所在地:栃木県日光市西川地先
取材日:2010/10/02
建設中のダムを見たことがあるのは、小里川ダムと徳山ダムぐらいですが、打設真っ盛りという工事は見たことがありませんでしたし、なによりこの辺りはメジャー級のダムが多いので、一緒に巡ってしまおうという腹積もりです(笑)
湯西川ダムは利根川水系湯西川に建設される多目的ダムで、完成すれば堤高119m、堤頂長320m、総貯水容量75,000千m3という規模になります。数字だけ見てもわくわくドキドキします。
ちなみに、この記事の写真ですが、キヤノン EOS 60Dで撮影した最初の記事になります。おっと、どうでもいい情報でした。
湯西川ダム本体建設JV工事事務所出入口
集合場所はJV工事事務所という事ですが、間違えて国土交通省の工事事務所に行きそうになったのはナイショです。よるある工事現場の風景的な感じですが・・・。あと、奥の高台に新築らしい一軒家がありますが、水没地域でこちらに移転されたおうちなのでしょうか・・・。すみません、未確認です。
時間は朝の9時半。集合時間は10時半でしたが、今市ダムに6時に到着し、そこから中岩ダム、日光江戸村近くのコンビニ「セーブオン」で当時販売していたダムマニア監修アーチ式ダムカレーを朝食として食し、小網ダム、五十里ダムを見学してからの到着でしたので、ダムカレーでお腹が満たされているのとともに、すでに心もダムでお腹いっぱいでした。
ちなみに五十里ダムでは、カメラでパシパシ撮ってる方がいらっしゃり、もしかして!と思い、思わず「湯西川に行かれる方ですか?」と訊ねてしまいましたが、なんと正解!marcさんという方でした。初対面だったのでかなり怪しまれてしまっている様子でしたが(笑) でもその後、三河沢ダム・黒部ダム(栃木)でもご一緒することに。
湯西川ダム本体建設JV工事事務所出入口に立つ看板
これもよく見る看板。
湯西川ダム本体建設JV工事事務所全景
が、事務所はドデーンと巨大です。右側の建物は工事関係者が寝泊まりするところかな。すみません、未確認ばかりで。
ダム建設は夢造り
事務所の大きさに驚きつつも、この「ダム建設は夢造り」というキャッチコピーには感動せずにはいられません。みなさん、誇りを持って作業している様子が想像できます。
湯西川ダム本体建設JV工事事務所正面ファサード
さぁ、いよいよ事務所内に入ります。なんか妙に緊張します。
湯西川ダム本体建設JV工事事務所・会議室
広い会議室です。ここで会議をやるサマは壮観でしょうね。
KY活動
会議室内で気になったのはこのポスター。「空気読めない活動」ではありません。「危険予知活動」だそうです。
湯西川ダム本体建設(工事概要)
今回渡された資料です。この資料を元に、本体工事の説明を受けることになります。
ヘルメット・軍手・安全ジャケット
事務所内で簡単なあいさつを受け、ヘルメットと軍手と安全ジャケットを装着します。安全ジャケットは初めて着るので、ちょっと戸惑いましたが、マジックテープになっているので、それほど難しくありません。
旧型デリカで現場まで移動
工事現場は悪路が多くそこを走る上に、それなりの人数を乗せるには、4WDの1BOXが必要でしょうね。とはいっても、後続車はステーションワゴンです。工事事務所に置いてあった車両はほとんどがステーションワゴンでした。
バッチャープラントを望む
ものすごい音がしています。いかにも絶賛工事中!という感じです。
右岸下流側の高台より本体工事を望む
右岸に設置された展望台まで移動します。そこからこの工事の様子が窺えます。作業員だけでなく重機までもが小さなミニチュアに見えます。それだけダムが巨大だということですね。
完成は平成23年度、着工後3年半での完成を目指しており、急ピッチかつ安全に作業が進められているのを目の当たりにしました。
鹿島・清水JVの大内さんによる説明(その1)
鹿島・清水JVの大内さんによる説明を交えて、この工事の様子を見ます。
鹿島・清水JVの大内さんによる説明(その2)
さらに背面には人の背丈よりも大きなパネルが設置されており、このパネルを使って説明も受けました。
コンクリートバケット
上空にはコンクリートバケットが何度も往復していました。これは映像でしか見たことがありませんが、生で見るとやはり迫力が違いますね。
