取材日:2015/2/18(水)
この日は新成羽川ダムをみんなで見に行こうと誘われて、その道中で立ち寄ったのが千屋ダムです。見た目では豪華な装備なので直轄ダムのように見えますが岡山県営のダムになります。時間は朝7時40分頃。みぞれ混じりの見学となりました。
左岸より
その豪華な装備というのがこれ。非常用洪水吐として自由越流式が11門に加え、クレストゲート(ローラーゲート)が4門、常用洪水吐としてオリフィスゲートが2門、コンジットゲートが2門と万全の備えで構えています。その他、5段の直線多段式の選択取水設備が1基、利水放流管が1門あります。
洪水調節用放流設備のスペックは以下の通り。
放流管
形式 | 角形フード付円形埋設鋼管 |
寸法 | 呑口部 W3.200mxH4.400m 中間部 Φ2.400mxΦ2.000m |
条数 | 2条 |
流量 | 100㎥/sec |
竣工年月 | 平成9年3月 |
製作 | 三井造船株式会社 |
主ゲート
形式 | ジェットフローゲート |
口径 | Φ2000mm |
門数 | 2門 |
開閉速度 | 0.1m/min |
開閉方式 | 油圧シリンダ方式 |
竣工年月 | 平成9年3月 |
製作 | 三井造船株式会社 |
副ゲート
形式 | リングホロワゲート |
口径 | Φ2000mm |
門数 | 2門 |
開閉速度 | 0.3m/min |
開閉方式 | 油圧シリンダ方式 |
竣工年月 | 平成9年3月 |
製作 | 三井造船株式会社 |
千屋ダムの建設碑です。本体工事は平成1年(1989)3月から平成9年(1997)6月と8年かけて建設されたことが分かります。それにしても「平成」と聞くと最近のように思ってしまうのですが、すっかり遠い昔になってしまったのですね。
左岸上流側には立派な建物がありますが、これは艇庫で貯水池の巡視船を格納しておく倉庫です。向こう側(貯水池側)にはインクラインも付属しています。
天端は自動車の通行が可能です。
千屋ダムの貯水池は「千水湖(せんすいこ)」と名付けられています。
左岸にはもう一つ石碑があって河川名「高梁川(たかはしがわ)」と彫られています。
上流面を見てもとても県営のダムとは思えないほど設備の充実っぷりがすごい。
左岸には管理所があります。また展示室も併設されていますが、朝が早すぎてまだ開いていません。模型などの展示物がすごいらしいので、改めて訪問したいですね。
壁面の「Chiya Dam」のフォントがホテルオークラみたいでおしゃれですね。
天端へ
上流の山の方はうっすらと全体的に雪が被っていて白くなっていました。風も強かったように思います。
天端の真ん中にはコンジットゲートの予備ゲートが見えます。
予備ゲートのスペックは以下の通り。
形式 | 鋼製ローラーゲート |
扉体幅・扉体高 | W3.700mxH4.620m |
門数 | 2門 |
開閉速度 | 巻上時0.5m/min 巻下時1.0m/min |
扉体重量 | 32t |
竣工年月 | 平成9年3月 |
製作 | 三井造船株式会社 |
下流側は直下ど真ん中にコンジットゲート(ジェットフローゲート)の建屋があるのがちょっと珍しい設計になっています。副ダムの真ん中に切り欠きがあるのは、ジェットフローゲートから出た水が副ダムに当ってダメージを与えないようにする…わけじゃないですよね。
選択取水設備の建屋になります。
各スペックは以下の通り。
取水ゲート | 制水ゲート | 下部ゲート | |
形式 | 直線多段式ゲート(5段) (取水量5㎥/s) | 鋼製スライドゲート | 鋼製スライドゲート |
有効寸法 | 幅3.5mx高さ38.5m | Φ1.9m | Φ1.9m |
門数 | 1門 | 1門 | 1門 |
開閉速度 | 0.3m/min | 上げ0.5m/min 下げ1.0m/min | 1.0m/min |
扉体重量 | 77.3ton | 5.1ton | 1.8ton |
竣工年月 | 平成9年6月 | 平成9年6月 | 平成9年6月 |
