取材日:2015/2/18(水)
新成羽川ダムをしっかりと見学させていただき、田原ダムを軽く見学した後にやってきたのは岡山県営の河本ダムでした。河本ダムは中空重力式コンクリートダムで、洪水調節や発電と共に水島臨海工業地帯への工業用水に利用されています。
今回は職員さんの案内付きで見学させていただきます。ただ、中空部は残念ながら見学させていただけませんでした。
左岸
左岸から順に見ていきます。まずは堤体上流面。中空重力式なのでその特徴の一つであるタコ足の上部が見えています。
右岸には土砂崩れの痕跡がありました。
逆光がかなりキツイ💦
河本ダムの天端の手すりは珍しいピンク色をしています。
天端は自動車通行が可能ですが、渡ったところでダム管理所と、その一番奥には新見市のごみ焼却施設があるだけです。
最上部にアンテナがありますので通信用の設備だと思いますが、説明を聞いたような聞いていないような…。あと建設時のクレーンの基礎跡などのようにも見えますが不明です。
中空重力式らしさあふれる急勾配な下流面。
天端へ
天端を渡ります。ゲート巻き上げ機室は少し独特な形をしていました。
河本ダムにはクレストゲートが2門あり、スペックは以下の通りとなります。
純径間x扉高 | 12.0x10.3m |
開閉速度 | 0.3m/min |
扉体重量 | 43.8t |
製作年月 | 昭和38年12月 |
製作 | 石川島播磨重工業株式会社 |
クレストゲートの扉体はだいぶ薄い印象を受けますが、その反面太いシャフトに剛健さを感じさせます。
いたってシンプルな減勢工です。副ダムのあたりで少し幅が広がているのが分かります。副ダムで跳ね返された水をそこで受け止める役割を担っているのでしょう。
下流には集落が点在し守っている感がありますが、右岸は三共精粉(株)という企業の工場があります。炭酸カルシウムや寒水砕石を製造しているようです。驚いたのはぼくの地元の隣町にも同じ会社の工場があることが判明し少し親近感が湧きました。
クレストゲートを点検するための階段ですね。作業者の安全に配慮したつくりになっています。
右岸へ移動
しっかりと草が刈られた跡が見えます。
右岸に階段がありそこから直下へと降りることができるようになっています。確かこの階段は自由に昇降可能だったと思います。(かなりうろ覚えなので間違えていたらごめんなさい)
というのも右岸には広場があるからなんですね。テーブルやベンチも用意されていて、一般に開放されています。
河本ダムは中空重力式コンクリートダムですが、ここから見ると普通の重力式に見えるのが不思議です。レンズのせいかもしれませんが。
でもこの急な勾配はまさしく中空重力式。勾配は1:0.50となっています。
完全に影に入ってしまって暗くなってしまっていますが、シュッとした堤体ですね。天端上に構造物が少ないためか、よりシンプルに見えます。
堤体周辺には桜の木が植えられていますが、地元の方々が観光のためにと植えられたようです。ちなみに哲多町(てったちょう)は新見市と合併し「新見市哲多町」としてその名を残しています。
これは桜の時期に来てみたいですね。そういえば天端高欄がピンク色なのは桜をイメージしてのことのようですね。
桜が満開だったら、さぞかし美しいんじゃないでしょうか。
上流面はタコ足よりも上の部分は勾配がなく垂直になっているように見えますが、垂直なのは上部の見える場所なだけで、水没している部分は1:0.50ですので、堤体を横から見た断面は立派な二等辺三角形になっています。
河本ダムでは竣工してから13年後にダム周辺環境整備事業が行われ、植生や整地や緑地化を中心にトイレやベンチなども設置されました。
かつてこの地域は「山賊谷」と呼ばれていたんだとか。享保の時代に西川沿いを通る旅人の金品を強奪する1人の盗賊がいたことから名付けられたようです。(詳しくは現地の看板を)
左岸に戻る
再び左岸に戻ってきました。中空重力式コンクリートダムの特徴であるタコ足。水位が高いため上部だけしか見えませんがおもしろいですよね。
左岸に管理所と新見発電所へと水を送る取水設備があります。
新見発電所は最大取水量24.0㎥/s、常時使用水量5.5㎥/s、最大出力10,900KW、常時出力1,200KWで発電しています。
下流へ
管理所で案内してくださった職員さんに謝意を伝えて離脱。一同は堤体下流面が見える位置へと移動しました。クレストゲートと空の色がとてもマッチしています。また、ここから見ると中空重力式コンクリートダムっぽさが出てきますね。
堤体下流面が見える場所にはお地蔵さまがダムを見守るようにして佇んでいました。今までいろんなダム愛好家も見守ってきたかもしれません。そしてぼくたちはまた次のダムへと向かうのでした。
河本ダム諸元
所在地 | 岡山県新見市金谷 |
河川名 | 高梁川水系西川 |
目的 | F(洪水調節、農地防災) I(工業用水) P(発電) |
型式 | HG(中空重力式コンクリートダム) |
堤高 | 60m |
堤頂長 | 258.6m |
堤体積 | 216,000㎥ |
流域面積 | 332.5km2(直接:225.5km2、間接:107km2) |
湛水面積 | 80ha |
総貯水容量 | 17,350,000㎥ |
有効貯水容量 | 11,100,000㎥ |
ダム事業者 | 岡山県 |
本体施工者 | 大本組 |
着手年 | 1958年 |
竣工年 | 1964年 |
ダム湖名 | ― |
その他の設備/所感
駐車場 | ◯ |
トイレ | ◯ |
公園 | ◯ |
PR展示館 | × |
釣り | ◯(要遊漁券) |
展望台 | × |
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