取材日:2013/06/01(土)
「第2回ダム愛好家との集い in 宇連・大島ダム」のため、宇連ダムに向かう途中に立ち寄りました。長篠堰堤はその名の示す通り、堤高が15mに満たないため、河川法の定義ではダムではなく堰となります。
長篠堰堤は大分県の白水ダムや秋田県の藤倉ダムに並び「日本三大美堰堤」の1つに数えられています。また、土木学会選奨土木遺産でもあります。
花の木公園駐車場
いつもここに駐車させてもらっているのですが、ホントにここでいいんでしょうか💦
釣り堀
長篠堰堤には花の木公園という公園が隣接し釣り堀などもあります。
釣り堀越しに長篠堰堤を望む
池にはアヒル?ガチョウ?もいますね。朝の9時頃ですが周囲に誰もいないので独り占めできます。
堤体(左)と導水路(右)
岩場がゴツゴツしているため足元に気をつけて歩きます。場所によってはそのまま川に落ちる可能性があるので注意して見学しましょう。
左が堤体で豊川本流を堰き止めています。堤高は8m。ここで堰き止められた水を写真右側奥にあるゲートを通ってトンネル導水路を経由し、下流の長篠発電所に送水されます。
長篠堰堤と長篠発電所は新城市にありますが、明治期に飛躍的に発展した豊橋市に関係しています。豊橋商工会議所によって豊橋電灯株式会社が設立され、日清戦争後にさらに発展した豊橋市を支えるべく電力を販売するため明治39年に豊橋電気株式会社に名称を変えます。
さらに明治43年には子会社として寒狭川電気を設立して長篠発電所建設に着手して、逼迫する電力需要に応えます。なお、この時の社長があの福澤桃介です。
建設の陣頭指揮を取るのは岐阜県池田町出身で京都帝国大学を卒業したばかりの技師長今西卓。
豊川の河川勾配が緩く落差を十分に稼げなかったため、アメリカのナイアガラ水力発電所で実用化されていた縦軸水車を採用し、ドイツ・フォイト社製竪軸水車、シーメンス社製発電機の導入を経て明治45年3月に運開となります。
当時は水車と発電機を水平に配置する横軸が一般的でしたが、長篠発電所では長篠堰堤で取水した水を導水路に通し、そのまま直下に水を落としてタービンを回し、タービンの真上に発電機を配置するという縦軸による発電方法でした。以後、この発電方法を「ナイアガラ式」と呼ばれるようになります。
発電方法はナイアガラ式ですが、この導水路はまるでナイアガラの滝のようですね。
右岸より堰堤下流面を望む
堰堤としてはこちらがメインですね。赤色の部分は板と鉄骨で組まれて止水していますが、まるで中電レッドのゲートのようです。なお、この上は渡れそうですが立入禁止です。
導水路と越流
これが人々を魅了してやまない滝のような越流です。単に導水路から溢れた水が滝のように流れているだけなのですが、岩盤をくり抜いた開渠を人造石で整形しているらしく、どこまでが人造石なのか見た目にはわかりません。さながら自然の岩を活かした越流のように見えますがこれがまた美しく、見ているだけでため息が漏れます。
下流より堤体を望む
下流から堤体を見ます。左右両岸から越流するようになっています。
岩場にあるため見学には細心の注意を払う必要がありますが、歴史ある日本三大美堰堤・土木学会選奨土木遺産をぜひその目で観てみてください。
長篠堰堤越流動画
越流の模様を動画にまとめてみました。
長篠堰堤諸元
所在地 | 愛知県新城市横川 |
河川名 | 豊川水系豊川 |
目的 | P(発電) |
型式 | G(重力式コンクリートダム) |
堤高 | 8m |
堤頂長 | 25.4m |
ダム事業者 | 豊橋電気株式会社 |
着手年 | 1910年 |
竣工年 | 1912年 |
その他の設備/所感
駐車場 | ○ |
トイレ | × |
公園 | ○ |
PR展示館 | × |
釣り | ○(禁漁区を除く) |
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