製作 | 三菱重工業株式会社 | 三菱重工業株式会社 | 三菱重工業株式会社 |
右岸へ
右岸までやってきました。雨は止んでいるのですがちょっと足元が悪いです。左岸の法面の上部にコンクリート構造物が2基並んでいるのが見えますが、ケーブルクレーンの基礎跡でしょうか。
右岸の上部にも同じようなものがありました。
デザインといい、機能といい、やはりとても県営のダムとは見えません。天端の下流側に2箇所のトンガリ屋根をした東屋がありますが、艇庫と管理所の屋根の色が統一されているのがまた良いですね。
濡れそぼる堤体上流面。朝が早いせいもありますが、ぼくら以外は誰もいません。こういう冬の雰囲気って意外と良いんですよね。
下流側
天端レベルから下流側に移動してコンジットゲート(ジェットフローゲート)の建屋を見ます。下流側はかなり堤体に近づくことができます。こうして見るとなかなかに大きな建屋です。
天端から見えていた切り欠きのある副ダム。よく見ると左右にスクリーン付きの穴が開いていて水が抜けるようになっているようですね。
千屋ダム取水放流設備の建屋です。三角形のガラス屋根の庇が特徴的ですね。
取水放流設備のスペックは以下の通り。
放流管用主ゲート
形式 | ジェットフローゲート |
有効寸法 | Φ0.65m |
門数 | 1門 |
開閉速度 | 0.05m/min |
重量 | 12.8ton |
竣工年数 | 平成9年6月 |
製作 | 三菱重工業株式会社 |
放流管用副ゲート
形式 | 円形高圧スライドゲート |
有効寸法 | Φ0.65m |
門数 | 1門 |
開閉速度 | 0.1m/min |
重量 | 9.7ton |
竣工年数 | 平成9年6月 |
製作 | 三菱重工業株式会社 |
下流の広場には試験湛水で使用されたオリフィスゲートと放流管がモニュメントとして設置されています。試験湛水のときには角落しを利用するのかと思っていたのですが、鋼製スライドゲートとはまた驚きです。しかも試験湛水のときにしか使わないのはもったいない気がしますが、バブル期に建設が進められたダムだからでしょうか。
岡山県企業局千屋発電所(の裏側)です。なぜかちゃんとした外観は撮影していませんでした。千屋発電所は利水放流の水を利用するダム式発電所となり、最大3,000kWの電力を賄います。
ここから見てもとても県営のダムとは思えない豪華っぷり。そして巨大さです。
下流からディテールを見ていきます。クレストゲートの巻き上げ機室はデザインも造作もしっかりとしたものになっています。天端の手前に張り出している三角屋根が展望台で左右両岸に配置されています。その下にはオリフィスゲート。よく見ると中央付近と展望台の下流面には化粧型枠が施されています。
そして下部にはコンジットゲート(ジェットフローゲート)。
何から何まで絢爛豪華な千屋ダムでした。
千屋ダム諸元
所在地 | 岡山県新見市菅生 |
河川名 | 高梁川水系高梁川 |
目的 | F(洪水調節、農地防災) N(不特定用水、河川維持用水) W(上水道用水) I(工業用水) P(発電) |
型式 | G(重力式コンクリートダム) |
堤高 | 97.5m |
堤頂長 | 259m |
堤体積 | 697,000㎥ |
流域面積 | 88km2 |
湛水面積 | 111ha |
総貯水容量 | 28,000,000㎥ |
有効貯水容量 | 26,200,000㎥ |
ダム事業者 | 岡山県 |
本体施工者 | 大林組・鹿島建設・大本組 |
着手年 | 1971年 |
竣工年 | 1998年 |
ダム湖名 | 千水湖(せんすいこ) |
その他の設備/所感
トイレは管理所内にあるようです。天端の展望台は当サイトの定義からは外れるため×としています。
駐車場 | ○ |
トイレ | ○ |
公園 | × |
PR展示館 | ○ |
釣り | ○ |
展望台 | × |
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