仮排水トンネル入口
堤体の向こう側に見えるのは仮排水トンネル。トンネルのコンクリートも真新しくて綺麗です。そして、手前にあるマイクロバスと比較することでその大きさが伝わりますでしょうか。
ダンプトラックとブルドーザ
重機もひっきりなしにあちこち動きまわっています。近くで見たらきっと大きいんでしょうね。残念ながら今回は間近で見ることはかないませんでしたが・・・。
ロードローラー(振動ローラー)
本体工事はRCD工法という元々飛行機の滑走路や道路に用いられた工法をダムに応用したもので、道路工事と同じような重機が用いられます。このロードローラーもその一つですね。
目地切機(ジョイントカッター)
この目地切機(ジョイントカッター)はコンクリートの表面に意図的に目地を入れて、クラックの発生を抑えるのが目的です。目地を入れないと、打設したばかりのコンクリートは発熱し乾燥しやすくなり、それが元でクラックの要因になってしまうのです。
コンクリートを冷却する作業員
先にも述べましたが、打設したばかりのコンクリートは発熱し乾燥します。それが元でクラックの要因になることから、冷却作業が必要なわけで、そのためには打設後にこうして放水することでコンクリートを冷却するのです。
右岸の高台より堤体下流側を望む
ちょっと見えづらいですが、完成後には全く違った雰囲気を醸し出すのかと思うとワクワクする下流面です。
右岸の高台より副ダムを望む
うーん、やっぱりここからじゃわかりづらい副ダム。あとで、直下から拝見させていただくことにはなりますが・・・。
左岸法面
ワッフルがいっぱい(笑) ワッフルがないところが堤体が出来上がるところです。さらにその上部にはケーブルクレーンが打ち込まれている様子がわかります。あと、ちょっとこの写真では分かりづらいのですが、法面の左側中央にあるブルーとホワイトのパネルが常時満水位を表しています。
堤体ホッパ
これは「堤体ホッパ」と言って、コンクリートバケットから落とされたコンクリートを受け取って、ダンプトラックに供給する機械です。
バケットから堤体ホッパへコンクリート投入
コンクリートバケットから堤体ホッパへコンクリートが投入される様子です。音で表現すれば、まさにズサーっという感じです。
SP-TOMから輸送されたコンクリートをダンプトラックに積み込むベルトコンベア
これはSP-TOMという急傾斜地でもコンクリートなどを運ぶ事ができる輸送機械につながっているベルトコンベアです。つまりコンクリートは15.0tケーブルクレーン2基と、このSP-TOM1基によって運ばれる事になります。
コンクリートバケットとダンプトラック
コンクリートバケットから堤体ホッパへコンクリートが投入されることもありますが、直接ダンプトラックへ投入されることもあります。
堤体下流側冷却中
ここでもコンクリートに水をかけて冷却していますね。写真に映る赤色の枠は、目地を作る型枠です。
バッチャープラントへ移動
次は、バッチャープラントへと移動します。順序良く一列で。
コンクリートバケットがサービスホッパに
ケーブルクレーンでコンクリートバケットがサービスホッパに運ばれてくる様子です。
階段を登って・・・
さて、次はこの上から打設の様子を見ることに。ぞろぞろと階段を登ります。
ケーブルクレーン操作室
ケーブルクレーンの操作室です。ほとんど自動化されているらしく、手動で動かすことはないんだそうです。GPSを使ってバケットを下ろす場所などが計算されているんだとか。
右岸より本体工事を望む
ここからだと堤体のほぼ中心、ダム軸となります。実際にはもう少し左側になると思いますが。
トランスファーカー
これがバッチャープラントからコンクリートバケットへコンクリートを運ぶトランスファーカーです。コンクリートバケットがサービスホッパに到着していないときは、一旦手前で待機します。これもすべて自動です。
トランスファーカーがサービスホッパまで移動
コンクリートバケットがサービスホッパに到着したら、トランスファーカーがサービスホッパーまで移動します。
トランスファーカーからコンクリートがバケットへ投入
そして、コンクリートをバケットに投入します。上の口にあったコンクリートが無くなったのがわかりますでしょうか?これも音で表現すれば、ズサーっという感じです。
