取材日:2013/10/6(日)
with DAM NIGHT in Nagoyaのプレゼンテーションや展示のためのダム写真を撮影するため木曽川のダム群を巡り最終的な目的地としてやってきたのが丹生川ダムでした。丹生川ダムは岐阜県営の多目的ダムで重力式コンクリートダムとなります。
右岸より堤体上流面を見る
到着時間は17時20分頃。味噌川ダムや奈川渡ダムを経由したため、すっかり夕方になってしまいました。丹生川ダムは訪れたこの年の前年となる2012年に竣工したばかりという新しいダムで、写真のとおりコンクリートもまだ新しい状態でした。
右岸より天端を見る
天端は自動車の通行が可能となっていますが、ダム湖の周囲が道路でつながっていないため1周することはできないようです。
天端より導流部・減勢工を見る
丹生川ダムはクレストもオリフィスも自由越流式になっています。下流の減勢工脇には放流設備の操作室が見え、バルブから河川維持放流と思われる水が出ている様子も伺えます。
ちなみにこの訪問から3年後の2016年には放流設備のさらに下流側に、河川維持流量を利用した丹生川水力発電所が中部電力によって増設されることになります。最大出力は350kW。ですので今では少しだけ雰囲気が異なっているかと思います。
天端よりさらに下流方向を見る
遠くに見える集落はダム周辺と同じく折敷地(おしきじ)という地区で、荒城温泉恵比須之湯というファンも多い小さな日帰り温泉施設があります。
天端よりダム湖を見る
静かなダム湖です。湖の名称は五味原湖(ごみはらこ)と言って、水没した地区の名称がつけられています。
取水放流設備
スクエアなデザインの取水放流設備の建屋です。選択取水ゲートと水位低下用のスライドゲートが格納されているようです。ここで取水された水が下流の放流設備で放流されます。
丹生川ダム取水放流設備・選択取水ゲート
平成24年6月完成
事業者名 | 公共河川総合開発事業 |
管理者 | 岐阜県 |
名称 | 選択取水ゲート |
構造形式 | 円形多段式シリンダーゲート |
数量 | 1門(4段) |
純径間 | 2.50m |
取水範囲 | 15.5m(EL857.00~EL841.50) |
水密方式 | ゴム水密 |
開閉方式 | ワイヤーロープウインチ(1M1D式) |
開閉速度 | 0.3m/min |
扉体重量 | 16 ton |
施工者 | IHI・丸徳特定建設工事共同企業体 |
丹生川ダム取水放流設備・水位低下用ゲート
平成24年6月完成
事業者名 | 公共河川総合開発事業 |
管理者 | 岐阜県 |
名称 | 水位低下用ゲート |
構造形式 | スライドゲート |
数量 | 1門 |
呑口寸法 | Φ1.20m |
水密方式 | 金属水密 |
扉体重量 | 0.5 ton |
施工者 | IHI・丸徳特定建設工事共同企業体 |
五味原湖石碑
左岸までやって来ました。貯水池名を記した石碑が設置されています。
丹生川ダム石碑
やや反対を向くような感じでダム名を記した石碑があります。貯水池名は高山市長、ダム名は知事の名前が彫られています。
左岸より堤体上流面を見る
丹生川ダムは堤体だけでなく管理所や周辺の広場も含めて周囲の景観との調和が認められて、2013年度グッドデザイン賞を受賞しています。また、土木学会デザイン賞2014奨励賞も受賞しています。
ダムの上流面においては緩やかな曲線を描いた洪水吐の呑口と、それを支える下部の円柱にデザインの素晴らしさが現れています。一般的なダムのデザインとしてはここまでする必要はないのかもしれませんが、公共のインフラとして市民に親しまれるデザインというのは今後においても必要になってくるのでしょう。(個人的には機能を最優先にした無骨なデザインも好きではありますが)
管理所正面ファサード
管理所は堤体の次にシンボリックなものでなければならないというデザイナーや設計者の意図が見え隠れするデザインです。
宿直の方と思われるクルマが1台止まっていましたが、ダムカードがいただける時間はとっくに過ぎていましたので断念して他を見て回ることにしました。
管理所裏
管理所の裏側も決して手を抜いていません。ちなみに手前はトイレになっていて、奥の階段は管理所の屋上にある展望台へと繋がっています。
管理所屋上展望台への階段より堤体を見る
個人的にココは詰めが甘かったな…と思えてしまうポイントです。もっと階段をダム寄りにして、管理所の建物が視界に入らないようにしてほしいところです。(わがままなのは承知の上です😁)
屋上展望台より堤体を見る
ここも個人的にちょっと残念ポイント。管理所の構造上、ギリギリまでフェンスを建てられなかったのか、安全に配慮してなのかは不明ですが、ここからも管理所の一部が視界に入ってしまいます。展望台はちょっと残念ですが、左岸に遊歩道が設けられているのは超高ポイント。あとで行ってみることにします。
左岸より天端を見る
天端の高欄部分はなるべくシンプルにした感じですね。その分の予算を洪水吐の意匠や周辺整備に回したのかもしれません。
左岸の遊歩道より堤体下流面を見る
まるで見学者に堤体下流面も観てもらうことを意識して造られたような遊歩道ですが、しっかりとその役割は担っていると思います。
そして堤体下流面のデザインの最大の特徴が、左右それぞれ3段になっている導流壁。単一的な漸縮型導流壁とせずあえて3段とすることで、彫りの深いキリッとした印象からやや物腰が柔らかい印象を持たせてくれます。
下流の橋より堤体下流面を見る
辺りはすっかり暗くなってしまいましたが下流まで移動しました。機能自体は自治体型のダムによく見られるシンプルな堤体でありながら、デザインは様々な趣向を凝らしていて観ていて実に飽きないダムです。
右岸下流の放流設備のフェンスから堤体下流面を見る
あの特徴的な導流壁、ぜひ真下から間近に観てみたいものですね。
2013年度グッドデザイン賞・土木学会デザイン賞2014奨励賞を受賞しただけあって、堤体・管理所・広場などが一体となったランドスケープデザインが施され、100年の後もみんなからきっと愛されるダムとなることでしょう。
丹生川ダム諸元
所在地 | 岐阜県高山市丹生川町折敷地 |
河川名 | 神通川水系荒城川 |
目的 | F(洪水調節、農地防災) N(不特定用水、河川維持用水) W(上水道用水) P(発電) |
型式 | G(重力式コンクリートダム) |
堤高 | 69.5m |
堤頂長 | 227m |
堤体積 | 231,000㎥ |
流域面積 | 23km2 |
湛水面積 | 32ha |
総貯水容量 | 6,200,000㎥ |
有効貯水容量 | 5,300,000㎥ |
ダム事業者 | 岐阜県 |
本体施工者 | 大林組・三井住友建設・市川工務店・TSUCHIYA |
着手年 | 1975年 |
竣工年 | 2012年 |
ダム湖名 | 五味原湖 |
その他の設備/所感
駐車場 | ○ |
トイレ | ○ |
公園 | ○ |
PR展示館 | × |
釣り | ○? |
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