「ぼうさいこくたい」とは「大規模災害に備える- まなぶ・つながる・つよくなる – 防災を、もっと日常に」をテーマに、内閣府・防災推進協議会・防災推進国民会議が主催する国内最大級の総合防災イベントのことで、今年で4回目、それも名古屋で開催されるということで行ってきました。
2日間の開催ですが1日目は事情により行けなかったので2日目だけ行ってきました。
当日のスケジュールを確認して見ておきたいところをあらかじめ押さえておいたのですが、10時半から始まると思っていた午前中のセッションが実は10時からで見逃すという失態。途中から見るのも気が引けてしまったので、先にあちこち見て回ります。
平成30年7月豪雨災害の現状と今後の取り組み
中京テレビ内
中京テレビの1Fも会場になっていました。
ブラアイチ ~歴史と地形から愛知を知る~
レッドサラマンダー
これは絶対見たかった車両。先日の台風19号による影響で展示がいくつか中止になる中、レッドサラマンダーは出動要請がなされなかったようです。
ウニモグ
これも見てみたかった車両。
水害から“にげきる”
ひとしきり展示を見て回り、ダム愛好家として「風水害」のカテゴリのものは見ておこうということで、セッション「水害から“にげきる”」に参加します。参加者には資料が配られますが、これ実は本来なら1500円する本です。
松尾一郎氏による挨拶
セッションは松尾一郎氏(東京大学大学院情報学環総合防災情報研究センター客員教授)による挨拶から始まり、台風19号による視察の状況を解説。
福島県いわき市夏井川左岸堤防決壊地点・下平窪地内仮復旧状況
県が管理する河川は人も予算もないので手が回らないけど、復旧は待ったなし。しかも公共事業が減ったことによって建設会社が激減。さらに未だ東日本大震災の災害復旧をしているという状況もあり、かなり悲惨な状況のようです。
福島県本宮市安達太良川左岸堤防決壊地点仮復旧状況
トン土嚢による復旧状況。
福島県本宮市安達太良川のパイピング
一見何の被害も無さそうな堤防もパイピングが発生してたという話。実は堤防決壊寸前だったということですね。
堤防の洗掘状況 福島県いわき市
足立区3万3千人指定避難所への避難
話は変わって。約70万人の人口がいるうちの3万3千人が避難したという話。少なすぎるという話かと思ったら、これでも成果があったということだそうです。足立区長が動画で避難を呼びかけるということも実施したそう。
命を守る3つの柱
本日のセッション
国は、今年から「警戒レベル」を防災情報に組み入れた
内閣府の菅良一氏が登壇する予定でしたが、台風19号の対応で欠席されたため、急遽代理で国土交通省庄内川河川事務所長の西田将人氏により解説が始まります。
避難に対する基本姿勢
行政主導のハード・ソフト対策には限界があるため、住民には「自らの命は自らが守る」という意識を持ってもらい、行政は住民が適切な避難行動を取れるよう全力で支援する社会を目指すとしています。
実際、ここ最近の豪雨災害では危機感を伝えているのに避難しなかったり、避難指示が出ているのに雨が止んだからと自宅に戻ってしまったりという問題が生じています。
避難対策の強化例(警戒レベル)
今年から導入された「警戒レベル」について。
避難対策の強化例(逃げなきゃコール)
ソフト整備が進んだのは良いのですが、ネットやスマホを活用しているため高齢者に伝わりにくいという点や、人は他の人に言われないと動かないという点から、家族が直接電話をかけて避難行動を呼びかけましょうという話。
避難対策の強化例(災害・避難カード)
こういったカードは私が勤務する会社でも取り組まれていますね。
今出水期 振り返り
警戒レベル 振り返り
警戒レベルは認知度が高く、伝わりやすくなったと思う方が多かったようです。
警戒レベル 振り返り(避難の実態)
38.8%がなんらかの避難行動を行ったそうです。まだまだ周知していく必要性があるとのことです。
内閣府防災の警戒レベルに関する動画
最後に内閣府の警戒レベルに関する動画を紹介して締めくくられました。(実際に流れたのは下記動画のダイジェスト版のようなものでした)
庄内川の河川整備と複合防災社会の再構築
引き続き、国土交通省庄内川河川事務所長の西田将人氏による庄内川についての解説です。
庄内川流域の概要
国で管理している河川の平均的な流域面積だそう。ただかなりの資産がエリア内にある上に、リニア新幹線が整備されることから、これからも発展が想定されるとのこと。
庄内川の治水対策
庄内川の治水に関する目標は西暦2000年の東海豪雨が基準になっているそうです。それ以降20年近くこの地方では堤防が決壊するような事例は起きていませんが、たまたま起きていなかっただけで、今後起きるとも限らないということは他の登壇者の方々も口々にお話されていました。
施設では守りきれない大洪水は必ず発生する
平成27年の鬼怒川の堤防決壊により、霞ヶ関で「水防災意識社会」再構築ビジョンを提唱。
「水防災意識社会」再構築ビジョンの取り組み
土岐川・庄内川の水害から命を守る会議で定めた目標
住民等の行動につながるリスク情報の周知
避難行動のきっかけとなる情報をリアルタイムで提供
名古屋市における水害対策について
次は名古屋市防災危機管理局次長の坂野正典氏による名古屋市の水害対策についてのプレゼンです。
名古屋市における過去の主な水害
伊勢湾台風・東海豪雨などが紹介されました。
名古屋市におけるこれまでの治水施設整備について