空のトランスファーカーが戻ってきた
そしてコンクリートバケットに投入を終えたトランスファーカーは再びバッチャープラントまで戻って来ます。これを何度も何度も繰り返します。
トランスファーカーが戻ってくると、上からコンクリートが落ちてくる
トランスファーカーがバッチャープラントに戻ると、上からコンクリートがトランスファーカーに投入されます。ここではズサーっというより間近で聞いたためか、ドカドカっという感じです。
上からドカドカドカっと
この時、ドカドカっと音が響いています。
この向こうに骨材プラントがある
この向こう側に骨材プラントがあり、これからそこへ移動となります。
骨材プラント
打設現場と比べるとかなり静かな印象です。打設現場が「動」ならこの骨材プラントは「静」でしょうか。でもしっかりとコンクリートを製造しています。
貯留タンクに貯められる
骨材が貯蔵タンクに貯められる様子です。
この向こうにバッチャープラントがある
骨材プラントからはバッチャープラントまで一連してベルトコンベアで運ばれます。
ちなみに骨材は、かつて山を削って採集するのとは異なり、湯西川近辺や鬼怒川から採石されたものが利用されています。ですので、各所で「湯西川ダムの骨材を採集しています」という看板が立っているのを目にします。
下流から本体工事を望む
次は下流から本体工事を眺めます。いまここにいる場所は、完成時にはもう立てない場所です。そう思うと感慨深いものがあります。ただ両岸は整備されて見学できるようになるのでしょうかね。ぜひそうしていただきたいですが・・・。
下流から堤体を望む
ここも完成したら絶対に立つことができない場所です。既設のダムを下流側から見上げるというのは何度かしていますが、建設中のダムを見上げるというのは初めてですね。おそらく2度と撮れないようなアングルでしょう。
右岸導流壁を望む
右岸側は放流設備が設置されるのでしょう。上部に切り込みがありますし、壁面にはバルブ設置用の穴があります。恐らく河川維持放流用の穴でしょう。(つかJVの方がいるんだからちゃんと聞いとけよ!)
左岸導流壁を望む
打設されたばかりの綺麗なコンクリートですが、色がちょっとピンクがかっているのが不思議でした。
副ダムを望む
これが先ほど上から見下ろしていた副ダムですが、上から見るよりなんとなく小さく見えてしまったのは気のせいでしょうか・・・。
コンジットゲート二次転流用の堤内仮排水路
常用洪水吐として用いられるコンジットゲートです。が、布で覆われて詳細が見えません。これは二次転流用の堤内仮排水路・・・だそうです。完成時にはコンクリートで埋められるらしいです。(Thanks!萃香さん)
左岸側の堤体に付属するスポイラー
おそらく減勢の意図があってのスポイラーだと思います。(だから確認しとけって)
目地用の型枠
まるで保護しているかのような型枠です。
堤体表面
不意にコンクリートの表面を撮影してみたくなりました。それをどアップで写すのです。冷却するために流れる水がコンクリートを覆い、またそれが不思議と美しく見えます。
仮排水トンネル出口
少し下流に移動すると仮排水トンネルの出口が大きな口を開けています。
クレーン
次は上流側、将来的にダム湖で沈む場所へと移動です。天高く馬肥ゆる秋。クレーンが蒼天を突き抜けるかのようです。
ダム湖側より堤体を望む
堤体が完成すれば、ここもダム湖として沈むことになりますので、二度と見ることのできないアングルとなります。
コンジットゲート呑口二次転流用の堤内仮排水路
コンジットゲート二次転流用の堤内仮排水路です。これも見れなくなるんでしょうねー。
ダム湖側より右岸を望む
先ほどいた場所を見上げてみます。右岸の一番奥にある低い建物が最初に説明を受けていた場所です。真ん中にある茶色い建物が次に説明を受けたバッチャープラントです。それにしてもこの光景は青空がよく似合う。
バッチャープラントとサービスホッパ
さらに右岸をアップ。とにかくよく働く。コンクリートバケットが行ったり来たり。
仮締切堤
そして、今立っている場所は二次締切堰堤。写真に写っているのが一次締切堰堤。二次の方が規模が大きいのですが、うっかり撮影しそびれてしまいました・・・。
