取材日:2012/9/16(日)
鎧畑ダムからさらに北上してやって来たのは玉川ダム。愛媛県にも同名のダムがありますが、こちらは秋田県の直轄ダムです。ちなみに訪問から7年半近く経った2020年1月時点では、この玉川ダムが私が訪れたダムの中で最北端となります。
右岸の下流広場より堤体を望む
玉川ダムは堤高が100m、堤頂長が441.5mというとても大きなダムです。竣工が1990年ということでバブル絶頂期に建設されたダムなだけに、そこかしこにバブルの面影を残すダムだったりします。
右岸の下流広場よりクレストを望む
玉川ダムはクレストにラジアルゲートが4門、オリフィスゲートが1門、この写真には写っていませんがコンジットゲートが2門という構成です。
右岸の下流広場よりコンジットゲートを望む
そしてなぜ2門あるコンジットゲートを両方撮らなかったのか…
右岸ダムサイトより下流側の堤体を望む
天端レベルまで移動してきました。すっかり暗くなってきましたが、限界まで撮影を続けます。
玉川ダム竣工記念碑と土木学会技術賞記念碑
立派な石碑です。土木学会の記念碑は当時としては画期的なRCD工法を採用し、ダム建設工事に合理化が図られたことによる表彰を受けての石碑です。
RCD石碑
なので玉川ダムにはRCDを称えるモノがあちこちにあります。これとか。
RCD植栽
これとか。玉川ダムがRCD推しなのはダム愛好家の中でも有名な話ですが、何がすごいのかイマイチピンときません。ですが、RCD工法は労災を減らす実績があるらしいです。詳しくはダム便覧にRCD工法を開発した廣瀬利雄さんのインタビュー記事がありますのでそちらをご覧ください。
別にdisってる訳じゃないですよ。念のため。
玉川ダム資料館
玉川ダムにはこんな立派な資料館が併設されています。中を見たかったのですが、残念ながら閉館時間を過ぎていて観ることは出来ませんでした。
玉川ダム管理所
資料館とデザインを合わせた管理所です。いや、資料館が管理所に合わせてるのかも。時間外でしたが嘱託の方がたまたま巡視から戻ってこられて、ダムカードを頂戴することが出来ました。
右岸より天端を望む
ダム見学に来ていたご家族を発見。
右岸よりダム湖と堤体を望む
玉川ダムも水位が低かったですね。堤体が茶色いのは酸の影響なのでしょうか。ちなみに鎧畑ダムでも触れましたが、玉川ダムに流れる玉川は元来強酸性の河川で、上流にある玉川温泉の近くで中和処理を行っています。時間の都合上、中和処理工場には行けませんでしたが、温泉とセットで見学しても良いかもですね。
玉川温泉の源泉から噴出するpH1.1もの酸性水は毒水とも呼ばれ、農業にも大きく影響するほどの強酸性の水でしたが、江戸時代から対策が行われ現在では農業用水を取水する地点でpH6.3まで改善されているそうです。
右岸より上流側の右岸を望む
玉川ダムは下流もそうであったように上流側も整備されていて、公園のようになっています。
観測計器室
水位計やプラムラインが格納されているようです。
表面取水設備取水ゲート上部建屋
表面取水設備取水ゲートの上部建屋です。表面取水設備のスペックは以下のとおり。
型式:鋼製多段式ローラーゲート(ベルマウス付)
最大取水量:66.1m3/s
取水範囲:EL.397.400~357.700
門数:1門
寸法:幅7.0mx高さ43.15m
開閉速度:0.3m/min
扉体重量:182.8t
竣工年月:昭和63年10月
製作者名:日立造船株式会社
表面取水設備
吸い込まれそうな高さです。それにしてもすごいグラデーション。
エレベーターハウス
エレベーター塔とも言われますが、現地の案内看板にエレベーターハウスという名称が使われてしましたので、当サイトでもこのページではそのまま使っています。 2階にメンテナンス用の扉がついていますね。
ゲートハウス
ゲート巻き上げ機室ですがゲートハウスという名称が使われていました。
クレストゲートより下流を望む
中部電力管内に住んでるせいか赤いゲートだと妙な安心感があります。
コンジット副ゲート
コンジット主ゲートは高圧ラジアルゲートで堤体内部に格納されているため外からは観ることが出来ませんが、こちらはダム湖側に設置された副ゲート。
コンジットゲート自体は2門で計画高水流量2,800m3/sのうち2,600m3/sを調節して、200m3/sの放流能力があります。また、万が一を想定して200%の能力になっているんだとか。
左岸より天端を望む
対岸が遠く感じるほど大きなダムだということがわかります。
左岸法面
アバットメントからの法面。全面をコンクリートで固められすごい立派な法面です。
左岸より下流側の堤体を望む
色んな所から堤体を観ることが出来るのがまた良いですね。
左岸よりダム湖側の堤体を望む
見学しているうちにさらに日が沈んでしまいました。東北なのに暑い日でしたが、少し秋めいてきた感じもあります。
カリヨンの鐘
艇庫の上が展望台になっていて、「カリヨンの鐘」という毎正時に自動演奏する電気式の鐘が設置されています。また、自由に人力で鳴らせる鐘もあります。
カリヨンの鐘の展望台からインクラインを望む
インクラインも比較的大きなもので立派です。
カリヨンの鐘の展望台からダム湖側の堤体を望む
照明がつくほど暗くなってきました。玉川ダムはバブル時代のダムということもあり、何もかもが揃っていて、しかもそのすべてが立派というバブリーなダムですが、見どころいっぱいで飽きさせないダムでした。
また、私の家からは遠くて滅多に行けないダムですが、玉川ダムはまたいつか訪れたいダムのひとつです。秋田県自体もこれ以降訪問できていませんが、きりたんぽを食べに行きたいものです。
玉川ダム諸元
所在地 | 秋田県仙北市田沢湖田沢 |
河川名 | 雄物川水系玉川 |
目的 | F(洪水調節、農地防災) N(不特定用水、河川維持用水) A(かんがい用水) W(上水道用水) I(工業用水) P(発電) |
型式 | G(重力式コンクリートダム) |
堤高 | 100m |
堤頂長 | 441.5m |
堤体積 | 1,150,000m3 |
流域面積 | 287km2 |
湛水面積 | 830ha |
総貯水容量 | 254,000,000m3 |
有効貯水容量 | 229,000,000m3 |
ダム事業者 | 東北地方建設局 |
本体施工者 | 鹿島建設・奥村組・地崎工業 |
着手年 | 1973年 |
竣工年 | 1990年 |
ダム湖名 | 宝仙湖 |
その他の設備/所感
駐車場 | ○ |
トイレ | ○ |
公園 | ○ |
PR展示館 | ○ |
釣り | × |
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