和歌山県のダム

1649-椿山ダム(つばやまだむ)/ 和歌山県

4.5
1649-椿山ダム(つばやまだむ)/ 和歌山県 和歌山県のダム
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取材日:2015/1/28(水)

この日の2基目は椿山ダムでした。何度となく洪水を防いできたダムということで一度観てみたい和歌山のダムの一つです。設備が多く備わっており、見た目は国土交通省や水資源機構のダムのように見えますが、これが県営なのか!?という規模感のダムでした。

まずは左岸から見ていきます

R424から天端を渡って突き当たりにあるのがこの放流注意看板になります。

左岸の放流注意看板
左岸の放流注意看板

左岸上流側にダム管理所があります。色もデザインも時代と県営らしさあふれるものになっていますが、出窓にちょっとおしゃれ感ありますね。

椿山ダム管理所
椿山ダム管理所

左岸には水利使用標識・定礎・移転者顕彰の碑・ダム湖百選銘板が一箇所にまとめられています。

水利使用標識・定礎・移転者顕彰の碑・ダム湖百選銘板
水利使用標識・定礎・移転者顕彰の碑・ダム湖百選銘板

ダム湖百選の銘板はさすがにダム湖が見える位置にないといけませんね。この銘板が収まっているフレームが独特の形状をしていますが、何かを表しているようで…でも何を表しているのかは分かりませんでした。(管理所にも未確認)

(2023/3/18追記)このフレームの形状について管理所に伺ったところ、旧美山村区域の川の形状をイメージしたものだそうです。

ダム湖百選銘板とダム湖
ダム湖百選銘板とダム湖

椿山ダムには選択取水設備が左岸に備わり、クレストにはラジアルゲートが6門、コンジットゲートが5門あります。それにしても右岸の展望台が気になりますね…

左岸より堤体上流面を見る
左岸より堤体上流面を見る

天端は自動車の通行が可能です。下流側(左)の3階建ての建物はエレベーター等、上流側(右)のシャッターがある建物が取水設備操作室になります。その奥には下流側にクレストゲート用の巻き上げ機室、上流側にコンジットゲートの予備ゲート用の巻き上げ機室があって、設備が大変多くあり県営のダムというよりさながら直轄のダムのようです。

左岸より天端を見る
左岸より天端を見る

なお、選択取水設備のスペックは以下のとおりです。

型式鋼製5段式円形ゲート
3.5m~4.7m
有効高30.0m
開閉速度0.3m/min
扉体重量113t
門数1門
製作年月昭和63年3月
製作株式会社酒井鉄工所

取水口制水ゲートのスペックは以下のとおりです。

型式鋼製スライドゲート
純径間3.5mm
呑口高3.5m
開閉速度0.3m/min
扉体重量14.4t
門数1門
製作年月昭和63年3月
製作株式会社酒井鉄工所

天端

クレストゲート上からダム湖を見ます。鉄塔がすごく歪んでいますがレンズのせいですので気にしないでください💦

天端より貯水池を見る
天端より貯水池を見る

今度は反対側を見ます。減勢工右岸に「ツバヤマ」と植栽で書かれてるのが面白いですね。ちなみにそのすぐ近くにある減勢工の側壁は2021年12月17日に突然倒壊しています。2023年1月の時点ではまだ復旧工事中のようですが、側壁の打設自体は完了しているようです。ダムそのものや右岸の地山には影響がなかったとのことでひとまずは安心です。倒壊の原因については2023年1月の時点ではまだ発表がないようですがちょっと気になりますね。

(2023/3/18追記)椿山ダム管理所に倒壊原因について伺ったところ、今の時点では降雨などによるものではなく、様々な要因が複合的に作用したものと推察されているそうです。主な要因としては、擁壁背面の盛土内における長年にわたる水位昇降によって、擁壁にかかる水圧と土圧の増減が繰り返されたことが原因であると考えられているようです。

