愛媛県のダム

2243-柳瀬ダム(やなせだむ)/ 愛媛県

4.0
2243-柳瀬ダム(やなせだむ) 愛媛県のダム
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取材日:2014/3/1(土)

新宮ダムから貯水池沿いを通る国道319号を経由してやって来たのは上流に位置する柳瀬ダムです。四国には「魚梁瀬」と書いて同じく「やなせ」と発音するダムが徳島にあるため、口頭だと「どっち?」ってなってしまうこともしばしば。

ちなみに国道319号はかなり道幅が狭くワインディングもキツイため移動の際には注意が必要です。

柳瀬ダム管理支所

柳瀬ダムはこれまで国土交通省が管理していましたが、2021年(令和3年)に水資源機構に委託されることになりました。したがって2014年の当時は下の写真の通り柳瀬ダム管理支所でしたが、現在では柳瀬ダム管理庁舎となっています。

柳瀬ダム管理支所
柳瀬ダム管理支所

柳瀬ダムの下流には水資源機構が管理する新宮ダム、上流にも同じく機構が管理する富郷ダムがあるため、両ダムの間に位置する柳瀬ダムの管理が国土交通省から水資源機構に委託されるのは、業務の効率化・合理化の面では必然の流れだったのかもしれません。

絵でみる銅山川ダムのはたらき

新宮ダム・柳瀬ダム・富郷ダムの位置関係と役割がよく分かる図です。洪水調節については下に断面で描かれているのが面白いですね。津波のように描かれていますが、洪水の恐ろしさと調節することでの安心感を伝えようとするとこんなイメージになるのでしょう。

絵でみる銅山川ダムのはたらき
絵でみる銅山川ダムのはたらき

右岸の高台より堤体を見る

管理所のある右岸は高台になっており、柳瀬ダムを俯瞰で捉えることができます。クレストゲートは鋼製ローラーゲートで高さ9.00x幅10.625mが4門という構成です。また、下の写真では見えづらいですが、左岸寄りの導流部、敷高EL.254.55mの位置には放流バルブとして0.8x0.8mの高圧スライドバルブが1門設けられています。

右岸の高台より堤体を見る
右岸の高台より堤体を見る

句碑

千仭の飛瀑登よもし時鳥(せんじんのひばくどよもしほととぎす) 黙禅

堤体を見下ろす管理所脇には句碑が建てられています。ホトトギスの鳴き声とともにクレストゲートからのダイナミックな放流音が伝わってくるような気がします。作者の黙禅は酒井黙禅(サカイモクゼン)と言って日赤松山病院の元院長さんだそうで、鹿森ダムにも彼の句碑があるんだとか。

句碑
句碑

右岸の高台より貯水池を見る

時間はまだ8時。朝靄というか雲がまだ天を覆っていました。貯水池は新宮ダムと違って名称があり、金砂湖(きんしゃこ)という名称です。飛鳥時代に銅山川で砂金を採取していたことがその名の由来だそうです。

右岸の高台より貯水池を見る
右岸の高台より貯水池を見る

右岸の広場

右岸の地山の中腹あたりに東屋のあるちょっとした広場があります。奥にトイレがありますが、今では新しくなってバイオトイレとしてリプレイスされたようです。右手奥の看板は諸元・建設の歴史・貯水容量配分図・図面がかなり詳細に書かれています。

右岸の広場
右岸の広場

謎の建屋

天端レベルまで降りてきました。右岸には謎の建屋が2棟並んでいます。手前の新しい建屋は電気関係の設備でしょうか。

謎の建屋
謎の建屋

建設時の遺構

奥にあるこれまた渋い建屋は柳瀬ダム建設時のプラント跡のようです。取り壊さず今も現役で活用されているようですが物置だったりするのでしょうか。

建設時の遺構
建設時の遺構

右岸より天端を見る

1953年竣工のダムとあってなかなか趣きのある天端です。ゲートピアでクランクしているあたりは、丸山ダム(岐阜)を代表とした同年代の重力式コンクリートダムにどことなく似ていますね。

右岸より天端を見る
右岸より天端を見る

柳瀬ダム銘板

「柳瀨堰堤」と彫られた銘板です。「瀬」ではなく旧字の「瀨」が用いられているのがまた良いですね。

柳瀬ダム銘板
柳瀬ダム銘板

左岸より堤体下流面を見る

長い年月によって渋さが堤体のコンクリート表面に現れています。下の写真では下流が見えますが残念ながら道がないため下流から堤体を仰ぎ見ることはできません。

左岸より堤体下流面を見る
左岸より堤体下流面を見る

天端より右岸を見る

右岸ダムサイトの一部は棧になっていました。建設用プラントを残すことにした結果、管理用の通路を確保できずやむなく棧を掛けたのでしょうか。

天端より右岸を見る
天端より右岸を見る

すてきなゲート操作室

角の取れて全体的に丸みを帯びたデザインがすてきなゲート操作室です。

すてきなゲート操作室
すてきなゲート操作室

その反対側のゲート操作室

しかし残念ながらすべてのゲート操作室がそうなのではなく、5つあるうちの3つは下の写真のようなプレハブタイプのものに更新されてしまっていました。

その反対側のゲート操作室
その反対側のゲート操作室

ゲートピア

そして特徴的なゲートピア。まるで肉抜き加工のように穴が開けられています。中空重力式コンクリートダムのようにコンクリートを節約するためにこのように施工されているのでしょうか。ピアの奥にゲート操作室がありますが、通路や扉が狭くなっています。それにしても真ん中の穴にラックとともにケーブルを敷設するのはけっこう大変だったのではないでしょうか。

