取材日:2014/3/2(日)
この日の四国のダム巡りのラストに選んだのは那賀川最下流にある川口ダムでした。本音を言えば福井ダムや正木ダムにも立ち寄りたかったのですが、川口ダムに到着した時点で15時45分頃。しかも堤高が低いからそんなに時間は取られないだろうと思っていたらこれが良い意味で予想を裏切るダムだったのでした。
川口ダムは那賀川総合開発事業として建設されたダムです。川口ダムと上流の長安口ダムの間にある日野谷発電所の発電量によって那賀川の水量が増減してしまいますが、それを緩和する逆調整池の役割を持たせるために建設されました。また、川口ダムから下流に放流する水を利用して川口発電所で発電が行われています。
左岸の国道よりアプローチ
上流の長安口ダムから移動していますので、この方向で川口ダムへの入口が見えます。ちなみに現在は管理所が「川口ダム自然エネルギーミュージアム(川口エネ・ミュー)」という科学館になっており、管理所の建物の形状はそのままですが看板が施されるなど雰囲気が随分と変わっているかと思います。
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ちなみにこの2014年の訪問時は管理所前というか堤体左岸ダムサイト(写真右手のスロープを下りてすぐの場所)に来客用の駐車場がありましたが、現在は管理所の東側(この写真でいうと白い建物の向こう側)に5台分停められるスペースが出来ているようです。そこが満車だと右岸の公園近くにある第2駐車場に停めなければなりません。
川口ダム案内板
左岸には案内看板が設置されています。支流の赤松ダム(堤高15m未満のため堰扱い)からも取水して発電に利用されていることが分かります。なおこの看板は今では新しく大きなものに建て替えられたようです。
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水利使用標識
その隣には水利使用標識が建てられていました。
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左岸より貯水池を見る
左側に見える白く水が流れ込んでいるのが赤松ダムからの支水路からの水です。そこから少し離れた右側には水色の何かが横たわっているのが見えますね。あれは何でしょう…
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左岸より堤体上流面を見る
川口ダムは徳島県企業局所有の発電専用ダムです。6門のクレストゲートの中間に取水口があり、すぐ下流の川口発電所で最大11,700kWの電力を生み出します。
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左岸より天端と管理所を見る
写真左の白い建物が現在は「川口ダム自然エネルギーミュージアム(川口エネ・ミュー)」となった管理所。右が天端となります。
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徳島県企業局統合管理事務所川口ダム管理所
管理所でダムカードをいただきました。下の丸太には四国堰堤ダム88箇所のハンコがあります。
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管理所の脇より堤体下流面を見る
川口ダムは広報に力を入れているダムの1つですが、管理所脇の木の枝が剪定されて堤体が見えやすいようになっていました。きっと観てほしくて剪定してくださったに違いない!
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左岸より天端を見る
ゲートピアに渋い「川口発電所」の銘板が嵌められています。天端は自動車の通行が可能ですが、狭くて離合が難しいと思いますので安全に通行しましょう。
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天端より最左岸のゲート越しに下流を見る
下流は岩肌が荒々しくなっています。素人の見た目の印象ですが岩盤が剥き出しで良い地質だったように思います。
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ローラーゲート
川口ダムには高さ13.80m、幅13.00mのローラーゲートが6門あります。
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左岸側の天端より発電所を見る
下流側の真ん中に発電所の建屋があります。中には縦軸渦巻カプラン水車の縦軸傘型三相同期発電機が2台設置されており、最大11,700kWを発電しています。
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クレーン
天端にはクレーンが設置されており、発電所の点検やメンテナンス時に利用するようです。操縦席が上にあってなんだかカッコイイですね。
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除塵機のベルコン?
恐らく取水スクリーンに付着したゴミを取り除く除塵機とゴミを運ぶためのベルトコンベアだと思います。除塵機が自走式なのは2つある取水口をそれぞれ行き来できるようにしているためのようです。
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変圧器?