締切堰堤とは、河川の本流を一時的に止める働きをするダムで、これがなければ建設しているさなかに現場が水没してしまいます。また、締切堰堤だけですとダム湖が出来上がってしまいますので、先にも述べました仮排水トンネルで仮に水を流すわけです。
また、アースダムにしか見えませんが、これもCSG工法で造られた立派なコンクリートダムです。試験湛水時には一部を切り崩してそのまま沈ませるのだそうで、デザインとか見た目とかを排除したダムです。要はせき止められればこれで十分なのです。でも安全面を配慮してしっかりと造られています。
選択取水塔
知らない人が見たらビル建設だと思ってしまうかもしれませんね。窓の小さいビル。
ダム湖側よりコンクリートバケットを見上げる
天空を舞うコンクリートバケット。現場で働く方々には現実でしょうが、初めて生で見た私は非現実的な世界を見ているようでした。
ともあれ、湯西川ダム建設現場では急ピッチかつ安全に作業が進められているのを目の当たりにすることができました。また、今回コンクリートダムの建設現場を初めて目の当たりにしましたが、科学の発達はダム建設に希望の光を照らしている事に驚きを禁じえません。
アニメ「トップをねらえ!」で副長が艦長に「科学の勝利ですな」と言うセリフがありますが、何度もそのシーンを思い浮かべずにはいられませんでした。
とまぁ、そんな事を思った見学会でした。
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以下は、本体工事からちょっと離れた内容です。
湯西川ダムカレーを上空より望む
見学会を終え、ダム協会の皆さんと参加者の皆さんとで道の駅「湯西川」へ移動します。ここでの目的は「湯西川ダムカレー」です。建設中ということで、堤体らしき直方体の下に骨材というか土砂というか散りばめられています。天端にあるのは重機か??
味は・・・現地でご確認ください。そんなに辛くないとだけ言っておきましょう。
道の駅「湯西川」にある水陸両用バス乗り場
そしてここには水陸両用バスが発着しており、川治ダム(0571-川治ダム/かわじだむ)までそのバスで移動してくれるそうです。さらに川治ダムではキャットウォークまで歩けるのだとか!予約をしなければならないのですが、事前調査が甘かったので結局予約もせず乗りませんでした(当日席が空いていれば乗車は可能だそうです)。他にも行きたいダムがありましたし・・・。
水陸両用バス
水陸両用バスの車体には「湯西川ダムとダム探検ダックツアー」と書かれています。実際には川治ダムの見学なのですが、湯西川ダムが完成した時には湯西川ダムの見学を行うのだそうです。ただ個人的には川治ダムの見学も残しておいて欲しいです。
水陸両用バスのスクリュー
バスですが水上も走るので当然スクリューが付いています。思ったよりも小振りな感じです。ゆっくりペースなんでしょうかね。水陸両用バスの乗車は大人3,000円、ネットからでも予約できます。詳しくは「湯西川ダックツアー公式サイト」をご覧ください。
ダム諸元
河川名 | 利根川水系湯西川 |
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目的 | 洪水調節、農地防災、不特定用水、河川維持用水、かんがい用水、上水道用水、工業用水 |
型式 | 重力式コンクリートダム |
堤高 | 119m |
堤頂長 | 320m |
堤体積 | 1,020,000m3 |
流域面積 | 102km2 |
湛水面積 | 198ha |
総貯水容量 | 75,000,000m3 |
有効貯水容量 | 72,000,000m3 |
ダム事業者 | 関東地方整備局 |
本体施工者 | 鹿島建設・清水建設 |
着手年 | 1982年 |
竣工年 | 2011年 |
その他の設備/所感
まだ建設中ですのでどうなるか不明ですが、規模も大きく国土交通省の多目的ダムですので、見学用の施設はきっと充実するものと思います。
駐車場 | ? |
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トイレ | ? |
公園 | ? |
PR展示館 | ? |
釣り | ○ |
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