取材日:2013/3/24(日)
七色ダムまで出来上がったダム愛好家ヘルメットを取りに行くというミッションのため、一の木ダムの次に訪問したダムがこの猿谷ダムです。
一の木ダムから国道168号を南下しどんどん山深くなってきたところで猿谷ダムに出くわします。
猿谷ダム駐車場入口
見学した2013年当時はバイパスがなく、やや狭いワインディングに富んだ道を通ると猿谷トンネル手前に猿谷ダムの駐車場が見えて勝手に到着しますが、現在はバイパスが完成しうっかり新猿谷トンネルに入ってしまうとダムに行くのに遠回りになってしまいますのでご注意ください。
左岸の駐車場よりダム湖と堤体を望む
車から降りるとダム湖と堤体が一望できます。左岸側に艇庫も見えます。
猿谷ダム管理支所の門と散策路
一瞬「あれ!?この先行けない!?」と思いましたが、右側の散策路が開いていますので、そのまま右手に進みます。
ベンチと猿
ベンチにお猿さんが座ってバナナを食べています。猿谷ダムという名称なだけに猿アピール。
左岸より天端を望む
やっと天端が見えてきました。どことなくいぶし銀な雰囲気が丸山ダム(岐阜)に似ているなと思ったら猿谷ダムが1957年、丸山ダムが1955年竣工ということで同世代だったようです。
親柱の銘板
親柱の銘板には「猿谷堰堤」の文字が。
監査廊入口
これまた渋い感じの監査廊入口。
地震計室
監査廊入口の隣には地震計室があります。
左岸より堤体下流面を望む
やっといぶし銀の下流面を捉えます。しかしこれ以上はフェンスがあるため、やや横顔からしか望むことができません。
クレストゲートのピアを望む
風格ある質実剛健な天端です。
天端よりクレストゲートを望む
クレストには10.5mx7.5mの2段式ローラーゲートが4門備わっています。
天端より下流を望む
さらにコンジットゲートとしてΦ1050mmのジェットフローゲート1門が備えられています。最大16.3m3/sの放流量だそうです。
熊野川は堤体直下で左に直角に折れ曲がり、道路もないため下流から堤体を仰ぎ見るということができません。
ちなみに熊野川という名称ですが、一級河川の指定を受けた当初は新宮川という名称で、地元では熊野川という名称が定着していたため1998年に正式に変更されました。
また、ややこしいことに五條市では天ノ川と呼ばれ、さらに十津川村内では十津川と呼ばれるため、一つの河川にいくつもの名称を持つ河川です。
ゲートピアの銘板
これまた渋い感じの銘板がゲートピアの手すりに貼られています。
右岸より堤体下流面を望む
もう少し下流側に行けると良いのですが、右岸側もこれが限界です。でも苔むした堤体がとても良い感じです。
右岸より天端を望む
山奥で時刻も8時半と早い時間のため堤体を独り占めしています。
右岸の展望広場への途上から堤体上流面を望む
現地案内看板によれば右岸に展望広場があるようですので、登ってみることにします。
右岸のピクニック広場より堤体下流面を望む
到着しました。展望広場ではなくもう少し下流側のピクニック広場ですが…まぁ、こんなもんですね。できればしっかりと堤体が見られるように整備していただきたいところ…!
そんな猿谷ダムですが国土交通省管轄のダムにしては珍しく洪水調節の目的を持っていない利水専用のダムです。これは十津川・紀の川総合開発事業によるもので、当初は県営として事業が着手されましたが、流域変更を伴うなどその事業規模の大きさから直轄事業として行われることになりました。
熊野川本流からの流入の他、ダムの下流の熊野川右支川になる川原樋川、さらにその支流の池津川や大江谷・キリキ谷から取水して、川原樋川導水トンネルによってダム湖に導水して貯水します。
その一方で天辻分水トンネル(阪本分水トンネルとも呼称されるようです)によって紀の川水系大和丹生川に流域変更して、約300mの落差を利用して西吉野第1・第2発電所で発電を行ったあと、紀の川の灌漑用水として利用されるそうです。
文字で説明するとややこしいので、現地看板の写真の図を見ていただいた方が早いかもしれません。
熊野川には洪水調節の機能を持つダムが1基もないのですが、度々発生する大水害などの被害を受け、洪水時の放流量を抑えるために、貯水位を下げて空き容量を確保する試験運用を行うなど時代の要請に応え続けています。
複雑な灌漑や発電にと活躍する猿谷ダムですが、今後もますますの活躍に期待したい…そんないぶし銀のダムでした。
おまけの写真
上記の池津川取水ダムが堤高16.8mと立派なダムのため見に行こうと猿谷ダムから向かったのですが、紀伊半島大水害による被害はテレビで見る以上に酷く深刻でした。(通行止めで結局池津川取水ダムにはたどり着けませんでした)
紀州大水害から1年半が経っていましたが、被害の深刻さに言葉も出ませんでした。ただそれでも地元の人たちは復興に頑張っており、道の駅十津川郷では「平成23年台風12号『紀伊半島大水害』十津川村大水害の記録」というパンフレットが売られていましたので、少しでも復興の支援になればと購入させていただきました。この記事を書いている今でも販売されているのかは不明ですが、もしあったら購入をおすすめしたいです。
猿谷ダム諸元
流域面積は現地看板を元に記載しています。また、現地看板からの補足として越流頂はE.L.425.5m、満水位はE.L.436.0m、最低水位はE.L.412.0m、有効水深は24m、最大分水量16.7m3/s、計画洪水流量2.060m3/sとなっています。
所在地 | 奈良県五條市大塔町辻堂大和田 |
河川名 | 新宮川水系熊野川 |
目的 | N(不特定用水、河川維持用水) P(発電) |
型式 | G(重力式コンクリートダム) |
堤高 | 74m |
堤頂長 | 170m |
堤体積 | 174,000m3 |
流域面積 | 洪水時:203.74km2(直接:82.85km2 九尾ダム上流域:120.89km2) 平水時:215.18km2(直接:82.85km2 間接(川原樋川)流域:132.33km2) |
湛水面積 | 100ha |
総貯水容量 | 23,300,000m3 |
有効貯水容量 | 17,300,000m3 |
ダム事業者 | 近畿地方建設局 |
本体施工者 | 西松建設 |
着手年 | 1950年 |
竣工年 | 1957年 |
ダム湖名 | 猿谷貯水池 |
その他の設備/所感
駐車場 | ○ |
トイレ | ○ |
公園 | ○ |
PR展示館 | × |
釣り | ○(禁止区域を除く・要入漁料) |
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