取材日:2013/3/24(日)
七色ダムでダム愛好家ヘルメットを受け取った後に池原ダムまで移動しました。こちらも電源開発が所有し、発電専用のアーチダムとなります。
国道169号より堤体下流面を望む
池原ダムは堤体に越流部がなく、洪水吐は別の場所にあるため左岸・右岸・上流・下流の表現がちょっとややこしいダムです。ですがここに河川があるものとして進めます。
堤体の直下には北山スポーツ公園があり、キャンプ場やサッカーコートやテニスコートなどのプレイスポットが広がります。
堤体直下の北山スポーツ公園より堤体下流面を望む
北山スポーツ公園まで来ました。非越流型ドーム型アーチダムをまさに「仰ぎ見る」ことができるのです。ステージもありますのでダムライブとかやりたいですね。
さらに堤体に近づいてみる
ステージを越えて堤体に近づくと、土塁のように土が盛られた場所がありますが、なぜこうしているのかは不明です。
直下のフェンスや門
残念ながらその土塁のようなものを越えるとフェンスに阻まれ、これ以上は近づくことはできません。
直下の様子
直下には桜の木が植えられ、ちらほらと花が咲いていました。
管理所&展望台&トイレ
天端レベルまで上がってきましたが、堤体ではなく取水設備や洪水吐周辺を先に見学します。この円筒形の建物は無人の管理所と展望台とトイレが一体になっています。水車を模しているようにも見えますがどうなんでしょうか。
取水設備
発電用の取水設備です。左から1号・2号・3号・4号ですが、3~4号は洪水時の濁水対策のための表面取水設備になっています。
表面取水設備解説看板
こちらが表面取水設備の解説看板です。
展望台より堤体上流面を望む
展望台からは上流面を捉えることができます。霞んでいるのが少し残念ですが、しっかりと水を堰き止めているのが伝わってくるかと思います。
取水設備と洪水吐
展望台から取水設備と洪水吐を望んでいます。左の奥に堤体上流面が見えていますので、それぞれの位置関係が分かるかと思います。
展望台
屋上が展望台になっている建屋の隣が地山になっていて、小さな橋を渡って行くことができますが、その上も展望台として開放されていました。
謎の遺構
建設時の遺構でしょうか。地山の展望台にて見ることができます。
慰霊碑と電源神社への階段
さらに奥に進むと慰霊碑と電源神社への階段が見えてきます。
池原電源神社
電源神社を参拝します。小さなお社ですが、鳥居が石造でものすごく立派です。
電源神社付近より堤体上流面を望む
色んな所から堤体が見られるのは高ポイントですね。
謎の遺構その2
周囲にはこうした遺構が点在しています。こちらも建設時に使用されたものなのでしょうか。
謎の遺構その3
何の遺構なのかが分かればまた違ってくるとは思いますが、見ていて飽きないですね。
洪水吐のゲートピア
池原ダムのローラーゲートは幅15.0mx高さ16.842m。それだけ巨大なものを支えるため、ゲートピアも巨大なものになります。
ローラーゲートとシュート部や下流を望む
これがそのローラーゲートです。これほどにまで巨大なローラーゲートが4門ありますから、シュート部も巨大なものになります。減勢工も不思議な造りをしていますね。
洪水吐より下流を望む
それにしてもすごい光景です。導流壁で隠れてしまっていますが、下には発電所の施設が見えています。北山川の流れもヘアピンカーブのように流れているのもすごいですね。ですが、洪水吐の先が河川のヘアピンってちょっと違和感があります。
通常ならダムは河川の流れに沿って建設されますから、下流は減勢工からまた河川が始まるようになります。ですが、この池原ダムは洪水吐の下を河川が横切っているのです。
建設前の航空写真
不思議だなと思って建設前(1947/9/23、昭和22年)に米軍が撮影した航空写真を国土地理院のサイトから入手してみました。
建設後の池原ダム周辺の航空写真
で、こちらが建設後の池原ダム周辺の航空写真です。これ見ただけで鼻血が出そうです。(撮影:2019/11/05、令和元年)
