取材日:2013/04/29(月)
二ツ屋分水堰から桝谷ダムに移動しました。事前に広野ダムの管理所で桝谷ダムの右岸道路が工事で通行止と伺っていましたので、先に左岸から見学します。
桝谷ダムは日野川流域水資源総合開発事業により農林水産省が二ツ屋分水堰とセットで建設されたダムです。当初は農水省直轄のダムとなる予定でしたが、後に洪水調節が目的に加わったことにより、竣工後は福井県によって管理されています。同事業では他にも八乙女頭首工なども建設されています。
ちなみに日野川流域水資源総合開発事業では以下の4つの事業を共同で行っています。
- 国営日野川用水土地改良事業(主体:農林水産省、目的:かんがい用水)
- 日野川地区水道用水供給事業(主体:福井県、目的:上水道用水)
- 日野川地区工業用水水道事業(主体:福井県、目的:工業用水)
- 福井県日野川総合開発事業(主体:福井県、目的:洪水調節)
左岸より堤体下流面を望む
右岸側は工事で通れないということを広野ダム管理所の方に聞いていましたので、先に左岸に来ました。それにしても草木がほとんど生えていないきれいなリップラップです。しっかりと管理が行き届いているようです。また、堤高が100.4mと農水省建設、福井県管理とは思えないほど規模が大きいですね。
左岸より洪水吐を望む
ロックフィルダムの洪水吐は地山の上に造るというまさに見本です。
左岸より天端を望む
天端はご覧の通り通行止看板が立っていましたが、徒歩での通行は可能とのことでしたのでダムカードをいただきに管理所まで徒歩で行くことにしました。
左岸より天端を望む
しかし堤頂長が345.9mとそこそこ長いためちょっと遠くに感じます。
右岸より堤体上流面とダム湖を望む
上流面もきれいですね。ダム湖の水もきれいです。
天端より下流を望む
右岸下流の山の斜面が人工的に削られたように見えたので、もしかして原石山か何かかなと思ったらビンゴでした。右岸下流はまさに「原石山広場」という名称となっています。
常用洪水吐を望む
洪水吐はロックフィルダムではよくあるタイプの自由越流式側水路型です。側水路の切り欠きは常用洪水吐となっていて、この日はちょうど越流していました。左手奥に見える白い建物は管理所です。右手奥、ダム湖の向こうに見える建物は桝谷ダム研修棟となっていて、午前は1,000円、午後は1,500円を支払えば借りることができるようです。
ここ借りてカフェにしたいですね。
洪水吐と堤体を望む
ダム湖から常用洪水吐までまっすぐ1段掘り下げてあるように見えます。看板にそれがなんなのか書いてあるようなのですが、メモ用に看板を撮影していたのに解像度が足りず不明です。現地に行って再度確認しないといけませんね。
対岸の研修棟や二ツ屋分水堰からの吐口も撮影しそこねていますのでリベンジは必須です。
洪水吐を下流方向に望む
洪水吐はまっすぐではなく左にカーブをした後に、シュート部がV字の堤体に沿っているという形状です。
右岸の石碑を望む
石碑ですが現地で取れた石なのでしょうか。
右岸より天端を望む
いつもならクルマで渡ってしまいそうな距離ですが、仕方がないので徒歩で戻ります。
桝谷ダムトンネル
ここに来るには右岸道路を通らないといけませんが、トンネルを抜けてしばらくは通れると聞いていましたので、片側車線を塞いでいた通行止看板を通過してトンネルをさらに抜けました。ポータルに描かれた果物は南越前町の名産品である今庄つるし柿のようです。
下流よりシュート部を望む
下流からの放流シーンを見ることができました。
下流の橋より下流を望む
左に見えるのは放流設備です。今回は撮影できていませんが、上流左岸側に取水設備があり、建設時に仮排水トンネルだった水路を利用してここまで水が流れてきます。
放流設備はジェットフローゲートの緊急放流ゲート・利水放流ゲート・小流量放流ゲートが各1門あり、それぞれに高圧スライドゲートの予備ゲートが備わっています。製作は石川島播磨重工業株式会社。
堤体直下より堤体を望む
え!良いの!?というぐらい堤体に近づけます。なかなかオープンなダムです。
下流より堤体を望む
トンネルを抜けるとドーンと、それも放流しているダムが目の前に広がるのもとても良いポイントだと思います。
見学会があったらあちこち見させていただきたい…そんな桝谷ダムでした。
桝谷ダム放流動画
桝谷ダム諸元
所在地 | 福井県南条郡南越前町宇津尾96字口高25番の5 |
河川名 | 九頭竜川水系桝谷川 |
目的 | F(洪水調節、農地防災) A(かんがい用水) W(上水道用水) I(工業用水) |
型式 | R(ロックフィルダム) ※中心遮水ゾーン型ロックフィルダム |
堤高 | 100.4m |
堤頂長 | 345.9m |
堤体積 | 3,447,000m3 |
流域面積 | 30.5km2(直接:10.2km2 間接:20.3km2) |
湛水面積 | 89ha |
総貯水容量 | 25,000,000m3 |
有効貯水容量 | 23,100,000m3 農業用水:13,670,000m3 上水道用水:3,550,000m3 工業用水:1,530,000m3 洪水調節:3,450,000m3 不特定用水:900,000m3 |
ダム事業者 | 北陸農政局 |
本体施工者 | 前田建設工業・熊谷組・飛島建設 |
着手年 | 1979年 |
竣工年 | 2005年 |
ダム湖名 | ますたに湖 |
その他のスペックは以下のとおりです。
基礎地盤:砂岩・粘板岩・チャート及びその互層
堤頂幅:10.00m
天端標高:EL=343.40m
法面勾配:上流 1:2.90 下流 1:2.10
洪水吐
仮排水路
型式 | 地山トンネル式 |
設計洪水量 | 175.0m3/sec |
トンネル断面 | 標準馬蹄形 2R=4.50m |
トンネル延長 | 616.5m |
監査廊
型式 | カルバート型 |
延長 | 420.0m |
断面 | 内空 H=2.5m B=2.0m |
取水設備
型式 | 傾斜式直線多段式ゲート |
最大取水量 | 9.748m3/sec |
その他の設備/所感
駐車場 | ○ |
トイレ | ○ |
公園 | ○ |
PR展示館 | × |
釣り | ○(禁漁区を除く) |
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