天端より下流を見る
天端より下流を見る

副ダムが二重になっているのも珍しいですね。ダブルで減勢させているようです。

(2023/3/18追記)この二重の副ダムは模型実験を行って放流水を適切に減勢する形状としてこの構造を採用したのだそうです。

下の写真の白い建物は関西電力株式会社美山発電所になります。日高川町に合併する前の旧美山村からその名が付けられた発電所です。最大出力は11,400kW。

天端より下流の発電所を見る
天端より下流の発電所を見る

右岸へ

とにかくこの日はよく歩きました。

右岸より天端を見る
右岸より天端を見る

貯水池の色が独特の緑色をしています。そういえばダム湖百選も銘板によればダム湖名が「椿山ダム湖」だそうでシンプルな名称ですね。あと和歌山県の夕日百選にも椿山ダムは選ばれているようです。

右岸より堤体上流面を見る
右岸より堤体上流面を見る

フーチングの一般利用は不可。しかししっかりと整備されているところを見ると、見学会などでは開放していそうですね。

右岸より堤体下流面と減勢工を見る
右岸より堤体下流面と減勢工を見る

ここから見ると下流面はとても直線的でかっこいいですね。コンジットゲート上のデフレクターというかクレストゲートからの放流を制水するための構造物がめちゃくちゃかっこいいです。(伝われ)

右岸より堤体下流面を見る
右岸より堤体下流面を見る

もうちょっと堤体下流面を見てみたいと思い、クルマで下流面が見える位置まで移動します。下流には大きな工場がありますので、その脇を通ると堤体下流面にたどり着くことが出来ます。

堤体下流面を見る
堤体下流面を見る

おぉ、これはすごい。堤高は56.5mと中規模クラスですが6門あるクレストゲートの中間下部にコンジットゲートが配置されている姿は整然としていて機能美を感じさせます。赤色のクレストゲートもグッとダムとしての印象を引き立ててくれます。

堤体下流面を見る
堤体下流面を見る

クレストゲートのスペックは以下の通り。面白いのは左岸の3門は石川島播磨重工業製、右岸の3門は丸島水門製作所製となっている点です。

型式鋼製ラジアルゲート
純径間11.500m
扉体高7.391m
開閉速度モータ 0.3m/min
エンジン 0.1m/min
扉体重量56.463t
門数6門
製作年月昭和63年3月
製作石川島播磨重工業株式会社
株式会社丸島水門製作所

コンジットゲートも同様に左右岸でそれぞれ製造会社が異なります。

コンジットゲート5.0mx5.6m 5門
放流管呑口 7.9mx9.318m 5条
終端 5.0mx5.6m
製作年月昭和63年3月
製作株式会社栗本鐵工所(左岸3門)
川崎重工業株式会社(右岸2門)

なんとコンジットゲートの予備ゲートも同様でした。

型式鋼製ローラーゲート
呑口幅7.900m
呑口高9.318m
開閉速度0.3m/min(流水遮断時0.6m/min)
扉体重量149.670t
門数5門
製作年月昭和63年3月
製作日立造船株式会社(左岸3門)
三菱重工業株式会社(右岸2門)

左右岸でそれぞれ製造会社が異なっているのは公共事業を1社独占で請け負わせていないことを世に示すためなのかな?と思ったりしました。さすがに選択取水設備だけは1基しかないので1社だけのようですが。

(2023/3/18)各ゲートの製造会社が異なっている理由を管理所に伺ったところ、やはり公共工事における受注機会の確保の観点により分割発注を行ったためだそうです。個人的には1社独占の方がコストダウンが見込める気がするのですが、きっと色々とあったのでしょうね。。。

