所在地:栃木県日光市川治温泉川治
取材日:2010/10/02(土)
右岸の展望台より導流部を望む
この丸みを帯びた女性的な導流部!
右岸の展望台よりクレスト部を望む
さらに、ここも丸みを帯びてるクレスト部!
右岸の展望台より減勢工を望む
そして、この減勢工とコンジット!!
右岸の展望台より堤体を望む
東京日本橋から50里。ついにここまで来ました五十里ダムです!
右岸の展望台より下流を望む
下流には温泉街があって、雰囲気も良さそうです。できることならゆっくりと滞在したいものです。
右岸の展望台に設置された案内看板と石碑
立派な看板と石碑です。特に看板は歴史を思わせるデザインになっており、周辺地域や五十里ダムについての案内が載っていました。
まだ時間があるので、天端よりも先に下流側に行こうと思いましたが、この日はあいにく整備工事中のようで、見学できませんでした・・・。では、そろそろ管理所へダムカードを頂きに行きましょう。
五十里ダム管理所入口
・・・と思ったら入れないww
時間は8時半頃。9時から見学ができるようです。次の予定があるので、イチかバチかピンポンして、せめて天端からの見学だけでも・・・とお願いしましたがダメでした。
五十里ダム管理所
しかし10分前には開けていただきました。「急かしてしまったようですみません」とひと言謝り、ダムカードゲット。
右岸より天端を望む
この日、一番乗りを果たしてしまいましたw
誰もいない!
思う存分五十里ダムを満喫できます!
五十里ダムは1956年(昭和31年)に完成したダムで、やや古いダムですが整備しながらもきちんと活用しているという雰囲気が感じられました。また、堤高は112mですが日本で初めて100mを超えたダムであり、さらに当時は高さ日本一を誇っていたそうです。
さらに五十里ダムの建設の歴史を簡単に言いますと、大正15年に建設計画が始まり、昭和4年には掘削開始、昭和8年には断層が見つかり一時建設中止、昭和16年に洪水の被害を受けながらも再び建設に着手し、昭和17年は戦争で中断・・・となかなか苦労の歴史だったようです。
それに大正時代に100m級のハイダムを計画するとは恐れ入りました。
右岸より下流側の堤体を望む
五十里ダムはフーチングに階段が設置されているのではなく、アーチダムのようにキャットウォークが設置されて、それを使って下流まで巡視できるようです。
五十里ダム下流面図・標準断面図
正面から拝めなかったので、この図面などでお勉強。
堤体中央に「旧コンジットゲート」と書かれていますが、このゲートは「全開・全閉」の2つしか操作ができず、放水能力も100t/秒程度と低かったらしく、そのため水位の調整が大変難しかったそうです。そこで右岸側に500t/秒という能力を持つ新しいコンジットゲートを設置することになったのだそうです。もちろん部分的に開放が可能なゲートです。
五十里ダムの働き【洪水調節】
新コンジットゲートの詳細な工事の模様は鹿島のwebサイトでご覧いただけます。とにかくこれを読んで感動しました。
そして、このグラフを見ても旧コンジットゲートでの洪水調節がいかに難しかったかを窺い知ることができます。
五十里ダム年間貯水位曲線
平成10年の五十里ダムが頑張った時の証拠です。新コンジットゲートは2003年の完成ですから、まだ旧コンジットゲートで調整を行っていた頃ですね。
鬼怒川上流ダム群連携事業
実に面白いのがこの「鬼怒川上流ダム群連携事業」です。この五十里ダムとすぐ隣にある川治ダムを、長さ1.1km内径3mの導水路で直接的に連結して「ダムとダムとのネットワーク」を形成するというものです。
鬼怒川上流ダム群連携施設
これによって五十里ダムが満水で貯水できないような流入量が発生したとき、最大で20m3/sを貯水容量の大きい川治ダムへポンプによって導水し、逆に五十里ダム直下や鬼怒川本流の河川維持流量が不足するような場合は、川治ダムから五十里ダムに導水するという連携ができるのだそうです。
五十里ダムと川治ダムが個別に動くのではなく、双方が連携しあって下流を守る・・・そんなイメージです。
一つ一つは単なる火ですが、二つ重なれば大きな炎となる。・・・まぁ、この場合は水ですが。
ということで、古いダムでもきちんと活用しているのがこの事業でも理解できます。
インクライン
このインクラインも整備されたばかりのようでかなりキレイでした。
巡視艇の登場シーンが見てみたいですw
右岸天端より減勢工を望む
河川維持放流中ですね。
あと、右岸側に設置されている構造物が新コンジットゲートになります。いまは工事中でこの下流の辺りは行けませんが、工事が終わったら散策できるようになるそうですので、ぜひ再訪してこのコンジットゲートを近くで見てみたいですね。
ゲートピアを望む
かなりゴツく感じるゲートピアです。ゲート巻き上げ室がドッシリと乗っかっている感じですね。
ローラーゲートを望む
幅10mx高さ5.2m(これは上部扉高で下部扉高は8.3mで合計13.5mと二段門扉になっている。)のクレストゲートのローラーゲートもご覧の通りのゴツさです。風格すら感じられます。ちなみに日立造船製。
クレストゲートは全部で3門。最大で300m3/sを吐けるそうです。
予備ゲート扉体?
旧コンジットゲート用の予備ゲート扉体だと思います。
鳥・・・種類は知らん。
天端に鳥さんがいたのでパシャリ☆
でもなんて名前か知りませんw
天端より減勢工を望む
下流が工事中でなければ・・・。この写真を見て何度も何度もそう思いますが、致し方ありません。
それよりも堤体の古さと新コンジットゲートの新しさの対比が面白いですね。
左岸寄りの天端よりダム湖を望む
堤体の規模に比してダム湖が細く感じられ、川治ダムとの連携も頷けます。
それにしてもなんという青空でしょう。
左岸より天端を望む
ダムと青空って似合うと思いませんか??
右岸に設置された石碑
慰霊碑には手を合わせましょう。
先人の苦労が偲ばれるひと時・・・。
右岸よりダム湖側の堤体を望む
右側がコンジットゲート、左側がクレストゲートですね。
コンクリートの表面が、歴史を感じさせる色になっており、風格のあるダムです。
右岸よりダム湖を望む
この上流には湯西川ダムが建設中です。近い将来、こうして新旧のダムが連携して洪水を調整するようになるかと思うと、ますます期待が高まりますね!
ダム諸元
河川名 | 利根川水系男鹿川 |
目的 | 洪水調節、農地防災、不特定用水、河川維持用水、発電 |
型式 | 重力式コンクリートダム |
堤高 | 112m |
堤頂長 | 267m |
堤体積 | 468,000m3 |
流域面積 | 271.2km2 |
湛水面積 | 310ha |
総貯水容量 | 55,000,000m3 |
有効貯水容量 | 46,000,000m3 |
ダム事業者 | 関東地方建設局 |
本体施工者 | 鹿島建設 |
着手年 | 1941年 |
竣工年 | 1956年 |
ダム湖名 | 五十里湖(いかりこ) |
その他の設備/所感
駐車場は右岸の展望台と管理所横にあります。下流整備後はこちらも停められるようになるかも。ただし、管理所横の駐車場は朝9時からしか開きません。
駐車場 | ○ |
トイレ | ○ |
公園 | × |
PR展示館 | ○ |
釣り | ○ |
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