取材日:2013/08/03(土)
有峰ダムから有峰林道小口川線を西に進むと左手に見えてくるのが祐延ダムです。難読ダムで「すけのべ」と読みます。油断すると「すけべの」に見えてしまうので注意しましょう。ちなみに資料によっては「すけのぶ」と呼ぶ場合もあるそうですが、正式にどちらなのかは分かりませんでした。
右岸より天端を見る
この日は改修工事中で少し離れたところからの見学となりました。なお、祐延ダムは普段から天端が立入禁止になっています。
右岸より堤体上流面を見る
大規模な改修工事で見た目が随分と変わってしまうのかと思いましたが、その後のネット上にUPされている祐延ダムの写真を見てもあまり変わったという印象がないので、堤体ではなく取水設備や導水路関係の改修工事だったのかもしれません。(訪問当時、工事看板は未確認)
天端には資材搬入用のモノレールが敷かれ、動力車と荷物台車も見えます。また、Google Mapsの空中写真にもレールが薄っすらと延びているのが見えます。
右岸より堤体下流面を見る
祐延ダムは北陸電力の前身である日本海電気によって1931年に竣工した戦前のオールドダムです。また、冬は厳しく雪深い寒冷地であることから凍害によってコンクリート表面はかなり痛々しい様子です。痛々しいながらもオールドダムらしく風格を感じるダムです。
なお、当然ですが痛々しいのは堤体表面のみの影響であり、ダム管理や安全面に直ちに影響があるものではなく、強度としても問題ありません。また、これまで何度も補修工事を行っているようです。
祐延ダムで取水された水は小口川第三発電所で発電されますが、その有効落差は621.2mで揚水式発電を除いて日本一の高さを誇ります。また、発電された水は真立ダムの貯水池に放流されます。真立ダムは貴重なバットレスダムですが、その周辺は山深い上に立入禁止のため残念ながら見学することは叶いません。いつか観てみたいものですね。
さらに祐延ダムには当該ダムを上池、真立ダムを下池として、発電機とは別に揚水ポンプが設置され、昭和9年(1934年)に国内2例目となる揚水式発電が行われていたという興味深いエピソードがあります。なお、昭和43年(1968年)にはポンプを撤去されていますので、現在では揚水発電は行われていません。
また、昭和44年にプレパクトコンクリートによる修繕工事を行った際の論文によれば、恐らく竣工時の話だと思いますが、冬期に貯水池が氷結することによる堤体への氷圧を避けるため、技術者新井栄吉特許の圧縮空気噴上げを行ったというエピソードもあるそうです。
祐延ダムでは冬期貯水池の氷結による堤体への氷を防止するため、新井栄吉氏特許の圧縮空気噴上げの方法を採用した、とある。これは水面下9mの堤体面に沿って配管したφ38mm鉄管に、約1.5m間隔にノズルをつけ圧縮空気を噴出させて水面の氷結を防ぐ方法である。土屋氏は本地点のような山奥の貯水池の防結装置としては最も適当であると述べておられるが、この装置のその後の使用状況および効果について御存知の方がおられれば御教示いただきたいと願っている。
引用:プレパクトコンクリートによる祐延ダム修繕工事
下流より堤体下流面を見る
クレストゲートは自由越流式のように見えますが、天端にゲートを操作する機器のようなものが特に2枚目の写真には写っていることもあり、天端の陰にスライドゲートが格納されているようです。ただ現在では撤去されたという情報もあり、これ以降訪問していないため詳細は不明なままです。
堤体下部に穴が見えますが、土砂吐用の穴でしょうか。
下流より堤体下流面を見る
他に堤体が観られる良いポイントは無いかと探しますが、これが限界でした。
オールドダムであるが故の豊富なエピソードを持つ祐延ダムでした。
祐延ダム諸元
所在地 | 富山県富山市有峰 |
河川名 | 常願寺川水系小口川 |
目的 | P(発電) |
型式 | G(重力式コンクリートダム) |
堤高 | 45.45m |
堤頂長 | 125.46m |
堤体積 | 44,000㎥ |
流域面積 | 6.8km2 |
湛水面積 | 60ha |
総貯水容量 | 8,786,000㎥ |
有効貯水容量 | 8,753,000㎥ |
ダム事業者 | 北陸電力株式会社 |
本体施工者 | 佐藤工業 |
着手年 | 1928年 |
竣工年 | 1931年 |
ダム湖名 | 祐延貯水池 |
その他の設備/所感
駐車場はダムサイトに数台が駐車できるスペースがあります。なお、たびたび有峰林道小口川線は通行止になることがあるようですので、事前に道路情報を確認しておくと良いでしょう。
駐車場 | ○ |
トイレ | × |
公園 | × |
PR展示館 | × |
釣り | ○? |
コメント