取材日:2014/11/19(水)
塩原ダム(チラ見のみ)・板室ダム(入口のみ)を経由してやってきました深山ダム。この日のメインディッシュの一つでした。深山ダムは国営那須野原開拓建設事業の一環として那珂川の最上流建設されたダムです。農業用水と上水道に加え、深山ダムで取水された水は県営板室発電所にて水力発電に利用されます。さらに電源開発沼原発電所における揚水発電の下池も担っています。なお、上池は沼原ダムとなります。
右岸より天端と木製看板を見る
塩原ダムでは紅葉真っ盛りでしたが、そこから北上しさらに標高が高いからか、やや冬に近い印象を受けます。
管理所
県営にしては規模の大きな管理所です。
右岸より洪水吐を見る
深山ダムの下流面を初めて見た時の印象は「荒々しい」でした。アスファルトフェイシングフィルダムですが下流面は鬱蒼と雑木林が広がります。さらに洪水吐の周辺のコンクリート吹付が余計に荒々しさを感じさせるのかもしれません。
右岸にあるトイレ
右岸下流側に公衆トイレがあります。ただ冬期は閉鎖されるらしいので緊急時はお気を付けください😁
それにしてもだだっ広い右岸です。ちょっとしたフェスが開けそうなぐらい広いです。あとGoogle Mapを見ていて気がついたのですが、右岸には深山ダム園地という展望台があり、しっかりと俯瞰で堤体が見られるようです。この時はその存在を知らなかったのですが、また再訪する口実ができてしまいました。
右岸より下流を見る
荒々しさを感じさせるもう一つの要因。スキージャンプ式の洪水吐の下にコンクリートブロックが敷かれているのみで、ほぼ自然そのままになっていることでしょうか。また洪水吐の下の河川には水が流れていないのも荒々しさを感じさせているかもしれません。
谷の向こうには那須野ヶ原が広がっているのが見えます。
深山ダムで農業用水と水道水として取水された水は、導水管を通って板室発電所に流れます。発電に利用された後は板室ダムで逆調整されて、上段幹線水路に農業用水と水道水として取水され、残りは那珂川に放流されるそうです。このように余すことなく水を利用しているため直下に水が流れていないとのことでした。
栃木県那須農業振興事務所・那須広域ダム管理支所に問い合わせた際に資料も頂戴しましたので、合わせて掲載します。とちまるくんがかわいいですね。(掲載許可もいただいています)
ただ、いつも流れていないのかというとそうではないそうです。取水塔からの導水管の途中に分岐があり、実は左岸側にハウエルバンガーバルブがあります。板室発電所の点検や工事などで発電ができない場合、ここから代替放流が行われることがあるそうです。バルブは木々で覆われて訪問したこの日はまったく存在に気が付きませんでしたが、「落葉後であれば代替放流をしている様子を天端から確認できます」とのことでした。
ちなみに深山ダムには実はもう一つ普通には見ることができない放流工を持っていますが、それは国土地理院地図を見ると察することができるでしょう。これが使われないことを祈ります。
水利使用標識
農水省による灌漑、栃木県による発電と上水道、電源開発による発電と分かりやすくひとつにまとまった水利使用標識です。
深山ダム周辺観光案内図
深山ダムの周辺はハイキングや登山ルートがあり、深山ダムも観光地の一つになっています。この日も必ず誰かが訪れているというような状況でした。
七千山水源の森
七千山水源の森は全国水源の森百選の一つに認定されています。
右岸よりクレストゲートを見る
深山ダムにはクレストに3門のラジアルゲートを装備しています。
洪水吐の上より下流を見る
やっぱり野趣あふれるといった下流方向です。
別角度からクレストゲートを見る
右岸ダムサイトや天端の一部が下流方向にせり出しているため、クレストゲートを下流側から覗き込むことが出来ます。
深山ダム竣工記念
右岸の地山の上に記念碑が置かれています。
右岸の地山から堤体下流面を見る
ロックというよりグラベルのように見える法面です。草も生えているので三保ダムをさらに荒々しくしたようなイメージです。
犬走り入口
犬走りは三保ダムと違って残念ながら立入禁止です。
左岸より堤体下流面を見る
どこから見ても荒々しいですね。晩秋だからこそそう見えるのかもしれません。
左岸より天端を見る
天端は自動車の通行が可能で道路は写真右手に福島県方面へと続きます。ただし途中で通行止になっているため福島県に行くことはできず、沼原電力所・森の発電おはなし館を抜けて、栃木県企業局の深山発電所までとなります。
左岸より堤体上流面を見る
最もアスファルトフェイシングフィルダムであることを示す部分ですね。アスファルト舗装された部分は水位によって横線が引かれたようになってて興味深いです。
天端より取水塔を見る
これが板室発電所に送水するための取水塔です。塔には管理橋が架けられておらず、独立した形になっています。
下流面で作業される作業員
堤体下流面で何やら作業をしている作業員の方がいました。点検でしょうか。
右岸より堤体下流面と貯水池を見る
この日は水位がかなり低い状態でした。夜の間に沼原ダムに水を送ったために水位が低いのだと思いますが、当時の状況は定かではありません。
深山ダムCCTVシステム
堤体をひとしきり見た後は集合時間になりましたので管理所内に移動し、職員の方から色々と説明を受けました。下の写真は深山ダムの各所に設置されているCCTVのモニターで映像が確認できるようになっています。
流域水文図
深山ダムの流域における水位や雨量を示すシステムです。
ダム放流状況図
深山ダムの洪水吐を模した図が描かれた放流状況図です。クレストゲートの色やハウエルバンガーバルブの位置が違うなどしますが、CGで分かりやすくなっているのが良いですね。
アスファルト舗装詳細図
深山ダムのアスファルトフェイシング部分の断面を示しています。何層にも分かれて、しかも分厚いことが見て取れます。
取水塔模型
管理所内には1/100の取水塔の模型が置かれていました。断面になっていて構造が理解しやすくなっています。
ゆるキャラ!