洪水吐と洪水吐の位置関係
そして、建設前の航空写真でダム周辺を拡大してみました。また、現在の航空写真と比較して堤体と洪水吐の位置をプロットしてみました。すると、なんと堤体下流の下北山スポーツ公園がある場所はもともと北山川だったことが分かりました。
公園の南端に大きな池がありますが、北山川の名残だったわけですね。しかも洪水吐は北山川をショートカットさせるようにして山の尾根に設置しているのが分かります。
さらに西側(写真の左側)からは池郷川という河川が本来なら下北山スポーツ公園の南端あたりで北山川に合流するのですが、建設後はその合流点から洪水吐のあたりまでの北山川は池郷川として変更され、洪水吐から下流をもともとの北山川としているようです。
これでなぜ洪水吐の下を河川が横切っているのかが分かりました。それにしてもすごい…。
左岸より堤体下流面を望む
ようやく堤体まで来ました。
左岸よりダム湖・取水設備・洪水吐を望む
あの洪水吐がもともと山だったということを思うと、やはり人間の力ってすごいと痛感します。
左岸より天端を望む
とても広い天端です。自動車の通行も可能で七色ダムと同様に天端国道となっています。
ダム湖百選の銘板
池原ダムのダム湖「池原貯水池」は上北山村と下北山村による推薦で、一般財団法人水源地環境センターが認定するダム湖百選に認定されています。銘板が汚れてしまっていますが、こういう時のための掃除道具が要りますね。
池原ダムも七色ダムと同様にバス釣りのメッカでランカーサイズと呼ばれる50cm以上の大物も狙えるんだそうです。
天端中央より下流を望む
もはや河川ではないので下流というのも微妙な気もしますが、旧下流といったところでしょうか。それにしてもここから見るとフェンスから堤体まで結構広いんですね。
右岸下流の天端高欄
ものすごい鋭角的にデザインされた高欄です。
右岸より天端を望む
右岸も広いですね。釣り人や家族連れなど、山奥ですが観光客があちこちで見受けられます。この写真にも家族連れが写り込んでいますね。
右岸より堤体上流面を望む
丸みを帯びた堤体がなんとも言えない艶めかしさがあります。
右岸より堤体下流面を望む
やはりドーム型アーチダムは鳥が翼を広げたような姿に見えるのが一番良いですね。かっこよすぎて帰りたくなくなります。
周辺のダムの位置関係を示す鳥瞰図
坂本ダム(奈良)・池原ダム・七色ダム・小森ダム(三重)の位置関係を示す鳥瞰図がダムサイトに設置されていました。ただ坂本ダムは国道425号が通行止めであることや、小森ダムは時間がなく今回は訪問できませんでした。またいつか訪問したいと思います。
右岸展望台より堤体を望む
右岸の尾根には下北山スポーツ公園のコテージがあり、そこに通じる道の途上に堤体が望める場所があります。
いろんな場所から堤体や洪水吐が見られて、見どころたくさんの池原ダム。バス釣りのメッカであり、桜も名所であったり、温泉がありキャンプ場もありますので1日中遊べるダムだと思います。
池原ダム諸元
所在地 | 奈良県吉野郡下北山村上池 |
河川名 | 新宮川水系北山川 |
目的 | P(発電) |
型式 | A(アーチダム) |
堤高 | 111m |
堤頂長 | 460m |
堤体積 | 647,000m3 |
流域面積 | 300km2(直接:277km2、間接:23km2) |
湛水面積 | 843ha |
総貯水容量 | 338,373,000m3 |
有効貯水容量 | 220,083,000m3 |
ダム事業者 | 電源開発(株) |
本体施工者 | 熊谷組 |
着手年 | 1962年 |
竣工年 | 1964年 |
ダム湖名 | 池原湖(池原貯水池) |
その他の設備/所感
駐車場 | ○ |
トイレ | ○ |
公園 | ○ |
PR展示館 | × |
釣り | ○(禁漁区域を除く) |
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