取材日:2013/08/03(土)
富山といえば黒部ダム(富山)ですが、もう1基絶対に外してはならないダム。それが北陸電力が所有する有峰ダムです。年に一度だけ見学会が開催されるのですが、この年はダム愛好家一同が集まって見学することになりました。
通行料が無料になるチラシをゲット
有峰ダムに行くにはダム建設のために造られた有峰林道という有料道路を通る必要があります。普通車は1,900円(2021年現在)もしますが、見学会が開催される「有峰で“遊ぼう”」(有峰森林文化村開村の日)だけは通行料が無料になるのです。ただし無料にするにはコンビニなどで配布されているチラシをあらかじめゲットする必要があり、この日は林道の手前にある立山あるぺん村のセブンイレブンでゲットしました。(事前にありみネットにアップされているチラシデータを印刷してもOKです)
写真はあるぺん村のヤギたち。
右岸展望台とダム湖百選レリーフ
有峰ダムの右岸には建設プラントやケーブルクレーン基礎の跡地を活用した展望台があり、俯瞰で堤体を望むことができます。また、有峰ダムのダム湖「有峰湖」はダム湖百選に認定されておりレリーフが設置されています。
有峰湖とその周辺
有峰ダムの周辺には多数の水力発電所やダムがありますが、この案内図はそれを示す地図です。いかにこの地域の水量が豊富なのかを表していると思います。
右岸展望台より堤体と貯水池
展望台の下段に降りてみました。貯水池は満々と水を湛え、それをしっかりと支えるS字に折れ曲がった有峰ダムの堤体がよく見えます。また、標高が約1,100mもあるため山の上のダムといった印象です。
展望台
どんな感じでプラントやケーブルクレーンがあったのか想像力を掻き立てられます。
バスで堤体まで移動
有峰ハウス前で集合してバスで堤体まで移動しました。車中から堤体が見えますが、期待がどんどん膨らみます。
右岸の管理所前
右岸の管理所前で下車しました。もう目の前が天端です。ちなみに天端は自動車の交互通行ができないため、左右両岸に設置された信号によって通行が制御されています。管理所は信号と信号の間にあるため、ここから出るときは写真中央に写っている信号に従って出られるのですが、「◀×▶」となっていて左右どちらに出られるかひと目で分かるようになっています。
右岸より堤体上流面
堤体中央にエレベーター棟があるためそこまで徒歩で移動します。
和田川第一・第二発電所 取水塔
有峰ダムのある常願寺川水系のこの周辺は国内有数の水力による電源立地で、有峰ダムによって貯水された水は和田川第一発電所 (27,000kW)・和田川第二発電所 (122,000kW)・有峰第一発電所 (265,000kW)・有峰第二発電所 (120,000kW)、そして河川維持流量を活用した有峰ダム発電所 (170kW)という5つの発電所で電気が賄われています。
写真はその和田川第一・第二発電所に送水するための取水塔です。
クレストゲート巻揚機室
クレストには2門のラジアルゲートが設置されており、写真はそのゲート巻揚機室になります。(写真奥はエレベーター棟)
銘板「洪水吐ゲート室」
現地の銘板では「洪水吐ゲート室」となっています。フォントが渋い!
エレベーター室
エレベーターで堤体内へと入ります。「エレベーター室」の銘板も渋いですね。
監査廊
B4監査廊(EL.1,010.50m)に到着しました。監査廊内の気温は8.9℃。8月とは思えない気温です。
監査廊その2
監査廊をさらに進みます。右の壁面に設置されているのは、温度観測装置でダムのコンクリートの温度を調べる装置になります。コンクリートの温度によってその品質が変わってしまうため、建設時の温度管理は厳重に保っていたとのことですが、完成後も継続して温度観測をしているそうです。
展望台広場
展望台広場に到着しました。巨大な堤体を仰ぎ見る位置になりますが、これでもまだ中腹あたりなのには驚きです。
各々楽しむダム愛好家
右側のコンクリートの構造物は監査廊から繋がっている通路になりますが、積雪時にも対応できるようになっているのが、この地域ならではという感じがします。左側のコンクリートの構造物は前述の和田川第一・第二発電所へと通じる水路になります。
展望台より下流方向
上の写真では直下流にいるものと勘違いしそうですが、こうしてみるとまだまだ堤体の中腹であることが分かります。ましてや天端から見た景色でもありません。直下に見える建屋は前述の河川維持流量を活用した有峰ダム発電所の建屋になります。出来ることならあの建屋の辺りからダムを見上げてみたかったですね。
展望台より堤体下流面
堤体の規模の割に導流壁が薄く感じますが、これで十分なのでしょう。また、薄いが故に無骨さがなく、スッキリとした印象を持ちます。
右岸フーチング
堤体の目地からも草が生えていますが、フーチングもなかなか緑化が進んでいます。
クレストゲートより下流を見る
再び天端まで戻ってきました。クレストゲート上部は金網フェンスが設置されていますが、隙間を狙って下流を見ます。どうもこの時はクレストゲートの改修工事を行っていたようです。(塗装工事かな?)