栃木県の「とちまるくん」、同じく栃木県の「ルリちゃん」、真岡市の「コットベリー」…とマスコットキャラクターがパーテーションに掲示されていました。かわいいですね☺
管理所脇より堤体上流面を見る
管理所で説明を受けたら次の目的地へ移動します。
森の発電おはなし館
続いてやってきたのは電源開発株式会社(でんぱつ)が運営する展示施設「森の発電おはなし館」です。ここからは沼原発電所などを見学させていただくことになっていました。
森の発電おはなし館内部
森の発電おはなし館の中をひととおり見学します。電源開発の方から説明も受けたような…。8年前なので記憶がかなり薄れています。やはりこういうことはすぐに記事化しないとダメですね。
沼原発電所内部
続いて沼原発電所を見学します。揚水発電の発電所は地下にありますが、こんな大規模な空間が地下に広がっていることに毎回どの発電所に行っても驚きます。
昭和天皇・香淳皇后行幸
昭和49年(1974)8月8日に昭和天皇と香淳皇后がご視察のため沼原発電所を訪問なされたようです。
発電機解説パネル
電源開発の方から発電機について説明を受けます。これが地中に埋まっているなんてすごいですよね。
掘削中の沼原池
説明を受けたこの部屋には他にも貴重な写真が掲げられていました。沼原ダムの工事開始間もない頃でしょうか。
湛水開始前の沼原池
キャプションが「沼原ダム」ではなく「沼原池」としているのは、人工的な池を造って地図を塗り替えたという自負からなのでしょうか。この写真、よく見ると右上に建設中の深山ダムも見えます。
沼原池のアスファルト舗装
沼原ダムも深山ダム同様にアスファルトフェイシングフィルダムなのですが、そのアスファルト舗装を行っている時の貴重な写真です。
完成した沼原池
新品の沼原ダム。すごくキレイです。
掘削中の地下発電所
これまた貴重な写真。
発電機ローターと水車ランナーの据付け
発電所の要、ローターとランナーの据付時の様子です。
地下発電所
続いて発電所内に入ります。何度も言いますが地下にこれだけの大空間が広がっているのはいつ見ても驚きです。
発電機3号機
日立製作所製の発電機です。
主軸
縦のシルバーの太い棒が主軸になります。発電している時はこれがクルクル回ります。この下に水車が格納されています。
そして一行は深山ダムや沼原発電所を後にして、昼食後は次の目的地である沼原ダムに移動するのでした。
深山ダム諸元
所在地 | 栃木県那須塩原市百村深山地先 |
河川名 | 那珂川水系那珂川 |
目的 | A(かんがい用水) W(上水道用水) P(発電) |
型式 | FA(アスファルトフェイシングフィルダム) |
堤高 | 75.5m |
堤頂長 | 333.8m |
堤体積 | 1,967,000㎥ |
流域面積 | 65.9km2(直接:52.9km2、間接:13km2) |
湛水面積 | 97ha |
総貯水容量 | 25,800,000㎥ |
有効貯水容量 | 20,900,000㎥ |
ダム事業者 | 農林省関東農政局→栃木県 |
本体施工者 | 大成建設 |
着手年 | 1968年 |
竣工年 | 1973年 |
ダム湖名 | 深山湖(みやまこ) |
その他の設備/所感
深山湖では釣りはできませんが上流にある大川では渓流釣りができるようです。(禁漁期間あり)
駐車場 | ○ |
トイレ | ○(冬季閉鎖) |
公園 | × |
PR展示館 | ○(森の発電おはなし館) |
釣り | × |
展望台 | ○ |
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