クレストゲートとコンジットゲートをさらに拡大。

放流設備をさらにアップで
放流設備をさらにアップで

ゲート自体は奥に隠れて見えませんが、コンジットゲートの吐口部分です。なんだか見えない部分を隠し撮りしている気分になります。

下流からコンジットゲートを見る
下流からコンジットゲートを見る

よく見るとゲート巻き上げ機室に「椿山ダム」と書かれています。ゲートの色は赤というより朱色に近いですね。

クレストゲートをアップで
クレストゲートをアップで

右岸展望台

下流を堪能した後は右岸の展望台までやってきました。近くまでクルマで乗り付けられるので、割りと楽に来ることが出来ます。展望台にはコンクリート構造物があり「TSUBAYAMA」の文字が書かれ、椿のイラストが描かれています。恐らくケーブルクレーンの基礎の跡を展望台に転用したものと思われます。

展望台の構造物
展望台の構造物

さぁ、これが椿山ダムの展望台から見る堤体の姿です!下流面ではないのが少し残念ですが、ダムが水を堰き止めている感がしっかり出ていてとても良いですね。

展望台より堤体を見る
展望台より堤体を見る

展望台から貯水池方向を見ます。大きくカーブしているため上流端は見えません。左下の端の近くにある青いものはケーブルクレーンで、恐らく貯水池のゴミを回収するためのものだと思います。

展望台より貯水池を見る
展望台より貯水池を見る

実は椿山ダムにはもう一つ展望台らしきものがあります。これは実際に見ておかねば!と奮起して向かうことにします。

椿山ダム展望台航空写真(国土地理院)
椿山ダム展望台航空写真(国土地理院)

「みやまの里森林公園」の中に目指す展望台があります。公園入口のすぐ北側に「道のほっとステーションみやまの里」と呼ばれるお土産屋さんを兼ねた施設や広場の駐車場がありますので、そこに車を止めて徒歩で移動します。

みやまの里森林公園入口
みやまの里森林公園入口

息を切らせながら登ります。結構な急坂です。みやまの里森林公園内には藤棚が連なっており、長さは1646mで日本一の規模を誇るのだそう。ただ真冬なのでまったく藤棚感がない写真です。

展望台への階段
展望台への階段

頂上までたどり着きました。するとこんな立派な展望台が建っていました。これはきっとダムをすばらしい俯瞰で望めるに違いない!

展望台に到着!
展望台に到着!

「見せてもらおうか!もう一つの展望台の眺望とやらを…!!」と口に出したわけではありませんが、展望台から椿山ダムを見ます…見てます。個人的にはもう少し下流に展望台があって堤体のほぼ全体が見えると最高なのですが…うん、まぁ仕方がないですね。景色は良いです。

展望台より椿山ダムと貯水池を見る
展望台より椿山ダムと貯水池を見る

広々とした展望台です。初日の出スポットにもなるのかもしれませんね。アングル的に日の出にダムを含められないのはちょっと残念ですが。

展望台最上階
展望台最上階

ダムとは反対の方角を見ると稜線伝いに連なった藤棚や麓の集落などが一望できます。

展望台から集落を見る
展望台から集落を見る

行きは激坂を息を切らせながら登りましたが、帰りは稜線沿いに作られた藤棚の下を歩いていきます。遠回りですがこっちの方が緩やかな勾配なので行きもこちらのルートを使った方が良かったのかもしれません💦

日本一の藤棚
日本一の藤棚

展望台から麓まで降りてきました。途中、老人ホームの北側にこんな大きな杉の木があり「あかやの谷と蛇杉」という看板が建てられています。

あかやの谷と蛇杉
あかやの谷と蛇杉

この杉の木には一匹の大蛇が棲んでいました。上阿田木神社のお祭りは笛を吹きながら「お渡り」をするのですが、この杉の木の前の街道にさしかかると、笛の音色に大蛇が怒り、姿を現わして村人を襲いました。怒った村人たちは相談して大蛇を退治することになりました。