天端よりダム湖を見る
有峰ダムの水没地には有峰村があり十数軒程度の寂れた山村だったようですが、大正から昭和にかけて辺り一帯を大規模電源開発地帯とすることを見据えた富山県は県有地化し、全ての村民の方々は里を下る決断をしたそうです。こうして満々と水を湛えた貯水池を見ると、先人の方々には感謝の気持しかありません。
天端中央付近より左岸方向を見る
シンプルな天端です。標高が高いせいか雲が低く感じられます。
天端中央付近より左岸下流面を望む
重力式の堤体ですが地山に向かって曲げているのがよく分かります。
天端より下流を見る
同じ位置から今度は下流を見ます。ここからも導流壁の薄さ・低さが伺えます。
管理所
管理所前まで戻ってきました。個人的に管理所の中の記憶がありませんが、ただのトイレ休憩か何かだったのでしょうか…
有峰記念館前
有峰記念館前が見学の受付なのですが、戻ってくると全便満席になり受付が終わっていました。ちなみに有峰記念館にはレストランもり、PR施設のアーカイブス有峰も併設されていますので、合わせて見学することをおすすめします。
有峰記念館展望台
有峰記念館は屋上が展望台になっていて、有峰ダムを遠くに見ることができます。
有峰記念館屋上展望台より貯水池を見る
貯水池側を見ます。遠くに見える浮島は宝来島といって島内には有峰神社が祀られているんだそうです。ちなみにもともと吉事山がここにあり、貯水池ができたことで宝来島となったそうです。
アーカイブス有峰
PR施設のアーカイブス有峰の中の様子です。ジオラマなど様々な資料が展示されています。
右岸より堤体下流面を見る
解散後は再び堤体に戻って、見学会時には見られなかったポイントから見てみることにしました。下の写真は右岸の展望台から少し下流に移動した辺りです。何度見てもすごい堤体です。
左岸の取水塔
天端を通過して左岸までやってきました。この取水塔は有峰第一発電所へ水を送るための取水塔です。
左岸より堤体下流面を見る
左岸から見ても重力式コンクリートダムとは思えないほどのすごいカーブです。ちなみに左に見えるコンクリート構造物は冬期用通路の一部です。
左岸より有峰第一発電所取水塔と堤体上流面
左側に係船設備が見えています。肝心の堤体は手前に取水塔が邪魔をしてしまって少し隠れてしまうのが残念。地図を見る限りでは、ここからさらに上流に向かっても堤体は見えそうもありません。
左岸の展望台より堤体下流面
いよいよ帰路につきますが、左岸にもなかなか良い展望台がありました。満々と水を湛えた有峰ダムの雄姿を捉えることができます。
色々と見どころいっぱいの有峰ダムですが、夏の「有峰森林文化村開村の日」だけでなく、紅葉のシーズンもまた違った有峰ダムを観ることが出来るようです。ぜひ機会があれば訪問してみてください。
有峰ダム諸元
所在地 | 富山県富山市有峰 |
河川名 | 常願寺川水系和田川 |
目的 | P(発電) |
型式 | G(重力式コンクリートダム) |
堤高 | 140m |
堤頂長 | 500m |
堤体積 | 1,568,000㎥ |
流域面積 | 219.9km2(直接:49.9km2、間接:170km2) |
湛水面積 | 512ha |
総貯水容量 | 222,000,000㎥ |
有効貯水容量 | 204,000,000㎥ |
ダム事業者 | 北陸電力(株) |
本体施工者 | 前田建設工業 |
着手年 | 1956年 |
竣工年 | 1959年 |
ダム湖名 | 有峰湖 |
その他の設備/所感
駐車場 | ○ |
トイレ | ○ |
公園 | ○ |
PR展示館 | ○ |
釣り | ○(ボート禁止) |
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