あまり発電に関しては詳しくな無いのですが、これは変圧器でしょうか?とにかく川口ダムの天端は色々と観るものが多くて目移りしてしまいます。
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発電所建屋入口
左側に不自然に四角い枠がありますが、解説パネルか何かが掲示されていたのでしょうか。
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鉄鋼構造物諸元
ダムにはゲートの諸元を示す銘板が掲げられていることが多いですが、川口ダムは鉄鋼の構造物の諸元が銘板として掲げられています。
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鉄鋼構造物諸元
現地銘板より(旧字は新字にしています)
堰堤門扉:幅13.0m 高13.8m 6門
付属決瀉板:幅9.0m 高1.0m 2門
取水口門扉:幅3.6m 高4.3m 2門
放水口門扉:幅3.5m 高2.3m 4門
取水口除芥格子:幅6.0m 高13.5m 2門
除塵機:レーキ幅2.0m 掻上高13.5m 1台
1号機水圧鉄管:内径3.6m 長25.2m 1条
2号機水圧鉄管:内径3.6m 長25.0m 1条
浮門扉:幅13.0m 高14.2m 1門
昭和35年製造
東京
株式会社田原製作所
ここまで細かく書かれているのも珍しいですね。除塵機のレーキまで書いてあります。あと写真に撮り忘れましたがゲートにはフラッシュボードが2門取り付けられています。
右岸側の天端より下流を見る
そのまま水叩きになっていた左岸側と比べると、右岸側はプールのように水が貯まった減勢池になっています。色んな方が撮られた川口ダムの放流写真を見ると、頻繁に右岸側を放流しているような気がします。そのため水が貯まりやすいのかなと思ってみたり。
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天端より貯水池を見る
時刻は16時。だいぶ日が傾いてきました。
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右岸より天端を見る
右岸までやって来ました。
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右岸の高台より堤体下流面を見る
右岸にはちょっとした高台があり階段も整備されていて、少し高い位置から堤体を見ることができました。今では更に法面含めて整備されているようですが、立ち入りが制限されていなければ良いですね。
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赤松川支水路ポータル
右岸を上流に向けて散策を続けます。すると左手に赤松堰堤で取水された水が流れ込んでくる支水路の出口が見えてきます。ちなみに現在はここに小水力発電設備が設置されているようです。ちょっとの水でも無駄にしないという点と、それをミュージアムでの教育に活かしている点はすごいですね。
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赤松川支水路から貯水池に流れ込む水
今では小水力発電が行われた後に貯水池に流れ込んでいるかと思います。
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右岸より堤体上流面を見る
夕日に照らされる川口ダムの堤体。
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上流にある謎の鉄鋼構造物
左岸から見えていた謎の構造物。初めて見た時は取水口か何かなのかと思いましたが、これは「浮きゲート」と言って、前述の鉄鋼構造物諸元銘板で言うところの「浮門扉」になります。浮きゲートとは川口ダムの6門ある洪水吐ゲートの点検・補修の際に用いられる予備ゲートで、実際に使用する際には中に空気を入れて船のように貯水池に浮かべて堤体の近くまで運び、洪水吐ゲートの手前にある戸溝に嵌めるのだそうです。
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浮きゲートは静岡県の秋葉ダムにもありますが、実際に浮かべて移動させているところはぜひ見てみたいですね。
貯水池名の石碑
那賀町になる前の旧相生町の町花がアジサイで、夏になると湖岸にはアジサイが咲き誇るそうです。そこで平成元年の森と湖に親しむ旬間を機に一般公募で「あじさい湖」と名付けられたそうです。また春にはサクラも咲いてライトアップも行われたりします。
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下流の川口橋より堤体下流面を見る
下流から堤体を観ようと川口橋まで移動しました。完全に逆光なのとちょっと遠いのが残念。
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ズームで堤体下流面を見る
規模が小さいながらも見どころが多くてとても楽しめる川口ダム。今では川口ダム自然エネルギーミュージアムも出来て、小さなお子さんも楽しめるダムになっていますので、ご家族で訪問してみてはどうでしょうか。
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川口ダム諸元
所在地 | 徳島県那賀郡那賀町吉野 |
河川名 | 那賀川水系那賀川 |
目的 | P(発電) |
型式 | G(重力式コンクリートダム) |
堤高 | 30m |
堤頂長 | 182.5m |
堤体積 | 54,000㎥ |
流域面積 | 656.7km2(直接:616.7km2、間接:40km2) |
湛水面積 | 87ha |
総貯水容量 | 6,463,000㎥ |
有効貯水容量 | 950,000㎥ |
ダム事業者 | 徳島県 |
本体施工者 | 鹿島建設 |
着手年 | 1956年 |
竣工年 | 1960年 |
ダム湖名 | あじさい湖 |
その他の設備/所感
駐車場 | ○ |
トイレ | ○ |
公園 | ○ |
PR展示館 | ○ |
釣り | ○(禁漁区を除く) |
川口ダム周辺の地図
川口ダム周辺の天気
川口ダムに近いと思われる宿泊施設
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