福岡県のダム

2439-犬鳴ダム/いぬなきだむ

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2439-犬鳴ダム/いぬなきだむ 福岡県のダム
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所在地:福岡県宮若市犬鳴字二番野72-2
取材日:2011/06/13(月)

犬鳴ダムに怪異の類はありません。この記事にもその類のことは書いてありません。それを期待して来たのなら今すぐブラウザバックしてください。肝試しで地元の方々へ迷惑行為をするのならダムには行かないでください。

下流に架かる犬鳴大橋より堤体を望む

仕事でトラックで福岡まで行った時のものですが、名古屋を深夜に出発して早朝に福岡に着いたものの、あまりに早朝過ぎて休憩を兼ねつつ時間を潰すためにやって来ました犬鳴ダム。トラックだと止める場所が限られるので、カジュアルにダムに行くのはなかなか難しいです。

オリフィスゲートからの放流

さて、安定の雨。それでもほとんど止んでいましたが、濡れる堤体がいい味を出しています。またオリフィスから放流していて、これはこれで良かったかなと思います。それにしても犬鳴大橋はトラックがバンバン通るので、撮影しててもものすごく橋が揺れます。

司書の湖周回公園案内看板

「司書の湖」と書いて「ししょのうみ」と読みます。ダム湖の名前です。なぜ図書館司書?と思いましたが、江戸時代末期、福岡藩の家老だった加藤司書がその由来だそうで、加藤司書の功績を讃えて一般公募の中から決まったそうです。加藤司書は幕末に開国を迫る外国に対向するため、犬鳴の地に鉄山を築かせたり、有事の際に藩主を匿うための山城を築いたりしたそうです。

右岸より下流側の堤体を望む

雨上がりの早朝、季節は新緑。マイナスイオンを浴びまくりで、なかなか気分が良いです。

右岸より下流側の堤体ならびに下流を望む

犬鳴ダムは県営のダムですが、この看板がなんとなく国土交通省っぽいと感じました。

右岸より天端を望む

ご覧のとおり天端は自動車の通行ができません。

右岸よりダム湖側の堤体を望む

しっとりと濡れる天端高欄がいい雰囲気を醸しだしてくれます。なにかレリーフが埋め込まれているようですので、あとでしっかり見てみましょう。

右岸よりダム湖側の堤体を望む

クレスト部の非常用洪水吐は自治体系ダムによくある自由越流式。

泉の広場

右岸ダムサイトに有る「泉の広場」。ダムを表してるのかと思いましたが、そうではないようですね・・・。

右岸よりダム湖を望む

「犬鳴」という地名は、この近辺の山で猟銃を手に猟犬とともに猟をしていた猟師が、なかなか鳴きやまない猟犬を獲物が穫れないからと撃ち殺したそうです。しかし、頭上には5mを超す大蛇が出現。猟犬は主に危険を知らせるために鳴いていたのに、それを撃ち殺してしまったことをひどく後悔した猟師は、猟銃を捨てて僧となり山に犬を供養するための塔を建てたそうです。それ以降「犬鳴」と呼ばれるようになったとか。

右岸よりインクラインを望む

左岸にインクラインが設置されています。

右岸より選択取水塔を望む

2m x 6.2mの鋼製ローラーゲートの表面取水ゲートが1門、口径800mmの鋼製スライドゲートの取水口ゲートが6門備わっています。

右岸よりオリフィスゲートを望む

下流側から放流していたダム湖側の呑口ですね。

犬の石像1

天端の車止めポールの上に鎮座する犬の石像です。ちょっとかわいくて面白いです。

犬の石像2

片側にもう1基石像がありますが、こちらは犬なの!?という感じです。

ホトトギス?ウグイス?

