所の右側(西側)には田代川が流れ、この地点で大戸川に合流します。
新名神高速道路近江大鳥橋
奥に新名神の近江大鳥橋が見えます。手前の橋は付替県道となります。右が現道。新名神も大戸川ダム建設を見越してあの高さにしてあるのでしょうか。
まだどうなるかは分かりませんが、付替県道が共用を開始されればいよいよ本格的に本体工事が始まると思いますので、建設前の姿を見るなら今しかないと思います。機会があればぜひ訪問してみてください。
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