ゲートピア
ゲートピア

ちなみに今ではゲート操作室になっている部分が以前は1箇所だけテラスになっており、そこから下流を見下ろすことができたようです。

天端より下流を見る

古い方のゲート操作室は丸みを帯びていますが、その下部や導流部から立ち上がるゲートピアも全体的に丸みを帯びたデザインで柔和な印象を与えています。

天端より下流を見る
天端より下流を見る

左岸より堤体下流面を見る

一部が苔むし、粗いコンクリート表面が時代を感じさせます。

左岸より堤体下流面を見る
左岸より堤体下流面を見る

左岸の水利使用標識

こんなに整然と並んだ水利使用標識はあまり見たことがないような気がします。あちこちにあるよりは一箇所にまとまっていた方が、そのダムがどんな役割を担っているか分かりやすくて良いかもしれませんね。

左岸の水利使用標識
左岸の水利使用標識

左岸より天端を望む

天端に入ることが出来るのは嬉しい限りですね。自動車はもちろん通行不可です。

左岸より天端を望む
左岸より天端を望む

左岸より堤体上流面と貯水池を見る

静かな湖面です。対岸に2つの取水塔が見えます。右側の取水塔は発電用で銅山川を短絡する形で銅山川第二発電所に送水され最大2,600kWを発電します。

左側の取水塔は法皇山脈の地下トンネルを通って宇摩地区にある銅山川第1発電所に送水され1号機と2号機合わせて最大14,300kWの電気を生み出します。また、この発電所で利用された水は水道用水・かんがい用水・工業用水にも利用されるため、地下トンネルは分水トンネルと呼ばれます。

左岸より堤体上流面と貯水池を見る
左岸より堤体上流面と貯水池を見る

新宮ダムのページでも書きましたが、銅山川を分水して利用することは四国中央市の宇摩地区の人々にとっては江戸時代からの悲願でした。そして長い年月を経て1953年(昭和28年)の10月にその悲願が成就されるに至ります。

右岸のテニスコート

右岸に戻ってきました。直轄ダムのテニスコートはちょっと珍しいような気がしますが、使われなくなって久しい状況のようです。職員の福利厚生や健康増進の一環として設置されたものと思いますが、遊んでると指摘されるのが嫌で使われなくなったのか、人員削減で休憩時間にテニスをしている余裕がなくなってしまったのか、あちこちのダムでこうした放棄されたテニスコートを良く目にしますね。

右岸のテニスコート
右岸のテニスコート

右岸より堤体上流面を見る

平常時最高水位の痕跡がくっきりと見えます。利水だけでなく洪水調節も担っていますので、何度も戦ってきた痕跡と言えるのかもしれません。

右岸より堤体上流面を見る
右岸より堤体上流面を見る

右岸より貯水池を見る

四国中央市宇摩地区の方々の悲願だった銅山川の水は、未来永劫満々と水を湛えて地区へと送水されていくことでしょう。

右岸より貯水池を見る
右岸より貯水池を見る

柳瀬ダム諸元

ダム事業者が愛媛県となっていますが、建設当時は愛媛県から委託を受けた建設省(現・国土交通省四国地方整備局)が事業を行っています。

所在地愛媛県四国中央市金砂町小川山
河川名吉野川水系銅山川
目的F(洪水調節、農地防災)
A(かんがい用水)
W(上水道用水)
I(工業用水)
P(発電)
型式G(重力式コンクリートダム)
堤高55.5m
堤頂長140.7m
堤体積131,000㎥
流域面積170.7km2(直接:69.5km2、間接:101km2)
湛水面積155ha
総貯水容量32,200,000㎥
有効貯水容量29,600,000㎥
ダム事業者愛媛県
本体施工者鹿島建設
着手年1948年
竣工年1953年
ダム湖名金砂湖(きんしゃこ)

その他設備/所感

貯水池の金砂湖はバス釣りスポットだそうですが、堤体のすぐ下流と上流の網場までは禁漁区となっています。

駐車場
トイレ
公園×
PR展示館×
釣り○(禁漁区を除く)

柳瀬ダム周辺の地図

柳瀬ダム周辺の天気

柳瀬ダムに近いと思われる宿泊施設

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この記事を書いた人
神馬シン

福澤桃介をこよなく愛するダム愛好家/ダムペディア・ダムニュース管理人/(一財)日本ダム協会公認ダムマイスター(01-018)/放流注意グッズの販売はじめました→https://shop.dampedia.com

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