天端高欄に埋め込まれたレリーフです。ホトトギスなのかウグイスなのか・・・。

天端よりオリフィスからの放流と下流を望む

結構な高さがありますが、堤高は76.5m。

天端より下流の犬鳴大橋を望む

朝のラッシュ時間に近づいていましたが、結構飛ばす車が多かったですね。

水位計測室(手前)とエレベーター室(奥)

結構大きなエレベーター室です。定員6名、速度60m/分のエレベーターだそうです。

取水設備室

取水設備室の入口です。取水設備のスペックは前述のとおりです。

けい船設備室

けい船設備は電動巻上式。所有する船舶は巡視船と塵芥回収作業船の2隻。

左岸より天端を望む

堤頂長は230mと対岸が見えないぐらい結構な長さがあります。

ちくしなる犬鳴川の怒るとも鎮めてダムはみちたたへたり

遠賀川水系犬鳴川流域は年間降水量が1800mm前後あり、その半数以上が洪水期にもたらされるそうです。

犬鳴ダム竣工前の本流域は、河川改修工事を継続して行っていたものの、抜本的な解決に至らず昭和28年の豪雨では甚大な被害が出たそうです。

さらにこのエリアは過去に何度か干害に遭っていたそうですが、昭和41年には大旱魃が発生。

周辺の街には大工業団地が造成され、水需要も一気に高まったようです。

それ故に、この句を詠んだ方は、万感の想いを込めて詠んだのでしょう。ダムの完成は悲願だったとこの字面から読み取れます。

左岸よりダム湖側の堤体を望む

上流に民家がなく、下流には民家があるものの、かなりの高さを登ってこなければならないためか、朝にもかかわらず散歩する人は皆無でした。雨が止んだ直後だというのもあるのでしょうが。

左岸より下流側の堤体を望む

濡れる堤体が実に素晴らしく美しいです。

犬鳴ダム管理所

朝の巡視をしていたのか職員の方にお会いしました。簡単に挨拶をしたものの、こんな朝に一眼持っててどう思われたのやら。

篠崎豊彦翁頌徳碑

上流に前述の加藤司書が尽力して建設した福岡藩の犬鳴御別館の跡地があり、その跡地に加藤司書忠魂碑があるらしいのですが、それを建立したのがこの篠崎豊彦だそうです。

天端右岸側より下流を望む

下流から堤体を見上げられそうですが、Google Mapsやストリートビューを見る限り、かなり手前にゲートがあって立入禁止になっているようです。この時はトラックだったので慣れない土地で事故が怖くて行きませんでしたが、行かなくて正解でした。

右岸より右岸のフーチングを望む

フーチングに手すりがないので、階段の昇降時はちょっと怖いですね。

右岸より左岸のフーチングを望む

左岸側のフーチングは堤趾導流壁と一体になっていますね。

右岸より減勢工を望む

全面越流した時にこの小さな減勢工がどうなるのか想像しただけでワクワクします。

犬鳴お茶屋 米の花

管理所の近くにトイレがあったのですが、あまり綺麗じゃなかったので使わず、下流側にあるこのお店の1Fがトイレになっていてお借りしました。お店のトイレというよりはダムの施設の一部のようですね。

お店自体は朝が早いため営業時間外でしたが、ランチは美味しい料理を提供してくれるようです。いつかまた食べに行きたいですね。

犬鳴ダムは県営のダムでしたが、役割満載のダムで重要な役割を担っているダムでした。九州観光の際にぜひ訪れてみてください。歴史好きな方も楽しめるかもしれません。

犬鳴ダム諸元

河川名遠賀川水系犬鳴川
目的洪水調節・農地防災、不特定用水・河川維持用水、上水道用水、工業用水
型式重力式コンクリートダム
堤高76.5m
堤頂長230m
堤体積230,000m3
流域面積6.1km2
湛水面積23ha
総貯水容量5,000,000m3
有効貯水容量4,850,000m3
ダム事業者福岡県
本体施工者清水建設・住友建設・為広建設
着手年1970年
竣工年1994年
ダム湖名司書の湖

その他の設備/所感

右岸ダムサイトにかなり広い駐車場があります。左岸にもありますが、やや道路が狭くなっています。トイレは管理所近くと犬鳴お茶屋「米の花」の1Fにあります。

駐車場
トイレ
公園
PR展示館×
釣り○?

犬鳴ダム周辺の地図

犬鳴ダムに近いと思われる宿泊施設

この記事を書いた人
神馬シン

福澤桃介をこよなく愛するダム愛好家/ダムペディア・ダムニュース管理人/(一財)日本ダム協会公認ダムマイスター(01-018)/放流注意グッズの販売はじめました→https://shop.dampedia.com

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