取材日:2012/9/17(月)
石淵ダムと胆沢ダムの見学から始まった東北遠征もついに3日目。楽しい東北もこの日が最後となります。とりあえず東北道を南下してやって来たのは鳴子ダムでした。他にも行きたいダムは山のようにありますが、でもやっぱり鳴子ダムなのでした。
左岸の遊歩道
左岸に駐車場がありますが、そこから天端へは徒歩で向かいます。ちなみに天端の開放時間は8:00~17:00ですので訪問される際には注意が必要です。
左岸の遊歩道の休憩スペース
こんな感じでベンチも設置されています。木が生い茂っているので座ってどこをみるのか謎ですが、木が成長する前は下流がドーンと望めたんでしょうね。
左岸の遊歩道から下流側の堤体を望む
堤体が見えてきました。ワクワク感が高まります。
左岸より下流側の堤体を望む
ついに夢にまで観た鳴子ダムの姿が眼前に広がります。できればすだれ放流の時期に来たかったですね。
ハウエルバンガーバルブ
昭和32年から約30年間使用されたというハウエルバンガーバルブが展示されています。
インクラインへの通路
写真中央の斜めに設置されているコンクリートのボックスの中は実はインクラインなのです。上の橋桁は国道ですが、その脇にかつて国道として使われていたトンネルがあり、その中にインクラインの上部の乗り場があるそうです。写真は中間の乗り場となります。
慈水永遠の石碑
左岸には昭和60年に大旱魃に見舞われたものの鳴子ダムによって豊作になったことを示す石碑があります。
この四文字熟語は最初は「慈水水遠」もしくは「遠水水慈」だと思っていたのですが、よく見たら「慈水永遠」でした。永遠に水を慈しむ。なるほど。
左岸より天端を望む
天端高欄の下に隙間があるのは雪を落とすためでしょうか。
坂見堰取水設備(手前)と予備ゲート(奥)
手前にあるものが坂見堰取水設備はダム建設以前のかんがい用水を補給するための設備です。なぜか坂見堰という名称が付けられています。奥がコンジットの予備ゲートか。
コンジットバルブ
写真左上の丸く穴の開いた構造物がコンジットのフィックストコーンバルブ。いわゆるハウエルバンガーバルブです。パンフレット上では「放流バルブ」とも書かれています。
トンネル洪水吐の呑口と予備ゲート
鳴子ダムには左岸の堤体脇にトンネル洪水吐が設置されていますが、当初は予備ゲートがなかったらしく6年かけて平成14年に増設したのだそうです。ゲートピアのコンクリー部分の色が半分異なっていますが、手前が増設した部分、奥の色が濃くなっているのが既設の部分です。
洪水吐ゲートの裏側
そのゲートの裏側です。ここから見ても手前が古い構造物なのがよくわかります。中にあるグレーのラッパ状のものは通気孔です。
天端よりダム湖を望む
ちょっと水位は低めでした。
天端より下流を望む
左から斜めに下流へと繋がっているコンクリートの構造物は前述のインクライン。減勢工も見たことない構造ですし、右岸のフーチングもなかなかのもの。
インクラインの先?
インクラインはここに繋がっているようです。
減勢工のデフレクター
クレストからの放流は右岸側に流されてしまい、右岸の岩盤が洗掘されてしまう恐れがあるため、このデフレクターを設けたそうです。実際にどのように水が流れるのか見てみたいものです。
右岸ダムサイト
天端を渡って右岸まで来ました。が、残念ながらこの先は立入禁止でした。
右岸より下流側の堤体を望む
鳴子ダムはアーチの美しさもさることながら、導流部に艶めかしさを感じさせるアールが施工されていて、それがより一層美しさを引き立てているんだと思います。
右岸よりクレストゲートを望む
ここですここ。その昔「ダムマニアは美的感覚が貧しいか本質を見抜く力が無い」と言った人がいましたが、ダムマニアじゃなくてもここの美しさは理解できませんか?
今さら説明するまでもないかもしれませんが、鳴子ダムは日本人技術者のみにより完成した初のアーチダムです。調査や模型で試行錯誤が繰り返されたことと思いますが、こんなに素晴らしいダムを作ってくれた当時の技術者の方々には感謝しかありません。
右岸より天端を望む
そういえば天端に照明がありますが、夜の鳴子ダムも見てみたいですね。
発電用の取水塔
東北電力鳴子発電所に送水するための取水塔が左岸上流に設置されています。
艇庫とインクライン
艇庫とインクラインも左岸に設置されています。管理所からだとちょっと離れていますが、移動がちょっと大変そうですね。
左岸の看板
堤体を後にして管理所に向かいます。看板にやさしさがあふれてますね。
鳴子ダム管理所
鳴子ダム管理所までやって来ました。堤体からかなり離れているので、私達はクルマで移動しました。
技術伝承
鳴子ダムは技術の面で誇りを持っており、管理所の玄関には「技術、伝承」と書かれた大きなターポリンが掲げられています。土木学会の選奨土木遺産にも認定されたのは、技術面で評価された結果でしょう。
展示室
管理所内には展示室があり様々な資料を見ることが出来ます。またここでパンフレットもいただけますが、一般向け・子ども向け・技術者向けの3種類も用意されている力の入れようです。
展望テラス
こんな展望テラスも用意されています。
展望テラスから堤体方面を望む
もちろん展望テラスからは堤体も観ることが出来ます。
国道より下流側の堤体を望む
展望テラスからの眺めも良いんですが、やっぱり下流面を俯瞰で捉えたいということで、管理所を後にして国道から望みます。
本山隧道
国道として利用されてきた本山隧道。この奥にインクラインの乗り場があるようです。
という感じであちこち満喫した鳴子ダムでしたが、次回はぜひともすだれ放流の時期に再訪したいと思います。最近では下流側が見学できるようにするなど見学会にも力を入れているようですので、そうした機会にも出来たら参加したいものです。
鳴子ダム諸元
所在地 | 宮城県大崎市鳴子温泉字岩淵 |
河川名 | 北上川水系江合川 |
目的 | F(洪水調節、農地防災) A(かんがい用水) P(発電) |
型式 | A(アーチダム) |
堤高 | 94.5m |
堤頂長 | 215m |
堤体積 | 180,000m3 |
流域面積 | 210.1km2 |
湛水面積 | 210ha |
総貯水容量 | 50,000,000m3 |
有効貯水容量 | 35,000,000m3 |
ダム事業者 | 東北地方建設局 |
本体施工者 | 鹿島建設 |
着手年 | 1951年 |
竣工年 | 1958年 |
ダム湖名 | 荒雄湖 |
その他の設備/所感
駐車場 | ○ |
トイレ | ○ |
公園 | ○ |
PR展示館 | ○ |
釣り | ○ |
コメント