取材日:2013/04/29(月)
7年も前のことなので、なぜこの日に広野ダムに向かったのかすっかり忘れてしまっていますが、恐らくゴールデンウィークに日帰りドライブに立ち寄ったからだったように思います。
右岸より下流側の堤体を望む
広野ダムは昭和51年(1976年)に竣工した福井県営の重力式コンクリートダムです。
右岸より天端を望む
天端は夜叉ヶ池の福井県川登山道へ通じるルートになっているため、自動車の通行が可能です。
ゲート巻き上げ機室とエレベーター棟?
一番右は恐らくエレベーター棟だと思います。左の4つはクレストにあるラジアルゲートの巻き上げ機室です。
謎の格納庫
天端を渡り左岸へ。何かの格納庫のようです。レールがありますのでかなりの重量物が格納されているようです。艇庫かと思いましたが写真左側にチラッと写っているように、右岸側に艇庫があるため格納されているのは船ではないようです。
後ほどダムカードをいただくために管理所を訪問しますが、その際にこれが何なのか聞いておけばよかったと今さらながら反省。
左岸より堤体上流面を望む
広野ダムの放流設備は、左右クレストに非常用洪水吐としてラジアルゲートが2門、中央にコンジットゲートが1門、最右岸には利水用に多段式の高圧スライドゲートとホロージェットバルブが備えられています。
写真中央のローラーゲートは予備ゲート(現地表現で保安ゲート)です。
予備ゲートのスペックは以下の通りです。
広野ダム 保安ゲート
現地銘板より
有効径間x流入口高:2.100x2.100m
開閉速度:0.3m/min
扉体重量:3t
製作年月:昭和50年10月
製作:石川島播磨重工業株式会社
右岸側にあるのは表面取水ゲートになります。こちらのスペックは以下の通り。
広野ダム 表面取水ゲート
現地銘板より
有効径間x流入口高:3.600x27.000m
開閉速度:0.3m/min
扉体重量:35t
製作年月:昭和50年10月
製作:石川島播磨重工業株式会社
左岸の高台より堤体を望む
左岸に自由に登れる高台があり上流面の堤体を望むことができます。
広野ダムふるさと公園の看板
その高台は「広野ダムふるさと公園」となっています。トイレも完備。
広野ダムふるさと公園のあたりからダム湖を望む
右手に橋がありますが、その先はダム湖を一周できるようになっています。
夜叉ヶ池登山ルート
4月下旬でしたが、天端を渡り南に向かう夜叉ヶ池への登山ルートは残雪で通行止めになっていました。
左岸より天端を望む
シンプルな天端です。
左岸の展望台より堤体下流面を望む
左岸の下流よりに展望台のような場所があり、そこから堤体を望むことができます。ダムが水を堰き止めているのがよく分かるアングルって良いですよね。
左岸展望台より利水放流設備を望む
右岸には多段式ゲート管で取水された水が高圧スライドゲートを経てホロージェットバルブで放流される利水放流設備があります。この日はコンジットゲートから放流されていたためか、ホロージェットバルブからの放流は行われていませんでした。
ちなみに右岸下流の折れ曲がった先に広野発電所があります。広野発電所は平成8年(1996年)の運転開始時は県営となっていましたが、平成22年(2010年)に北陸電力に譲渡され現在に至っています。最大出力は1,400kW。
天端より減勢工を望む
下流は直角に右に折れ曲がっているのがわかります。なお、下流には道がないため下から仰ぎ見ることはできません。森と湖に親しむ旬間イベント時に見学会があるようですので、その際には仰ぎ見ることができるかもしれません。
左岸側のクレストゲートより下流を望む
左岸から順に見ていきます。
クレストのラジアルゲートは幅7.0m、高さ11.355mの大きさで左右2門あります。
左右クレストゲートの間より下流を望む
左右クレストゲートの間から下流を見ます。下にあるのはコンジットゲートの吐口になります。コンジットゲートは摺動式(高圧)ラジアルゲートが1門で、大きさは2.4mx2.4mとなります。
右岸側のクレストゲートより下流を望む
一番右側です。
ダム監視所
ダム監視所でダムカードをいただきました。嘱託の方のようでしたが、どこから来たのかと気さくに話しかけてくださいました。
右岸より堤体上流面を望む
直線的で無駄のないデザインです。いかにもと言うべきか県営らしさが感じられます。右手奥に見えるのはトイレです。
右岸の県道より堤体上流面を望む
二ツ屋分水堰に向かう途中に堤体を振り返って撮影。専門用語的にはこちらが正面になりますが、水位が高いと肝心の堤体が見えないのでやはり愛好家的には裏に見えてしまいますよね。
広野ダムは日野川総合開発事業の一環として福井県が建設したダムで、ダム地点における計画高水流量350m3/sのうち265m3/sの洪水調節を行います。
不特定灌漑としては日野川流域は毎年のように渇水に喘いでいたらしく、下流の既成耕地3,547.6haに対して灌漑期に最大3,100千m3の容量を利用して既得用水の補給を実施するとのことです。
また、最大0.5m3/s(日量40千m3)を鯖江東部工業団地に供給しているとのことです。
さらに前述の通り水力発電が行われており、最大で3.2m3/sを取水して広野発電所で有効落差54.4mを得て最大出力1400kWの発電が行われています。
このように県営らしいシンプルなダムでありながら地域に役立つ広野ダムなのでした。
広野ダム諸元
所在地 | 福井県南条郡南越前町広野50字湯林 |
河川名 | 九頭竜川水系日野川 |
目的 | F(洪水調節、農地防災) N(不特定用水、河川維持用水) I(工業用水) P(発電) |
型式 | G(重力式コンクリートダム) |
堤高 | 63m |
堤頂長 | 162m |
堤体積 | 143,000m3 |
流域面積 | 42.3km2 |
湛水面積 | 54ha |
総貯水容量 | 11,300,000m3 |
有効貯水容量 | 9,600,000m3 |
ダム事業者 | 福井県 |
本体施工者 | 熊谷組 |
着手年 | 1967年 |
竣工年 | 1976年 |
ダム湖名 | 広野ダム湖 |
その他の設備/所感
駐車場 | ○ |
トイレ | ○ |
公園 | ○ |
PR展示館 | × |
釣り | ○(禁漁区域を除く) |
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