東海豪雨を契機として緊急雨水整備事業が実施。東海豪雨で被害の会った地域を重点的に行なったそう。
名古屋市総合排水計画とは
近年の豪雨災害に対応するため令和元年5月に名古屋市総合排水計画が改定。
名古屋市の課題と総合排水計画における4つの施策の柱
(1)治水施設整備
名古屋中央雨水調整池は5mのトンネルを5kmぐらいに渡って穴を掘り、現在1/3程度が完成しているそうです。名古屋城よりも大きい広川ポンプ所を新設して、中川運河に吐き出すという大掛かりなものになります。
(2)雨水流出抑制 (3)土地利用・住まい方
(4)防災情報の普及・啓発
防災力の向上を目指して
この他、旧町名・地名から歴史を紐解き、その土地の過去を知るという取り組みも行っているそうです。地名から実は土砂崩れが多かった土地だということが分かったりするので、これは良い取り組みだと思いました。
名古屋駅地区地下空間タイムラインの取組み
名古屋駅地区街づくり協議会事務局長の岸田晃彦氏による名古屋駅での取り組みについての説明。
名古屋駅地区庄内川タイムライン検討会の概要
庄内川左岸の堤防が決壊した場合、名古屋駅では2m浸水することが想定されているそうです。ちなみに私、中区伏見に現在勤務しておりますが、自宅は名古屋駅からさらに西方になるため、名古屋駅が水没したらまず帰ることはできないでしょう。
名古屋駅地区地下空間タイムライン(共通行動版案)
雨が降ると地下に逃げ込む名古屋人。しかし外の様子が分からなくなることや、浸水被害が想定されることから、行動タイムラインがまとめられているそうです。ちなみに名古屋駅地下街はビルの地下も含めると事業者が多数存在(エスカ・ユニモール・ゲートウォークなどなどなど…)するため、まとめるだけでも大変そうです。これまでは施設ごとでの対応になっていたそうですが、施設だけでは能力に限界があることから、全施設でまとめているそうです。
名古屋駅地区地下空間タイムラインの概要
庄内川の水位に合わせたタイムラインを制定しているそうです。
名古屋駅地区地下空間タイムライン(共有行動版案)概要
名古屋駅地区地下空間タイムラインの周知と検証
タイムラインは制定するだけでなく、机上演習を2年前に行ったそうです。それによって気づきや課題が浮き彫りになったそうなので、これら課題については次期机上演習に向けて調整しているとのこと。
浸水センサー設置による道路冠水状況把握と情報展開
桜通りに浸水センサーを設置して道路冠水警報メールを名古屋駅まちづくり協議会会員に配信して、防災行動のトリガーとして活用しているとのことでした。
名古屋駅地区地下空間タイムラインのさらなる展開
こうした取り組みがどんどんバージョンアップしていっているそうです。
東海豪雨時の帰宅困難者についての映像紹介
中京テレビの佐藤和輝アナウンサーより東海豪雨時の名古屋駅での帰宅困難者の映像が紹介されました。タクシー待ちは5時間待ち、電車で帰ることができない、ホテルも満室、携帯電話は輻輳状態で通話不能に、新幹線も不通で、名古屋駅に多くの人が滞留してしまったというお話でした。
ディスカッション
最後に水害リスクをどう共有するか、ヤバさ感をどう地域や機関で共有するべきか、また、どう逃げ切るかというディスカッションが行われました。
岸田晃彦氏「名古屋駅にいる人の多くが浸水するとは思っていないので、ヤバさを共有する必要がある」
坂野正典氏「名古屋市ではハザードマップが全戸配布されているが、それをどれだけの人が受け取ってきちんと見ているかの数字が取れていないので、マスコミなども交えて理解してもらえるように努めていきたい」
西田将人氏「想定被害が我が事として伝わっていないので、いかに伝えられるかが課題」
佐藤和輝氏「名古屋市や名古屋駅や庄内川が様々に取り組まれているため、安心に思われてしまう可能性があるが、自分の身は自分で守るということは伝えていきたい」
また、佐藤アナは台風19号では東海3県に関しては比較的事前の防災行動がうまく行っていたのではないか?JRが計画運休を決めていた、スーパーも事前に休業を伝えていたという身近なことに非日常感が出たために事前の行動につながっていたのではないか?という気づきを発言されていました。
松尾教授は最後に「水害を対岸の火事とせず、名古屋・東海地区でもいつ大雨がもたらされるかわからないからこそ、命を守り、今日聞いたことを糧にしてほしいと思う」と締めくくっていました。
台風19号の時の城山ダムの異常洪水時防災操作でも、最初の15時の発表のときに逃げなかった人は「二転三転してておかしい」と非難していました。昨年の西日本豪雨でも避難指示が出ているにも関わらず逃げなかったという人がいました。また冒頭にあったように広島でも7割の人が逃げなかったという事実があります。
とにかく「いかに早く逃げるか」が課題になっていますが、残念なことに人間は腰が重い生き物です。でも人が声をかけたり、いつもと違う非日常感をそれとなく体感させることで誘導できると思います。きっとこの記事を読んでくれている方は防災意識が高いと思いますので、私達から率先して誘導できるようになれば、もしかしたら命が救えるかもしれない、ということでこの記事も締めたいと思います。ありがとうございました。
なお、来年のぼうさいこくたいは広島で開催されるとのことです。お近くの方はぜひ!
おまけ
あの眼鏡っ娘アイドルの時東ぁみさんが防災士として子ども向けのステージを行っていました。素晴らしい活動だと思います。
コメント