取材日:2013/2/11(月)
この日は来名したダムマニアの宮島さんを乗せて滋賀のダムを巡りました。そして初訪問の大原ダム。大原ダムはもともと昭和18年(1943)に着手し、途中太平洋戦争で工事が中断しつつも昭和33年(1958)に完成していますが、平成19年(2007)から平成23年(2011)にかけて大改修工事が行われました。
なお、ダム便覧では旧堤体は1962年に竣工したとありますが、現地看板には「昭和30年7月24日に貯水が開始」(「完成した」とは書かれていない)と書かれており、滋賀県のウェブページには「昭和33年に完成」と記載があるためこちらに合わせています。
右岸の石碑と堤体上流面を望む
右岸に駐車するスペースがあるため、そこにクルマを停めて見学します。石碑がいくつか並んでいます。左の石碑には「大原貯水池」と書かれ背面にはスペックの一部が書かれています。右の変わった形の石碑は「座標柱」と書かれ、東経136度17分・北緯34度54分・海抜309.200mを示していました。
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土地改良区による看板
あれ!?この看板には「昭和30年竣工」と書かれていますね…。
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陸上自衛隊県道改修工事記念碑
右岸に滋賀県道129号南土山甲賀線(鹿深の道)が通っていますが、陸上自衛隊が改修工事を行った時の記念碑のようです。
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功績を偲ぶ碑
誰の何の功績なのかは記載がなく分かりませんでした…
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右岸より堤体上流面を望む
2年前に改修工事を終えたばかりでキレイな堤体です。その後の平成27年にこの上流面に太陽光発電のためのソーラーパネルが設置されたようですが、その前の貴重なショットと言えるかもしれません。
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右岸より天端を望む
残念ながら天端は立入禁止でした。これだけキレイに整備されているのにもったいない限りですが仕方がありません。
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右岸より堤体を望む
フェンス越しに撮影します。
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左岸の道路より洪水吐を望む
クルマで左岸まで移動しますが、その途中に水路に架かる橋を通過します。その際に洪水吐を望むことができます。水路自体は改修前のものをそのまま利用しています。
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水路に架かる橋より下流を望む
下流は大原川として流れ、その先は杣川に合流し、さらに野洲川と合流して琵琶湖へと流れます。
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左岸より天端を望む
左岸もフェンスに阻まれます。
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左岸より堤体下流面を望む
下流面もきれいな堤体です。堤体の耐震補強工事には掘削土を有効活用するために砕・転圧盛土工法が採用されているそうです。
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砕・転圧盛土工法は現地の看板に簡易的な解説がされていました。
この工法は、池底の泥土と堤体を掘削した土にセメントミルクを混合して強度を高め、一定期間(3日程度)固化させたあと規定の大きさに解砕した土を、敷き均し・転圧作業を繰り返して築堤をします。
現地看板より
詳細は論文がJ-STAGEにありますので、興味のある方は読んでみると良いでしょう。
論文はちょっと…という方にはフジタのサイトにわかりやすい解説が載っています。
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洪水吐付近よりダム湖と取水設備を望む
取水設備も最新のものになっています。
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側水路式の洪水吐
一般的なタイプの側水路式洪水吐です。
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旧取水設備のモニュメントと案内看板
改修前の取水設備で使われていた6門のうち最下部にあった鋼製スライドゲート(口径700mm)です。竣工時の昭和30年から平成21年までずっと使われていたそうです。
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現地看板の改修工事の写真
現地の看板には改修工事の写真がありました。
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洪水吐に架かる橋より下流を望む
先に見える橋が前述で撮影したポイントです。あの橋も改修前から架けられていたようです。
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大原貯水池管理棟
管理棟と言っても取水設備の制御室を兼ねているようです。
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取水設備の辺りより堤体上流面を望む
石張でしっかりと護岸され、見た目がとてもキッチリとした印象を受けます。
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取水設備
管理棟の裏にある取水設備です。
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銘板にはスペックが書かれています。
大原貯水池取水ゲート
現地銘板より
ゲート型式:ステンレス製スライドゲート
有効径:Φ700
門数:5門
斜樋管:円形埋設鋼管(STPY400)Φ1000
製作年月日:平成23年2月
製作・据付:株式会社丸徳鉄工
堤体直下
堤体直下まで移動しました。堤高27.4mは改修後も変わらずの高さです。なかなかの大きさを感じらるポイントです。
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農業用水のポータル
取水設備からの水がトンネル水路を通ってここから流れるようになっていますが、改修工事で暗渠化されていました。ポータルは改修前からあったものですが「昭和24年竣工」と書かれていますね。トンネルだけ真っ先に造ったのでしょう。中央の文字は当時の知事による揮毫で「滾々不盡」と書かれています。
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左岸直下より堤体下流面を望む
大規模改修工事をしつつも歴史あるポータルをそのまま残していることに感動を覚えます。
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幹線分水工
取水された水はこの分水工で大原幹線用水路・油日幹線用水路・大原川に分水されます。製作は三基工業株式会社。この辺りも改修工事と合わせて取り替えられているようです。
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小さく貼られたプレートには以下の記載がありました。
幹線分水工
現地プレートより
大原幹線ゲート・大原川ゲート・油日幹線ゲート
設計水深:1200mm
純径間x扉高:1360x1200・1670x1050・1170x1200
揚程:1200mm~0~-550mm(-440mm大原川)
製作番号:23-0001
完成年月:平成23年2月
中央のゲートを上から見たところ
シンプルでわかりやすいつくりです。

中央のゲートを下流から望む
ゲートが開いていますがほとんど水は流れていませんでした。
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水位表示盤
水位表示盤は丸徳鉄工のものでした。この日の水位は大原幹線が0.3m、大原川が0m、油日幹線が0.2mを示していました。
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下流より分水工と堤体を望む
左が大原幹線用水路、真ん中が大原川、右が油日幹線用水路になります。分水工からは大原川は開削水路になっていました。
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最後に堤体を見る
天気は曇り空でいまいちでしたが、地域の安全のために大規模な改修工事を行いながらも歴史ある部分をきちんと残している大原ダムでした。
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大原ダム諸元
改修前の堤体と比較すると堤頂長が伸びて堤体積が増えています。また、現地看板による補足として、水深は19.8m、計画流量は1.65m3/s、設計洪水量は113m3/sとなります。
所在地 | 滋賀県甲賀市甲賀町神深山口 |
河川名 | 淀川水系大原川 |
目的 | A(かんがい用水) |
型式 | E(アースダム) |
堤高 | 27.4m |
堤頂長 | 209.2m(改修前:191.7m) |
堤体積 | 285,000m3(改修前:240,000m3) |
流域面積 | 6.1km2(直接:3.9km2、間接:2.2km2) |
湛水面積 | 19ha |
総貯水容量 | 2,120,000m3 |
有効貯水容量 | 1,830,000m3(改修前:2,120,000m3) |
ダム事業者 | 滋賀県 |
本体施工者 | フジタ・三東工業社 |
着手年 | 2007年(改修前:1943年) |
竣工年 | 2011年(改修前:1958年) |
ダム湖名 | 大原貯水池 |
その他の設備/所感
駐車するスペースがあるのですが、駐車場と言って良いのか微妙なため△にしています。
駐車場 | △ |
トイレ | × |
公園 | × |
PR展示館 | × |
釣り | ○ |
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