取材日:2013/07/06(土)
この日は家族とドライブで安濃ダムに行き、その後訪問したのがこの君ヶ野ダムです。実はわりと近場なのになかなか訪問できていないダムの1つが君ヶ野ダムでした。
安濃ダムから君ヶ野ダムに向かう途中、雲出川とJR名松線が並走する区間の県道を通ってきました。台風や豪雨のたびに運休になるJR名松線と、洪水によって度重なる氾濫を引き起こしてきた雲出川。雲出川下流域はこの君ヶ野ダムによって守られているという点からも一度訪問したかったダムです。
右岸より天端を望む
下流側からも堤体を望めますが、先に天端に来ました。
天端より洪水吐を望む
クレストには2門のラジアルゲートが装備されています。サイズは高さ9.77m、幅8.00m。ちなみに現地ではラジアルゲートではなくテンターゲートと表記されていました。真下を見るとΦ900mmのホロージェットバルブから放流しているのが見えます。
左岸より堤体下流面を望む
徒歩で左岸までやってきました。堤頂長が323mとほどほどの距離があります。
やや下流側に移動し堤体下流面を…
残念ながら草が生い茂ってあまり眺望は良くありませんでした。
左岸より堤体上流面を望む
今度は上流側に移動して堤体上流面を望みます。堤体上流面にある赤いゲートはコースターゲートでオリフィスゲートの点検時に使用されるものです。
左岸より天端を望む
左岸にはレークサイド君ヶ野という津市営の宿泊施設があるため、天端は自動車の通行が可能となっています。
エレベーター塔(手前)
エレベーター塔の奥にヴォールトの屋根で統一されたゲート操作室が見えます。
天端よりダム湖を望む
雲出川の支流、八手俣川を君ヶ野ダムによって堰き止めでできたダム湖です。それにしても雲出川も八手俣川も難読河川名ですね。
君ヶ野ダム管理室
昭和な風情を残す管理所です。こちらでダムカードをいただきました。
右岸道路
右岸の散策を継続します。右岸に展望台があるかなと思い見てみましたが、残念ながらゲートで塞がれていました。左岸のレークサイド君ヶ野にも「君ヶ野ダム展望広場」があるようですが、遠目に見て眺望がよくなさそうと判断して行きませんでした。展望台、なんとか予算つけてつくってほしいですね。
右岸より堤体上流面を望む
堤体上流面が望めるポイントを探しますが、ダムサイトではこれが限界でした。もっと上流に行けば望めるポイントがありそうです。
右岸下流の歩道より堤体下流面を望む
季節は夏ということもあり草木が生い茂っていますが、右岸下流側はしっかりと堤体下流面が望めるようになっていました。
右岸下流のヘアピンカーブより堤体下流面を望む
下流側に移動してきました。ドーンと目の前に堤体下流面が望めるのはうれしいポイントですね。堤体の下流側、左右両岸に箱型の構造物が付属していますが、こちらは常用洪水吐としてのオリフィスゲートになります。現地看板にはなぜかコンジットゲートと表記されていました。ゲートの構造は高圧ラジアルゲートでサイズは高さ3.20mx幅3.20m。左右両岸にそれぞれ1門ずつ設置されています。
下流より堤体下流面を望む
堤体の下流面を真正面に見ることが出来るのもうれしいポイントです。赤いクレストゲートがとても印象的です。また、クレストゲートから下流側にせり出しているオリフィスゲートを抜けて副ダムまでの一帯がシンメトリになっていて、そのためか顔立ちがより端正に見えます。兵庫県にある一庫ダムも似たようなデザインですが、この構造は見た目がカッコよくなりますね。
君ヶ野ダムは伊勢湾台風を契機に建設されたダムですが、雲出川の下流域は完成した後も何度も水害に悩まされてきた地域です。もちろん被害が大きくならないように君ヶ野ダムによって洪水が低減されていますが、雲出川の上流にはもうダムを建設できる余地がありません。
そのため下流域で堤防や河道の改修あるいは遊水地を整備するぐらいしか方法がありません。そうした意味ではこの君ヶ野ダムは雲出川にとって最後の砦ともいうべき治水の要でもあるのです。
また、治水だけでなく、ダム下流の約3,000haの農耕地に不足用水として補給したり、津市や松阪市に上水道として補給したり、さらには中勢工業地帯に工業用水として補給も担っています。
そんな君ヶ野ダムは、今後も三重県津市や松阪市の人々を守り続けていくことでしょう。そんな君ヶ野ダムをぼくも見守り続けたいと思います。
君ヶ野ダム諸元
所在地 | 三重県津市美杉町八手俣 |
河川名 | 雲出川水系八手俣川 |
目的 | F(洪水調節、農地防災) N(不特定用水、河川維持用水) W(上水道用水) I(工業用水) |
型式 | G(重力式コンクリートダム) |
堤高 | 73m |
堤頂長 | 323m |
堤体積 | 331,000㎥ |
流域面積 | 80km2 |
湛水面積 | 80ha |
総貯水容量 | 23,300,000㎥ |
有効貯水容量 | 19,700,000㎥ |
ダム事業者 | 三重県 |
本体施工者 | 熊谷組 |
着手年 | 1964年 |
竣工年 | 1971年 |
ダム湖名 | ― |
その他の設備/所感
駐車場 | ○ |
トイレ | ○ |
公園 | ○ |
PR展示館 | × |
釣り | ○(禁漁区を除く) |
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