まずこの大蛇を棲んでいる大杉を切ることになりました。勇敢な氏子の一人が大杉に向かって斧を入れようとすると、大蛇が怒り狂って男に襲いかかってきました。男は必死になって斧を大蛇めがけて投げつけました。斧は見事に大蛇に命中し、あたりは血の海になりました。大蛇は傷つきながら森の奥深く逃げ込み、二度と姿を現わしませんでした。大蛇の流した血は谷となって流れ、この谷は今でも「あかやの谷」と呼んでいます。《前を流れている谷》

祭りのときは、この杉の木の前の街道は笛を吹かずにお渡りをします。

この杉は蛇杉と呼ばれ、切ると血が出ると伝えられています。

美山村教育委員会

「あかやの谷と蛇杉」解説看板(原文ママ)

椿山レイクブリッジとヤッホーポイント

みやまの里森林公園から椿山ダムの上流にある椿山レイクブリッジまでやって来ました。椿山レイクブリッジはなかなか立派な吊り橋です。

椿山レイクブリッジ
椿山レイクブリッジ

橋の入口に地面に落書きされたバイキンマンを発見。全部バイキンマン。

バイキンマン
バイキンマン

主塔は椿山ダムのクレストゲートと同じ朱色に塗られ、鯉?のレリーフが掲げられています。

椿山レイクブリッジ入口
椿山レイクブリッジ入口

橋からは残念ながら椿山ダムの堤体を見ることは出来ませんが、お手軽アクティビティということで吊り橋を渡ってみてはどうでしょうか。

椿山レイクブリッジより貯水池(上流方向)を見る
椿山レイクブリッジより貯水池(上流方向)を見る

椿山レイクブリッジを渡ると「日本一ヤッホーポイント」と書かれたゲートが見えてきます。和歌山県在住でやまびこ研究家の貴瀬誠さん(ヤッホーおじさん)という方が和歌山県内400ヶ所を踏破して、いちばんキレイにやまびこが返ってくるポイントを発見し、そのポイントがこの椿山ダム湖だったそうです。あまりにきれいなやまびこだったために「日本一」と名付けられたようです。NHK「おはよう日本」で紹介されて以降、色んなテレビ番組で紹介され「世界の果てまでイッテQ」にも登場しています。

ヤッホーポイント入口
ヤッホーポイント入口

ヤッホーポイントも面白いですが、景色も存分に楽しむことが出来ます。

展望台より椿山レイクブリッジを見る
展望台より椿山レイクブリッジを見る

実際のヤッホーポイントはここより下の位置にありますが、遠くからも見えるように大きな看板が設置されています。ちなみにキャラクターは下がやまひこくんで上がこだまちゃん。

ヤッホーポイント看板
ヤッホーポイント看板

椿山ダムも規模が大きく見どころがたくさんあり、周辺は観光地としても整備されていますので、ダム観光としてぜひ訪問してみてはどうでしょうか。存分に楽しめる椿山ダムでした。

椿山ダム諸元

所在地和歌山県日高郡日高川町初湯川字橋本
河川名日高川水系日高川
目的F(洪水調節、農地防災)
N(不特定用水、河川維持用水)
P(発電)
型式G(重力式コンクリートダム)
堤高56.5m
堤頂長236m
堤体積265,000㎥
流域面積396.5km2
湛水面積268ha
総貯水容量49,000,000㎥
有効貯水容量39,500,000㎥
ダム事業者和歌山県
本体施工者西松建設・フジタ・大豊建設
着手年1966年
竣工年1988年
ダム湖名

その他の設備/所感

駐車場
トイレ
公園
PR展示館×
釣り
展望台

椿山ダム周辺の地図

椿山ダム周辺の天気

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この記事を書いた人
神馬シン

福澤桃介をこよなく愛するダム愛好家/ダムペディア・ダムニュース管理人/(一財)日本ダム協会公認ダムマイスター(01-018)/放流注意グッズの販売はじめました→https://shop.dampedia.com

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