取材日:2013/04/29(月)
「二ツ屋分水堰」という名称のためダムではなく堰のように思いますが、堤高が24.7mのため立派なダムです。広野ダムの上流に位置します。現地看板では堤体を「分水工」と表記されています。そのため二ツ屋分水工とも二ツ屋頭首工とも呼ばれます。
広野ダム建設によって日野川上流は70年に1度という治水安全度が確保されましたが、その後の九頭竜川工事実施基本計画の改定に伴って水系を一貫して治水計画が見直され、治水安全度が100年に1度という確率に見直されました。
ですが、既設の広野ダムでは洪水調節容量が不足することになったため、その不足分を広野ダムの尾根一つ向こうに位置する桝谷ダムに導水して補うことになりました。
右岸より石碑と堤体上流面を望む
その導水するための施設が二ツ屋分水堰にあるため、石碑に「二ツ屋導水施設」と書かれています。
右岸より堤体上流面を望む
クレストは自由越流式ですが常時越流しているようです。上流のこの先に民家がないため水がかなりきれいです。
右岸より天端を望む
この先が林道につながっているため天端は自動車の通行が可能ですが、かなり覚悟して通る必要があると思います。
天端よりダム湖を望む
現地の看板によると向かって左側が大河内川(Google Mapsや国土地理院地図では日野川になっています)、右側が鈴谷川で、ダムを境に下流から日野川に名前を変えるようです。
左岸より堤体の下流面を望む
堤体を渡って左岸から下流側を望みます。堤高は24.7mと小柄なダムですが、立派な堤趾導流壁が付いています。照明がおしゃれですね。管理所や導水路の設備も山吹色なのが印象的です。
天端より下流を望む
常時越流とは言え、ワクワクしてしまうのは愛好家の性ですね。右岸の下流側に駐車場があり、直下にはベンチのようなものも見え、まるで公園のように整備されていますが、残念ながらアクセス路が崩壊しているためか放棄されています。管理コストの面から補修を断念しているのかもしれません。(当然たどり着けません)
天端中央のテラスより左岸下流を望む
天端の下流側に5箇所のテラスがあり、そこから下流面を望むことができます。
天端中央のテラスより右岸下流を望む
反対側の右岸を望みます。そういえば現地看板に「放流主ゲート(ジェットフローゲート)Φ600mm」の表記がありましたが、目視で確認できず、現地看板に平面図と立面図も書かれているのですがそちらでも確認できませんでした。ただダム便覧の写真を見ると下の写真で言うと中央辺りにどうもゲートがあるようです。
天端より導水路の呑口を望む
導水路の呑口になります。ここから3,112mの導水路トンネルを通って桝谷ダムに流れ出ます。
導水路のスペックは以下のとおりです。スルースバルブのΦ700mはさすがに700mmの間違いだと思います。
トンネル延長 | 3,112.00m |
断面形状 | 2R馬てい形 |
トンネル形状 | R1=2,500、R2=5,000 |
内空断面積 | 20.733m2 |
平面線形 | R=∞~R=300~R=∞ |
縦断勾配 | 1/410 |
放流設備 | オリフィスゲート(ローラーゲート)B2.5mxH2.0m 放流主ゲート(スルースバルブ)Φ700m |
下流の橋より堤体を望む
二ツ屋分水堰を見学し終えて桝谷ダムに戻る際に、下流側の堤体が見える橋で撮影しました。やはり下の道は整備して堤体を直下から見上げるようにしてほしいところですね。
ちなみに二ツ屋分水堰は広野ダムの治水計画をサポートするだけでなく、余剰水を桝谷ダムの利水目的である灌漑用水・上水道用水・工業用水にも利用され、流域の水を余すことなく利用しているのも大きな特徴です。
小さな体で大きな役割を担う二ツ屋分水堰でした。
二ツ屋分水堰動画
越流の様子を動画にしました。
二ツ屋分水堰諸元
所在地 | 福井県南条郡南越前町二ツ屋 |
河川名 | 九頭竜川水系日野川 |
目的 | F(洪水調節、農地防災) N(不特定用水、河川維持用水) A(かんがい用水) W(上水道用水) I(工業用水) |
型式 | G(重力式コンクリートダム) |
堤高 | 24.7m |
堤頂長 | 97.5m |
堤体積 | 18,000m3 |
流域面積 | 20.3km2 |
湛水面積 | 3ha |
総貯水容量 | ―m3 |
有効貯水容量 | ―m3 |
ダム事業者 | 北陸農政局(福井県) |
本体施工者 | 熊谷組・五洋建設・大和建設 |
着手年 | 1986年 |
竣工年 | 2005年 |
ダム湖名 | ― |
その他の設備/所感
駐車場 | ○ |
トイレ | × |
公園 | × |
PR展示館 | × |
釣り | ○(禁漁区を除く) |
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